遺言


親友(とも)よ
僕がもし
君より先に死んだら
お葬式もお墓もいりません。
僕の身体を
深い深い森の大木の下に
そのまま埋めて下さい。

なぜなら僕は
何も役に立たない人間
何も出来ない人間

僕の身体は土になり、
養分として木に吸われ、
大木はますます大きくなっていくことでしょう
そして、その木は
鳥たちや獣たちに憩いの場所を作ることでしょう。

嵐の時はその木は彼らを守り、
夏の日を柔らかくして、
根本の草花や虫たちを守り
時には下を通る旅人たちを守ることでしょう。

木はやがて花が咲き、
その実は鳥たちが
楽しげについばむことでしょう。

だから親友よ
僕がもし
君より先に死んだら
お葬式もお墓もいりません。
僕の身体を
深い深い森の大木の下に
そのまま埋めて下さい。
それだけでいいのです。

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