驚愕を超えた驚き!!!恐怖の戦慄で凍えそうな観客は声も出ない!!!
ホセ・トマス、血だらけのトゥリウンフォ!!!耳3枚でプエルタ・デ・エンフェルメリア!!!

2008年6月15日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の今年45回目の結果。

19時開始、21時26分頃終了。21時10分照明点灯。

プレシデンテ、マヌエル・ヌニョス・インファンテ。今年何回目かのノー・アイ・ビジェテで満員の入り。

エル・プエルト・デ・サン・ロレンソ(1,2,3,5頭目)、コルテス(4,6頭目)牧場の牛。

   全体として、ろくな牛がいなかった。。
   1頭目、。2頭目、。3頭目、
   4頭目、。5頭目、。6頭目、。
   ソブレロ:トレロ牧場。


闘牛士

エル・フンディ 沈黙、沈黙。

ホセ・トマス 耳1枚とそれに対する抗議、耳2枚とそれに対する抗議。

ファン・バウティスタ 沈黙、沈黙。

 ホセ・トマスは、右太腿に20cmの角傷などを受ける重傷を負った。

 曇。時々日が当るが肌寒くなるが長袖がないと寒い。。エル・プエルト・デ・サン・ロレンソ牧場(牛Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク、カルロス・ヌニェス、ホセ・ルイス・オスボルネ牧場)。闘牛士、エル・フンディ、ホセ・トマス、ファン・バウティスタ。ノー・アイ・ビジェテで満員。ソル・ソンブラのアンダナーダ8でビデオ撮影しながらSさんと一緒に観戦する。ロイヤル・ボックスには、エレナ王女が来て観戦。

 エル・フンディは、ホセ・トマスがキーテのガオネラをしている最中コヒーダされたときにキーテで引き離して事以外ほとんどどうでも良かった。

 ホセ・トマス

 ファン・バウティスタは、最後の牛はほとんど見ていなかった。観客は、ホセ・トマスの闘牛の話をずっとしていた。

 今日は部屋を出る前、何だか落ち着かなかった。まるでセサル・リンコンの闘牛を観る前のような緊張状態だった。トイレに行っても、小便に何度も行きたくなるような状態だった。他人から見れば、まるで本人が闘牛をやる前のような状態とあとでいわれた。

 闘牛が終わっていつもの所に行くまでが何と長いことか。観客はホセ・トマスの闘牛に酔いしれてその余韻に浸りながら、話し込んでいるから足が進まないのだ。いつもの所では、いつもの顔があった。久々に会ったMさんに挨拶。みんな前回以上に驚きの顔。その奧にYさんがいた。もう、目を真っ赤に泣きはらしている。それを観た瞬間に、何も考えずに、彼女の頭を右腕でかかえて抱き寄せていた。言葉はいらなかった。ただそうやって一時抱いていたい気分だったのだ。10秒くらいだろうか。何といったか、覚えていない。声を掛けたのか、掛けなかったのかすら覚えていないのだ。それから離れて顔を観たら、涙がとめどなく溢れ出ていた。それを観たらまた、涙が出て来た。

 それからようやく口を開いた。「どうしてあそこまでするの」と、いって、また、涙が溢れていた。寿美さんもWさんも笑顔の中で、今にも泣きそうな表情だった。番長はお客さんを連れていたので、会話はしなかったが、笑顔満面。普通なら3頭目が終わったら帰るところを、最後まで見ていて、この感動。ただみたいなお金で見た旅行客は、生涯忘れられない感動を味わった事だろう。

 それにしても、ホセ・トマスは何回コヒーダされたんだろう?M婦人に訊いたら4回かな?といっていたが・・・。ダメ牛でクルサードして、パセを繋ぐは、角は体の直ぐ近くを通るから角度によっては、体に刺さるように見えるから、怖くて、「あっ」とか「おっ」とかいう声が出るが、オーレの声が出てこない。緊張で肩がこるような闘牛。そして、5頭目の牛で、人形みたいに飛ばされて落ちてきたところを、右角で右太腿をぐっさり刺されて、痛そうにびっこを引く。観客は怖くて立ち上がって後ろを向いて、「早く殺せ!」とわめいたり、「キャー」という女性の叫び声が上がる。

