2000年の闘牛総まとめ

 

por 斎藤祐司

 

 2000年の闘牛総まとめは、3人の闘牛士のビデオを流した。

 初めは、バレンシア、セビージャ最優秀闘牛士に選ばれたマヌエル・カバジェーロのバレンシアでの闘牛。何気ないようなカポーテ捌きから凄い。牛をカポーテの中心で誘いカポーテの真ん中にある折り目がパセをするときに45度以下に開いている。これは、しっかりした誘い方をしているからこそ出来る技。

 ムレタではもっと凄い。2流どころはクルサードもしないが、1流はクルサードして牛を誘う。その時ムレタは揺れるが、カバジェーロはムレタを全く揺らさないで牛を誘ってパセをする。それを連続して繋ぐのだから神憑り的だ。他の誰も真似の出来ないパセだ。シルクラールも背面から誘って2回、前から1回転以上回した。極上の仕事だったが剣刺しが角度が浅く刺さるテンディドだったのが残念だった。

 2つ目のビデオは6月2日のミゲル・アベジャン。牛の角で太股を破きながらの闘牛。歩むごとに傷口が開き血が流れていく。そんな中での闘牛だった。TV解説をやっていたロベルト・ドミンゲスは、Gesto su gesto,Muy importante. と、言っていた。 gesto は訳が難しい言葉なのだそうだ。表情、ジェスチャー、顔つき、そぶり、仕草、行為、振る舞い。ロベルトが言う、gesto は勇気のある仕草、行為、振る舞いの事を言っているのだろう。これは誰がやっても、gesto になる分けじゃない。それにふさわしい人でなければダメなのだと、荻内先生が言っていた。

 Toresiozo media. Torerisimo Miguel Abellan. Pedazo de torero. Valentisimo torerisimo. Impresionante imagenes. Un llenon de emocion,amigos. un llenon de emocion. Jugando la vida linpiamente. Via Digital のTV中継でフェルナンド・フェルナンデス・ロマンが6月2日のミゲル・アベジャンの闘牛の時に言った言葉だ。解説をやっていた元闘牛士のロベルト・ドミンゲスは肩車されていた時に、Todavia corazon abierto de par en par.(未だ、心の両扉は開かれたままだ)と、言っていた。それほどまでに観ていた人たちを感動させた。

 このビデオを流すと泣く人がいる。サン・イシドロの報告の時にも流したが3人ぐらいが涙を流していた。ビデオを見ながら闘牛の会で色々技の説明をしたりしてきたが、このアベジャンの闘牛にはそういうものは必要ない。唯、観て感じればいいのだ。

 言葉の説明は、Pedazo de torero.のPedazoは、断片、部分。この場合は、本当の闘牛士の片鱗とか、断片とかになるのかな。こういうスペイン語は、常套句なので辞書を引いても上手く訳せない。荻内先生に聞かないとダメだ。Impresionante imagenes.これも難しい。辞書通りだと、感銘与える姿。だが、驚異的なイメージの方が良いのだろうか。Valentisimo torerisimo.非常に勇敢な、素晴らしい闘牛。コヒーダされて頭から落ちてもまた立って牛に向かう。「Cai`do de cabeza.・・・.Esta`n torero conmosionado. Pero corazon no le caberen pecho. no le caberen pecho.」(頭から落ちた。・・・闘牛士は脳震とうを起こしている。しかし、肝っ玉は胸に納まらないくらいでかい。)と、言っていた。

 Corazo caliente de torero.闘牛士の心は熱い。 El torero esta en candirando al publico de madrid.闘牛士はマドリードの観客を熱狂させている。とかミゲル・アベジャンは大文字で書く闘牛士だ。とか言っていた。 Un llenon de emocion,amigos. un llenon de emocion. これはそのまんま。感動で一杯です、みなさん。感動で一杯です。Jugando la vida linpiamente.これが難しかった。Jugando は、遊ぶではなく、賭けると訳す。清らかな命を賭けた闘牛。とにかく凄い闘牛だった。言葉よりビデオを観てもらいたい。アベジャンの闘牛に何故感動するかと言えば。ありのままだからだ。飾らず、ただ一生懸命命懸けで闘牛をやっている姿が感動を呼ぶのだ。アベジャンはこの日、torerazo だった。牛の返り血で赤く染まった白い闘牛服が印象的だった。

 3つ目のビデオはホセ・トマス。今年TV放送されていないので去年のサン・イシドロから1番良いファエナを選んで流した。牛の左後脚がコッホ(跛行 ビッコ)だった。パセすると右手の時はスムーズさを欠いていた。左手の時は大丈夫だった。ホセ・トマスはナトゥラル(左手のパセ)のパセを繋ぎ牛を支配した。ムレタの初めで牛が動かなくなると距離を取ってパセを始める。1流になるかならないかは、こういうところで距離が取れるか取れないかで決まる。素晴らしいパセで「オーレ」の合唱が鳴る。あまりの凄さに観客は大騒ぎになる。

 剣を代えるときホセ・トマスを向かえる観客は総立ちになる。残念だが剣が決まらず(ピンチャソ10回で右手首のあたりの骨にヒビが入った)プエルタ・グランデ出来なかった。今年ホセ・トマスは剣刺しの時に、右手にプロテクターをしていたが、この闘牛が発端になったものと思われる。今年の彼の凄さはこの闘牛があったからのような気がする。

--2000年11月定例会報告より--


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