信濃路の春

長歌一首
信濃路の 春来る遅し 雪割れて 草萌え出ずる
空遠く 澄み渡りて 人まばら 道を歩けば 
犬草の 空に似た色 緑映え 
まだ寒き風 気まぐれに 吹きつる時に 襟立てて 進みつつ見る
花は誰(た)か
梅咲き乱れ
 いにしへに 宇和島姫が 古里を 偲ぶよしがに
手植えした 杏の花の あはれさよ
桃咲きて 眠るもののふ 慰める
しまいに桜 花咲きぬ
信濃路の春 来るはまだ先

反歌二首
犬草の 花も短き 命ゆえ 春は遅しと 待ちわびるかな
命日の 桜は未だ つぼみなり 心の手向け 早(さ)梅になりし
「わだつみ」の真似です。万葉の真似事してみました。長歌と反歌形式です。「わだつみ」の作者は本職の設定ですがこちら、ド素人で正式な手ほどき、うけてないので下手です。はい。(笑)短歌だけですと物足りないので……。書いた時点、そのままの情景を詠みました。現代語に近い言葉なので、わだつみや子守唄のように特に訳なしでも大丈夫でしょう。

犬草=オオイヌノフグリ。初春に群生して咲く。花は小さく青色。一日でしぼんでしまう。
宇和島姫=松代藩三代目藩主真田幸道正室 宇和島藩主伊達宗利娘豊姫のことを差す。故郷を偲ぶため杏の木を松代に持参したと言われる。
眠るもののふ=川中島の戦いで死んだ武士たち 川中島は桃の産地

大体意味が解ると思いますが最後の歌の意
父の命日に尾張地方で満開だった桜 それがここではつぼみです。今は嫁に行ってしまいましたが心の中での手向けの花は咲き始めた梅になりました。これで我慢して下さい。

和歌は短い制限で色々な意味を込めなければならないので、難しいですが、作っていると言葉遊び感覚で楽しいです。    翼

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