エル・シド去年に続いてプエルタ・グランデ!エル・フリ耳1枚まで。セサル・リンコン距離の魔法も・・・。

2006年5月22日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場のサン・イシドロ13日目(28回目)開催の結果。

19時開始、21時30分頃終了。エル・シドのプエルタ・グランデは、21時35分頃。

プレシデンテ、トゥリニダ・ロペス・パストル。今年13回目のノー・アイ・ビジェテ。観客は満員。

牧場

アルクルセン
   全体として
   1頭目は、インバリドに近い牛で左角がブスカンドする危ない牛。2頭目は、インバリド。
   3頭目は、良い牛。4頭目は、頭が高く下がらない牛。5頭目は、ソソ。6頭目は、難しい牛。

 ソブレロ:アナ・マリア・ボオルケス牧場(2頭目の牛に代わり)。良い牛。


闘牛士

セサル・リンコン 拍手、拍手。

エル・フリ 耳1枚ともう1枚要求、拍手。

エル・シド 耳1枚、耳1枚。

 追記:4頭目の牛のピカでセサル・リンコンのピカドール、ルイス・ミゲル・レイロが喝采を受けた。

 曇り時々晴れ。強い風が吹いて日が暮れる前から寒い。アルクルセン牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、カルロス・ヌニェス牧場)。ソブレロ、アナ・マリア・ボオルケス牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ホセ・ルイス・オスボルネ牧場)。闘牛士、セサル・リンコン、エル・フリ、エル・シド。満員の入り。ソルのテンディド5にて写真撮影しながら観戦する。

 セサル・リンコンはやる気もあったし良い仕事をした。しかし、牛が今日も悪かった。初めの牛は非常に難しい牛。あの牛から良く長いパセを引き出した。だから観客から拍手を貰ったのだ。誤魔化しがない闘牛。それがセサル・リンコンなのだから。2頭目の牛は、非常に期待を持たせるファエナの始まりだったが・・・。

 長いベロニカが繋がるとオーレがなりメディア・ベロニカで拍手がなった。ピカは左前刺し替えて右前に入った。セサルがラルガで牛を置いてピカドールが牛を誘う。3回周りを廻ってピカを上げて牛を呼ぶとようやく向かってきた。喝采がなった。セサルは良いピカドールを持っている。バンデリージャもアドルフォが良い仕事をしたが最後が1本しか刺さらなかったので喝采はならなかった。バンデリージャの時に、牛が後ろに立っている闘牛士の方に行った。ピカではなかなか遠くから来なかったが、きょっとしたら遠くから呼べる牛かも知れないと思った。

 牛は観客に捧げられた。アレナ中央に立ってブルラデロにいる牛を呼ぶと30mくらい離れたところから牛がムレタに向かったやってきた。オーレがなる。距離を取り15mか20mくらいの所からまた牛を呼んだ。牛はムレタに向かった。デレチャッソを3回リガールしてパセ・デ・ペチョ。オーレと喝采がなった。目の前で2人の闘牛士が耳を切ってセサルも黙って入れない。こういうライバル心が闘牛を面白くする。離れデレチャッソを3回リガールしてパセ・デ・ペチョ2回で拍手がなる。今度はナトゥラル。しかし、牛はパセの時に頭を下げてムレタに向かってこない。一瞬だけ頭を下げるがそれが続かない。

 だからどうしてパセが面白くない。ムレタを振ってずっと頭を下げていれば観客は興奮してオーレを叫ぶがそうならないのだ。折角良いファエナになるかと思っていたが、これじゃどうしようもない。牛が出てきたときから頭が高くピカも良いところに入っているのに・・・。セサルの技術をしても、この牛に頭を下げ続けさせてパセを通すことは出来ないのだ。剣を代え、アジュダード・ポル・バッホを繋ぐが牛が動かなくなった。スエルテ・ナトゥラルで牛を置き良いところにテンディダだったが決まった。退場する牛に口笛が吹かれ、セサルには拍手が送られたが、アレナに出てきて挨拶はしなかった。牛にもそれを上手く動かすことが出来なかった自分自身にも不満だったのだ。