 それでもファエナを止めない。レマテのパセ・デ・ペチョのあと、牛の方を向いて、珍しく左拳を握りしめてガッツ・ポーズをして物凄い顔をしていた。それからまたタンダ・デ・ムレタソをして剣を代えた。確か、ここで、闘牛場に、「トレロ、トレロ」のコールが沸き起こった。天まで届きそうな大きな叫び声だった。最後は、痛い足を引きずりながらマノレティーナ。傷がある右側を通す決め技だ。ここで、観客の、「オーレ」の大合唱が鳴り渡った。これは、耳2枚出すぞという観客の意思表示のように思えた。

 剣もバッチリ決まり、牛も崩れるように倒れた。一斉に白いハンカチが闘牛場に揺れた。拍手が鳴りやまない。耳を催促する口笛が鳴り響く。当然のような耳2枚。あー本当に良い闘牛が観れて幸せだ!!!

 アルグシルから耳2枚を受け取り観客に挨拶すると、そのままアレナ中央へ歩き出した。そのあとをバンデリジェーロたちが続いた。一瞬口笛が鳴ったが、そのままエンフェルメリア(医務室)へ向かうのだということが判ると、喝采に変わった。そして、ここでも、「トレロ」コールが沸き起こった。痛む足を引きずりながら、自分の足でエンフェルメリアへ行く姿は、なんて逞しく、なんて格好いいんだろう!!!自分の仕事を完璧以上にこなして、なおかつこれだ。担がれて医務室に向かうのと訳が違う。かつてホセ・トマスがいった言葉を思い出した。それは、セビージャで2回連続で、プエルタ・デル・プリンシペをやって、3回連続がかかっていた日の闘牛で耳2枚切ったが、剣刺しの時に太腿をザックリ角に刺されて、その時もエンフェルメリアへ歩いていった。そのあとに、3回連続でプエルタ・デル・プリンシペへ行くよりも、プエルタ・デ・エンフェルメリアに行った方が名誉なことだ、と、いった言葉を・・・。

 この前と、今日どっちが良かった。M婦人がいう。いやー、今日の方が感動しました。と、いうと、あたしも今日の方が好き!と、いった。

 凄い男だ。凄い闘牛士だ。トコトン自分を極めようとする姿は、ケチの付けようがない。しかし、ここはマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。それでの、ホセ・トマスの闘牛を批判して、三拍子の手拍子を打つ観客もいるのだ。とても他の闘牛場ではあり得ない光景だ。実は、こう言うところにも、感動した。厳しい観客がいるから、よりきびしい仕事、良い闘牛が出来るのだから。

 闘牛が終わってから、ジワーっと来る闘牛だった。スペイン人に泣き顔を見られたが、ちっとも恥ずかしくなかった。素晴らしい感動が体中を覆った。何か体が熱くなるような闘牛だった。恐怖の戦慄で凍えそうになっていた観客たちは、最後には、感動の涙を流したのだ。ホセ・トマスは、侍の心と、侍の肉体と、侍の哲学を持った真の闘牛士だ。そして、どんな優れた詩人が語ることがよりも、雄弁で感動的な、闘牛で全てを語る、無言の詩人だ。

 ホセ・トマスは、2回連続でラス・ベンタス闘牛場を感動の渦に巻き込んだ。今の彼なら、セサル・リンコンの4回連続のプエルタ・グランデの記録を破るかも知れない。もはや、ホセ・トマスは、1つの事件だ。すでに、伝説だ。スペイン中の人が彼を見たさに闘牛場に押し寄せるだろう。気が弱い人はとても観ていられないだろう。失神してしまうかも知れない。しかし、こんな闘牛をしていたら体がいくつあっても足りないくらいだ。それくらい、見ている全ての人に、恐怖と感動と興奮与えて夢中にさせて、熱狂する闘牛をしている。とんでもないことである!!!これで何年分かの、生きる勇気を与えて貰ったと思う。心から感謝したい。


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