1.きっかけ 

           障害者が純和風建築で暮らす問題点

 改築のきっかけ、と言うか、前の家の問題点は、つばさがさくらんぼ君の家に嫁に来た時から始まっていました。
 とにかく(家が)広すぎるのです。その上、あふれん限りの物、物、物……。
 聞けば、義父と義母が亡くなってそのまま、さくらんぼは一人暮らし。今回、つばさと結婚するにあたって、親類の方が一部、片付けたそうなんですが、まだ義父母の遺品がかなり残っていました。使える部屋は、一階の一部と台所の一部でした。片付けようにも多すぎて無理です。
 これでは、母が来てくれても泊まる部屋がありません。いえあっても冷暖房がない二階のたんすばかりの狭い部屋です。
 さらに、義父母が残した家は、息子の障害を全く頭に入れていない、純和風建築だったのです。私の実家はウサギ小屋でした。貧乏だったのです。しかし、私の親は流石に、余裕が出てくると、和室だった部屋に絨毯を敷いてくれたりペッドを買ってくれたり、階段に手すりをつけてくれたりとそれでも色々考えてくれたのですが、そういう配慮が全くありません。義父も義母も教育者だったのに、息子が可愛くなかったのでしょうか、と個人的に疑問を持ちましたくらいです。さくらんぼは、つばさより比較的足は丈夫ですが、それでも、バランスを崩すと、転んだり、腕や腰をひねったりします。(その疑問は仮住まいへの引越しの時、裏付けられました)
 問題点を箇条書きにしますと、こうなります。
・敷居で躓いて転び易い。
・畳のメンテナンスが面倒。
・コンセントの数が少なく、コンピュータを置いた時は危険な蛸足配線にせざるを得なかった。
・余分としか思えない装飾用の品物が多すぎる。使える部屋が意外と少ない。
・二人暮らしなのに、15人分くらいの食器がある。しかも、地味好きのつばさの好みとは正反対。二人とも非社交的で全く客が来ない。そんなに必要ない。
・さらに、寒冷地なのに、各部屋を隔てるのは障子だけ。うっかり開けておくと、玄関から奥まで丸見えです。たまに来る宅急便などの業者の人に奥まで見られて恥ずかしい思いをしました。
・断熱材が入ってないので、冬は寒い。火は危険なので電気で暖めていたが、電気代がかなり出た。これは自他共に認める吝な二人には痛い出費でした。
 一方、夏は、名古屋の猛暑を経験しているつばさには楽でした。閉めきっていても平気です。(断熱材が入っている今の家、暑いのですが、閉めきっています。それでも名古屋よりまし。)
 このように、とくに私たち肢体障害者にとって、純和風建築は、かえってすみにくいものです。私は、当初正座をしていましたが、足にウオノメという物ができました。それが剥がれて痛かったです。
 リフォームも考慮しましたが、最後の断熱材の問題で、建て替えと同じ、または余計に費用がかかってしまうということで、諦めました。どちらにしても、不用品は片付けねばなりません。
 今回は、たとえ費用が多くかかっても建替えと言うことでさくらんぼとつばさの意見は一致しました。
 なぜ、リフォームを避けたと言うと、私たちの団地は過去三回水害に遭っているからです。見かけだけ替えても、規定の柱や壁はそのまま残すリフォームでは、のちのち、困ると思います。例えば、柱が倒れかけたりしたその時、私かさくらんぼのどちらかが障害が重度化していたら、引越しや手続きなど対応できると思いますか?できないでしょう。建替えるなら、余力を残した時しかありません。障害が重度化しないうちに……と思いました。
文 つばさ 監修 信州さくらんぼ
以上

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