2007年6月7日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の記念闘牛1日目(今年41回目)結果。 19時開始、21時17分頃終了。20時58分照明点灯。 プレシデンテ、マヌエル・ムニョス・インファンテ。ノー・アイ・ビジェテ。満員。 ガルシグランデ(1頭目、3頭目、5頭目、6頭目)、ドミンゴ・エルナンデス(2頭目、4頭目)牧場の牛 全体的に、粒ぞろいの牛が出た。 1頭目、扱いやすい牛。2頭目良い牛、3頭目、。 4頭目、。5頭目、マンソ。6頭目、。 ソブレロ:エレデラス・デ・ボオルケス牧場(4頭目)良い牛。 闘牛士 エル・フリ 耳要求で挨拶アビソ1回、沈黙。 セバスティアン・カステージャ 耳1枚アビソ2回、拍手。 アレハンドロ・タラバンテ 沈黙、挨拶アビソ2回。 |
晴。風はそれほどないので暑い。ガルシグランデ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場)。ロイヤル・ボックスにファン・カルロス国王とエレナ王女が来ていた。3人の闘牛士は、初めの牛を国王に捧げた。闘牛士、エル・フリ、セバスティアン・カステージャ、アレハンドロ・タラバンテ。満員。ソルのテンディド6にて観戦する。
エル・フリの耳要求は何なんだろう。牛を動かしていれば良いというのならそれは闘牛ではない。扱いやすい牛でもちゃんとした闘牛をしなければダメだ!この前のプエルタ・グランデは何だったと言う内容だ。あれが耳1枚なら、情けなくて泣けてくる。でも、もし甘いプレシデンテだった・・・。出ないと思うけど・・・。ブエルタしなかったのはフィグラの自覚?
セバスティアン・カステージャは、素晴らしかった。ベロニカの時から、左角が体の近くを通った。角が短いのは明らかだ。ベロニカの後の返りも反対に回っている。ピカは左前に2回入った。バンデリージャが6本打たれた後、牛はロイヤル・ボックスにいるファン・カルロス国王に捧げられた。ファエナはテンディド10タブラ近くから始まった。両手でムレタと剣を持ってアジュダード・ポル・アルトに構えエスタドアリオで牛を左右に4回パセし牛1回が体の直ぐそばを牛が通っていった。驚きの歓声が上がった。それから引くようなナトゥラルで、「オーレ」がなり始めをしてトゥリンチェラ引くようなナトゥラル、トゥリンチェラ、引くようなナトゥラルで、「オーレ」が喝采に変わった。
それは熱狂の始まりだった。アレナ中央へ移動してデレチャッソで牛を呼び、手の低いながパセを4回リガールして繋ぎ「オーレ」が鳴りパセ・デ・ペチョ手を替えてパセ・デ・ペチョ、トゥリンチェラで喝采に変わった。離れ牛に息を入れさせてデレチャッソを4回リガールしてパセ・デ・ペチョからトゥリンチェラで、「オーレ」が喝采に変わった。闘牛場のあちこちで興奮した観客が立ち上がって喝采を送っている。離れデレチャッソのトゥリンチェラから手を替えて低く長いナトゥラルが決まると「オーレ」の声がこだました。3回繋ぎクルサードしてパセをするとエンガンチャ(ムレタを角にはらわれた)した。クルサードして4回パセを繋ぎパセ・デ・ペチョ。牛が止まってパセが短くなった。それでももう1度パセ・デ・ペチョ。
離れアレナ中央でデレチャッソのトゥリンチェラから手の低い長いパセ、クルサードして長いパセを2回繋ぎ、クルサードして体の後ろにあるムレタを振って牛の動きを確かめて2回繋ぎパセ・デ・ペチョ、手を替えてパセ・デ・ペチョで牛の背中を向けて剣を代えに行った。クルサードの度に拍手がなった。最後はマノレティーナ4回繋ぎトゥリンチェラ、パセ・デ・ペチョ、トゥリンチェラで牛を置いた。スエルテ・コントラリアで良いところに刺さったが斜めに入っていた。デスカベジョ1回失敗。その後、牛が座った。プンティージャで牛が立ちまたアビソが鳴った。牛が座り観客は耳を要求する白いハンカチを振った。耳1枚。もし、左手がパセが繋げる牛だったら耳2枚切れていただろう。それが残念だった。