 エル・フリは、今日1頭目の牛で耳2枚取れたのにどうしてファエナを途中で止めてしまったのだろうか?あと1連のパセ(3,4回パセしてレマテ)を2回していれば確実に耳2枚のファエナになっていたのに。観客が耳2枚と確信できなかった。僕にはプエルタ・グランデしようという欲が感じられなかった。それがどうも腑に落ちないのだ。ともあれ今日のフリは良かった。セサルの始めに牛のキーテは体の近くを通すチクエリナを繋ぎ観客に驚きと悲鳴を上げさせた。メディア・ベロニカが決まると喝采がなった。

 そして、今日始めの牛は、インバリドで交換になる。代わった牛は、ベロニカを繋ぐと首を横に振った。頭が下に行かない。ピカは、左後ろと右後ろに入った。バンデリージャが6本打たれたが最後のパルが肩の横に刺さっていた。膝を折ったデレチャッソのあと牛をアレナ中央へ持っていった。あのやり方は昔セサル・リンコンがやったやり方だった。それから距離を取ってデレチャッソを4回リガールしてパセ・デ・ペチョでオーレと拍手なった。離れクルサードして4回パセ繋ぎパセ・デ・ペチョでオーレと喝采がなった。手の低い長いパセが繋がっている。いつものフリとは違う。

 離れナトゥラル。クルサードしていない。2回パセ。クルサードして5回パセが繋がるとオーレの声が大きくなってパセ・デ・ペチョで喝采がなった。良いじゃないかフリ。ナトゥラルを4回リガールするとオーレの声はさらに大きくなった。パセ・デ・ペチョで喝采がなった。離れデレチャッソを5回リガールしてパセ・デ・ペチョで喝采がなる。ここで剣を代えた。彼は、1連のパセ(3,4回パセしてレマテ、スペイン語で、タンダ・デ・ムレタッソ)を5回しかやっていない。何故途中で止めるのだろうと思った。アジュダード・ポル・バッホを5回。オーレがなる。スエルテ・ナトゥラルで牛を置き良いところに良い剣が決まった。ほぼ完璧な剣刺しだった。

 牛が座り観客席が白いハンカチで真っ白になった。口笛が鳴り響く。プレシデンテは耳1枚出すことを許可した。が、観客はさらにもう1枚の耳を要求して白いハンカチを振り続けた。しかし、プレシデンテは2枚目を出さなかった。剣も最高に近い剣だったが、やはりファエナが足りなかった。観客もプレシデンテも、耳2枚という確信が持てるまでには至らなかったのだ。タンダ・デ・ムレタッソがあと最低2回必要だったと僕は思う。それが残念だ。そうすればプエルタ・グランデ出来たのに・・・。おかしかったのは耳が出ているのに、耳を切らずに牛が退場して口笛が吹かれた。全く訳が分からない。

 エル・シドは、去年に続きプエルタ・グランデをした。初めの牛の剣が1回で決まっていたら耳2枚出ていたかも知れない。それでも、今日のファエナは素晴らしかった。では初めの牛から。頭が高く角が広い牛。後ろ脚が弱い。足を止めたベロニカ出来ない。カポーテで角をアレナに突いて転ぶ。ピカは左右の前に入った。セサルのキーテではブスカンドした。バンデリージャの時に牛はアゴを上げてバテていた。これでファエナが出来るのかと思った。牛は観客に捧げられた。

 アレナ中央でナトゥラルから始めた。クルサードして3回パセを繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手。離れクルサードして3回パセ。引っ張るような長いパセのあとパセ・デ・ペチョで拍手がなる。それから場所を移動して手の引く長いナトゥラルが3回繋がるとオーレがなりパセ・デ・ペチョで喝采がなった。離れデレチャッソを3回繋ぎパセ・デ・ペチョでオーレの声が大きくなり喝采がなった。離れクルサードして4回パセをリガールしてパセ・デ・ペチョで牛の前に立って喝采を受ける。離れ手の引く長いナトゥラルが3回続くとオーレの声はさらに大きくなった。パセ・デ・ペチョで牛の前に立って喝采を受ける。

