凄い奴が出てきた!アレハンドロ・タラバンテ!剣とデスカベジョで耳3枚失う!

2006年5月24日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場のサン・イシドロ15日目(30回目)開催の結果。

19時開始、21時19分頃終了。21時13分照明点灯。

プレシデンテ、セサル・ゴメス・ロドリゲス。観客は満員。

牧場

エル・ベントリジョ
   全体として頭が高く角が広い。膝を着く牛が多かった闘牛に適した牛を登場させた。
   1頭目は、非常に良い牛。2頭目は、良い牛。3頭目は、左角がブスカンドする危ない牛。
   4頭目は、動きが鈍いが気性が良い牛。5頭目、膝を着き時々探りを入れる牛だった6頭目は、割と良い牛。


見習い闘牛士

ダビ・モラ 口笛、拍手と口笛(ディビシオン)。

アレハンドロ・タラバンテ 挨拶、耳要求で場内1周(アビソ2回)。

ダビ・エステベ 沈黙、沈黙。

 晴れ時々曇り。強い風が吹いて日が暮れると寒い。エル・ベントリジョ牧場の若牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場)。見習い闘牛士、ダビ・モラ、アレハンドロ・タラバンテ、ダビ・エステベ。満員の入り。ソルのテンディド5にて観戦する。

 ダビ・モラは、何も出来ていない。カポーテの振り方も下手。ムレタは、ただ振っているだけ。ナトゥラルのなんてムレタがちゃんと開いていない。良い牛が出てきているのにパセを繋いでいるだけ。非道い!彼が相手をした2頭の牛からならアレハンドロ・タラバンテなら両方で耳2枚のファエナが出来ていただろう。それくらい良い牛が出ているのに・・・。

 アレハンドロ・タラバンテは、非常に質の高い闘牛をする。まず落ち着きに引きつけられる。ダビ・モラの初めの牛のキーテは、ホセ・トマスが得意にしたガオネラ。体の近くを5回通しラルガを決めると観客は驚いた。この日始めに牛にパセを通すのにガオネラから始めるというのは凄い物だし5回繋げるのも凄い!1頭目の牛で見せたファエナは素晴らしかった。脚の弱い牛だった。カポーテで何度も膝を着いた。エスタトゥアリオから初め引くようなナトゥラル、パセ・デ・ペチョで拍手が沸く。それから手の低い長いナトゥラルを繋ぐとオーレがなった。パセ・デ・ペチョで喝采がなった。離れ手に低い長いナトゥラルが4回繋がりオーレが続きパセ・デ・ペチョで喝采がなった。

 手の低い長いデレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ2回で喝采がなった。デレチャッソはナトゥラルに比べて質が落ちるが、手が低く長いパセが通っているからオーレがなる。落ち着いているしクルサードも深い。ピトン・コントラリアだ。クルサードで拍手が沸く。ホセ・トマスのようだ。デレチャッソからマノ・カンビオでナトゥラルを2回。牛が止まりクルサード。ピトン・コントラリアで拍手が沸く。パセを2回通してパセ・デ・ペチョで喝采なった。剣を代えて、ベルナディーナ。2回目が体の左側を通して観客が驚く。3度通してパセ・デ・フローレンス、パセ・デ・ペチョで牛の前で見栄を切って喝采を浴びた。耳2枚のファエナだったが、剣がピンチャッソ2回。そのあとカイーダで斜めに入った。初めのピンチャッソが牛が動いたのに刺しに行った。それが悔やまれる。挨拶をしたが場内1周はしなかった。

 2頭目は、マンソだった。それから時々探りを入れる。でも、それをアグアンタールしてパセを繋いだ。耳になるような牛には思えなかったが、そこが腕。質の高い闘牛で牛をちゃんとコントロールしてパセを繋いだ。兎に角、ナトゥラルが素晴らしい。手も低いし長いし、綺麗だ。オーレを声に出して言いたくなるパセだ。剣を代える前のパセがまた素晴らしかった。ナトゥラル、トゥリンチェラ、ナトゥラル、トゥリンチェラ、を繰り返すと闘牛場にオーレが響いた。パセ・デ・ペチョで牛の前に立つと喝采がなった。剣は、スエルテ・ナトゥラルで牛を置きレシビエンド気味に、それともア・ウン・ティエンポで良いところに入った。観客が一斉に立ち上がった。しかしである。何と牛が座らず、デスカベジョを3回以上刺してしまった。それでもファエナが良かったので耳を観客が要求したが、耳は当然でなかった。観客の催促で場内1周。

 非常に残念だったが、ラス・ベンタス闘牛場を熱狂させた事には変わりない。アポデラードは、あのホセ・トマスを育てたアントニオ・コルバチョ。期待以上に素晴らしい闘牛をした。1人だけレベルが全然違っていた。飛び抜けた才能と上質の技術を兼ね備えている。そして、観客にどうしてこんなに落ち着いていれるのかと思わせる物を持っている。アレハンドロ・タラバンテはこれから、人生を語れる闘牛士になれるだろう。いや、そうなって欲しい闘牛士だ。ホセ・トマスに似ているが、それが真似なのかどうか知らない。でも、ホセ・トマスを教えたアントニオ・コルバチョが教えているのだから似ていてもおかしくない。

 ダビ・エステベは、ムレタの振り方は未だ良い方だが牛の扱い方を全く知らない。だから1頭目でコヒーダされた。顔から落ちて額から血を流していた。この牛は左角が危ないって事判らないの?

 今日は良い物を見せて貰った。今年の見習い闘牛士は去年と同じで質が低かったが、1人だけ飛び抜けて高い質を持った見習い闘牛士がいた。彼の未来は明るい。1つ1つ身に付けるべき物を、身に付けてくることが出来たからだろう。これからもそういう努力を積み重ねて良い闘牛士になって欲しい。そして、その可能性が高いことを感じさせてくれた。それとデレチャッソをもっと練習した方が良いと思う。そうすればトレアールは素晴らしい物になるだろう。あとは、闘牛場で牛から教えて貰うことは一杯あるが、それは、これから出場機会が増えるだろうから、1つ1つ覚えていけるだろう。非常に楽しみな見習い闘牛士だ。アントニオ・コルバチョは、非常に質の高い新鮮な良い素材を手に入れた。

 最後にアレハンドロ・タラバンテの経歴を少しだけ書いておく。1987年11月24日バダホス生まれ。見習い闘牛士デビューは、2004年2月1日Samadet(フランス)。ラス・ベンタス闘牛場へは、2006年3月25日出場で今回が2度目の出場だった。去年は、23回見習い闘牛をやって34枚耳を切っている。バダホス生まれと言うことは、ミゲル・アンヘル・ペレラと同じである。


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