5頭目の牛は代えるべきだった。一口にマンソと言うが、身体的な欠陥があるからこう言う気性になっているような気がする。ベロニカの後止まらすにタブラまで走っていってタブラに当たったり、バンデリージャ打ちの後にバンデリジェーロをタブラまで追いかけて行ったりしていた。走っているときに、後ろ脚がおかしかったし、ピカの時に何度か膝を着いた。それでもクルサードしてパセを繋いでしまうのだからセバスティアン・カステージャは凄い。やる気も意欲も勇気も半端じゃない。こう言うのは内に秘めた物だが、セバスティアン・カステージャの場合はそれが外に放射されている。だから観客はその姿に熱くなるのだ。牛が悪かったので耳になるようなファエナじゃなかったけど、だからこそバホナッソでも終わった後に喝采を送った。彼はカジェホンで手をかざして挨拶した。こう言うのは本当のフィグラの自覚というのだ。
アレハンドロ・タラバンテは、糞牛にばかり当たった。3頭目の牛は、ファエナが始まると直ぐに、「マタロ・ジャ」の声が出た。それでも何とかパセを繋ごうと牛を相手にしていた。所詮糞牛。良いパセを引き出せるわけがない。最後の牛も良くなかった。しかし、タラバンテは自分の出来ることを試みようとする。デレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ。離れデレチャッソを5回繋ぎパセ・デ・ペチョ。1回長い良いパセが出た。拍手。離れデレチャッソ5回繋ぎ最後のパセで牛にぶつかってよろけた。パセ・デ・ペチョ、手を替えてパセ・デ・ペチョで拍手がなった。離れ左手のトゥリンチェラから3回ナトゥラルを繋ぐと牛が止まり、場所を移動してクルサードしてナトゥラルを4回。牛が止まりクルサードしてパセ・デ・ペチョ。離れデレチャッソのトゥリンチェラから3回パセを繋ぎクルサードして3回パセを繋ぎ、手を替えてパセ・デ・ペチョで喝采がなった。
少しずつ良いパセが出るようになってきた。離れ右手のパセ・デ・ペチョ気味のパセからデレチャッソを1回通し、手を替えてナトゥラル2回で牛が止まりクルサードしてパセ・デ・ペチョで拍手がなった。離れ手の低いデレチャッソを6回パセしてトゥリンチェラ、手を替えてパセ・デ・ペチョから引くようなナトゥラルで喝采がなった。離れ牛に息を入れなをさせて右手のトゥリンチェラからデレチャッソ1回。クルサードして足を閉じたデレチャッソ1回、クルサードしてパセを1回通して手を替えてトゥリンチェラで拍手がなった。剣を代えてアビソが1回鳴った。最後は、ベルナディーナ。牛の動きを確認して4回繋ぎ最後のパセは体の右側ではなく反対側の左を通してパセ・デ・フローレスからぐるっと回すパセ・デ・ペチョで大きな「オーレ」の声と歓声がなった。そして立ち上がって喝采を送った。剣は、スエルテ・ナトゥラルでカイーダ気味にメディアで刺さった。2回目のアビソが鳴りデスカベジョ3回。剣が良ければ耳が出ていただろう。
みんなの期待が大きかった分、ガッカリした人もいたようだ。終わった後、タラバンテについては、落胆の声を多く聞いた。そういう声を訊くといつも思うのだが、ラス・ベンタス闘牛場のうるさい観客の目線で闘牛を観ている。でも、闘牛士が牛を相手に闘牛をやっているという視点が著しく欠けているような気がする。好き嫌いの感覚や感情論に近い部類の話はついていけないときがある。そういう風に批判をするときに、多くの人はこれを説明する言葉を持っていない。少しだけ断片的に拾って書く。「ベルナディーナをするときに体が動いてはダメだ」 「危ない牛じゃないのにパセ・デ・ペチョの時に腰が引けていた」 とか言うのがあった。しかし、状況によるのではないかというのが、こっちの意見だ。もっと非道いのになると、「ベルナディーナをここでやるなんて、盛り上げるためかも知れないけど、ああいうのをすると冷めてしまう」「あっ、そういうの判る」という意見には閉口した。それと、「あんなの誰でも出来るんだから、俺は嫌いだ!」というのにも開いた口がふさがらない。だって、セバスティアン・カステージャが剣を代えた後やったのは、マノレティーナでしょ!
闘牛は難しい!ファンそれぞれに色々な見方があるからだ。極論を言えば、寺山修司ないが、10万人のダービーがあるなら、10万通りのそれぞれのダービーがある。ラス・ベンタス闘牛場の2万4千人の観客が入るなら2万4千通りの闘牛があるのだ。楽しみ方はそれぞれある。その楽しみ方を見つけ、選び、難しい闘牛を見続けて行きたいと思った。そして、逆に言えば、難しくなく簡単で単純に楽しむことだって出来るのも闘牛。競馬を同じである。今日、セバスティアン・カステージャとアレハンドロ・タラバンテはそれぞれの人生を語ってくれた。それが良かったと思うのだ。
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