 剣を代え、アジュダード・ポル・バッホを4回繋ぐとオーレが続いた。スエルテ・ナトゥラルで牛を置きピンチャッソ1回。そのあとカイーダで入った。闘牛場が白いハンカチで埋まった。口笛が鳴る。プレシデンテは耳1枚出すことを許可した。もし、剣が1回で決まっていたら耳が2枚出ていたかも知れない。

 最後の牛は難しい牛だった。下山さんが言うにはクルサードできない牛。でも、エル・シドはちゃんとクルサードしてパセを繋いでいた。立派です。誤魔化しがない。だから、ラス・ベンタス闘牛場の観客から愛されるのだ。この牛は後ろ脚が弱かった。ファエナはアレナ中央から始めた。膝を折ったデレチャッソすると牛がよろついた。3回パセを繋ぎ今度はクルサードして2回パセを通してパセ・デ・ペチョで牛の返りが早い。離れデレチャッソを4回繋いだ。その内2回が長い良いパセだった。パセ・デ・ペチョで牛の返りが早い。

 離れデレチャッソを4回リガールするとオーレが続いた。パセ・デ・ペチョで拍手がなる。離れナトゥラル。こっちは危ない。それでも手の低いナトゥラルが2回繋がりオーレの声が大きくなりパセ・デ・ペチョで喝采がなった。クルサードしてナトゥラル。3回繋ぎオーレが大きくなりパセ・デ・ペチョで喝采。エル・シドはプエルタ・グランデの鍵を今手に入れている。デレチャッソ。深いクルサードに拍手が沸く。パセを繋ぎパセ・デ・ペチョで喝采。膝を折ったパセを繋ごうとしたが牛が動かなかった。そのままの姿勢で、喝采がなった。剣を代え、スエルテ・ナトゥラルで牛を置き良いところに剣が入った。デスカベジョが1回で決まり歓声が上がり闘牛場が白いハンカチで埋まった。耳1枚。プエルタ・グランデが決まった瞬間だった。最後の牛は難しかったが良い仕事をした。

 エル・シドはこれで出場機会2回連続のプエルタ・グランデである。明日出場するセサル・ヒメネスもそうである。記録を持っているのは、セサル・リンコン。出場機会4回連続プエルタ・グランデを91年の1年間の中で達成した。本来なら5回連続の記録を持っていたはずだが、5回目は残念ながら剣刺しを失敗して達成できなかった。エル・シドは6月2日に3回連続に挑む。そして、明日はセサル・ヒメネスがそれに挑戦する。

 闘牛が終わりプエルタ・グランデに行った。写真を撮るのが大変だ。カメラマンが一杯いて非常に撮りにくい。なおかつ騎馬警官の馬に蹴られそうになるからだ。写っていればいいが。それからみんなと会った。横をエル・シドのお父さんが通ったので、おめでとうと、言うと嬉しそうに笑って、手を出してきたので握手した。シーラさん夫婦も喜んでいた。こんなの観たらまた観たくなりますねと、旦那さんが言っていた。Sさんは15日にも会ったが、あの時がガッカリしていたが、今日は満面笑みで良かったと、顔を赤くしてた。Tさんはエル・シドの手を握ってしばらく離さなかったと喜んでいた。寿美さんも笑顔、番長もWさんも。榎本さんも喜んでいた。YさんとTさんは、セサル・リンコンは残念だったね、と、言うから、牛が頭下げなかったから仕方がないと言った。Tさんがセサルはラス・ベンタスのお客さんに愛されているね。と、言っていた。今日だって胸張って帰れることをしたし、過去においてもそれだけの実績を積み重ねてきたのだ。今日は運がなかった。こういう日もある。

 部屋に帰ってきて下山さんにTELをした。フリについては、牛が動いている内にファエナを止めるようにロベルト・ドミンゲスから言われているのではないかと言っていた。でもね・・・。エル・シドは、乗っているときの闘牛士でダメな牛でも耳を切ってしまう凄さがあると同じ意見だった。セサル・リンコンについては、TVのインタビューでセサルが、自分だけ牛が悪くて不公平だと言っていたそうだ。訊いていて笑った。闘牛ってそういう物だと言うことをセサルが1番よく判っているはずだ。でも、そういう風に言うことが、まだまだ俺は良い闘牛が出来るぞと、言っているように聞こえたからだ。そうベネフィセンシアが未だ残っているのだから。


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