ロカ・レイ、グラン・ファエナ!剣でプエルタ・グランデが消える。ロマン耳1枚。エスクリバノ、25cmの角傷を負う。

 5月30日サン・イシドロは、流血とグラン・ファエナを味わった。アドルフォ・マルティン牧場の牛で、マヌエル・エスクリバノ、ロマン、ロカ・レイ。マヌエル・エスクリバノの1頭目は、扱いやすい牛だったが、出来なかった。クルサード不足で、口笛を吹かれていた。もっと出来るだろうと思う。2頭目は、良い感じでファエナをしていた。アレナ中央に立ちブルラデロにいる牛を誘い、背中を通すパセ、体の前を通すパセを繋ぎオーレが鳴り出し、パセ・デ・ペチョで拍手。距離を取りデレチャッソの長いパセが繋がり、オーレが続きさらに盛り上がっていった。雰囲気は耳だったが、ちょっと足りないような気がした。ファエナ終盤に事故が起きた。牛の左角がぶっすり左太ももを突き刺した。一人では立ち上がれずバンデリジェーロたちに、担がれて医務室に向かった。角傷は25cm。大腿部1/3の処に入った角は、大腿静脈に達していたようで、大量出血した。可能性として、重傷。剣刺しは、ロマンが代わって行ったがピンチャッソを繰り返した。

 ロマンは、コリーダ・ドゥーラ系の牛の扱い方の基本を分かっているようだ。2頭ともベロニカと、ファエナの始めは、膝を折ったパセを繋ぎ、牛を外に振って動きを教えているような始め方をした。教えられたことを、きちんとやっているのか、それとも、アレナで経験したことから学んだのかそれは知らない。しかし、教えられたことをきっちりやって出来るなら、素晴らしいし、自分の経験から学んだとすれば、才能を感じる。こういうやり方をすれば、牛は動きを覚え、扱いやすくなる。1頭目ではコヒーダされた。2頭目では、レマテの後の距離の取り方も良かった。牛が動かなくなると、クルサードし直して、真面目にパセを繋いでいた。そういう誠実な態度が、観客にも伝わっていることが判る。剣も決まり、闘牛場が白いハンカチで埋まった。耳1枚。

 ロカ・レイは今日も魅せた。最後の牛でグラン・ファエナ!ロカ・レイ的なトリッキーなファエナではなく、外連のないファエナだった。手の低い長いパセを繋いで、オーレを叫ばせだ。ナトゥラルの方はちょっとブスカンド気味だったが、それでも続けて良いパセを引き出していた。この日、最高潮に盛り上がった。剣を代え、最後のタンダが終わると、観客が、ビバ・レイなのか、ビバ・エスパーニャなのか叫んだ。剣刺しの時に、叫ぶというのは最低の行為だ。他の観客から静かにするようにたしなめられた。それで、間が悪くなったのか、ピンチャッソ。その後、剣が決まった。牛が倒れ観客は耳を強く要求したが、プレシデンテは耳を出さなかった。しかし、ロカ・レイが、コリーダ・ドゥーラ系のアルバセラーダ血統の牛を相手に、グラン・ファエナをやったメリットは大きい。

エミリオ・デ・フストが耳1枚。

 5月29日のサン・イシドロは、ビクトリーノ・マルティン牧場の牛で、オクタビオ・チャコン、ダニエル・ルケ、エミリオ・デ・フスト。ファン・カルロス元国王が今日も来て1頭目から3頭目までの牛が捧げられた。オクタビオ・チャコンの1頭目は左右の角がブスカンドする危ない牛。やりようがないといえば、その通り。剣刺しは、バホナッソ。口笛が鳴る。牛は口を閉じたまま、アレナ中央向かって歩いてくる。その姿は観客に、勇敢な牛の姿に映る。拍手が送られた。ダニエル・ルケの1頭目は、強風が吹く中で行われ、カポーテが風に吹かれて、パセをしても危険を感じるものだった。こういう風の強い日は、モソ・デ・エスパーダなどが、アレナに新聞紙を切って入れる。風でその新聞紙が集まる処でファエナをすると風の影響が少ないといわれている。テンディド5付近に集まっているので、そこでファエナを始めた。耳が切れそうなファエナだった。手の低いパセが繋がっていたし、ナトゥラルも悪くなかった。ただもう少し出来たような気がする。剣刺しはバホナッソ。口笛が鳴り、耳ではないと7などが中心にアピールした。2頭目はブスカンドする牛で、パセがメディア・アルトゥーラになっていた。2頭目の牛になると、距離の取り方が良くなかった。観客からは、口笛が吹かれファエナに注文がついた。

 エミリオ・デ・フストは、2頭目の牛で耳1枚切った。初めのナトゥラルの3回のタンダで、手の低い長いパセが繋がりオーレが合唱された。ほぼそれで、観客の心を掴んだ感じだった。ずっとナトゥラルのパセが見たかった。これも、直前のバンデリジェーロが転倒してコヒーダされ、それをキーテで助けて、喝采を浴びるという出来事があった副産物の様な、盛り上がり方だった。剣が決まり耳1枚が出た。

 ソルテオの見立では、2頭目78番、3頭目の13番が良く見え、1頭目92番が微妙な感じだった。


強風が吹きブスカンドする牛を相手に、フェルナンド・ロブレニョ場内一周。

 サン・イシドロは、28日から3日間は、アルバセラーダ系の血統の牛が続く。その初日は、ホセ・エスコラル牧場の牛で、フェルナンド・ロブレニョ、ゴメス・デル・ピラール、アンヘル・サンチェスのマドリード出身の3人の闘牛士だった。フェルナンドは、2頭目の牛で場内一周した。カポーテで大きく牛を外に振って動きを教えたような感じだ。こうなるとムレタでも期待できる。デレチャッソの長いパセが繋がりオーレが鳴る。ナトゥラルでも。しかし、もっと出来たと思う。3人の中では、1番距離の取り方が良かったと思う。若い時の鼻っ柱の強さが、剣が決まった後、耳要求で、プレシデンテが耳を出さなかったが、直ぐに場内一周した。たぶん、フェルナンドからこの生意気さを取ったら、闘牛士が終わってしまうのかもしれない。

 ゴメス・デル・ピラールはちょっとは期待していたが・・・。距離の取り方も今日の3人の中で1番ダメだった。レマテの後に牛から全然離れない。そのままパセを繋いだりしていた。あれじゃ牛も悪が、やり方がまずい。少しは経験があるんだから、もっと良い処を見せないとなぁ。ビビリが入って腰が引けている。確かに危ない牛だったが、もう少しやりようがあったはずだ。ガッカリした。アンヘル・サンチェスは、若い。それでも、教えたら伸びしろがあるだろう。所々ぎこちなさがあるのが、また良い。デレチャッソの長いパセが繋がり、オーレが鳴った。時々ブスカンドする牛で危ない。強風も吹く悪いコンディション。それでもぎこちなくても、何とかしようという気持ちが見えてくる。そういう処が好感がもてる。剣はピンチャッソあと、決まった。弱い耳要求があったが、当然耳は出ず挨拶。

 アンヘル・サンチェスのバンデリジェーロたちは、喝采を浴びた。イバン・ガルシア、ラウル・ルイス、フェルナンド・サンチェスである。


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