感動、感動、感動!セバスティアン・カステージャ命賭けの物凄いファエナ!しかし、剣でプエルタ・グランデが消える!マドレ・ミア!

2006年5月12日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場のサン・イシドロ3日目(18回目)開催の結果。

19時開始、21時20分頃終了。セバスティアン・カステージャが退場したのが25分頃。21時04分照明点灯。

プレシデンテ、セサル・ゴメス・ロドリゲス。今年4回目のノー・アイ・ビジェテで、観客は満員。

牧場

ドミンゴ・エルナンデス、ガルシグランデ、ホセ・ルイス・ペレダ
   1頭目は、普通。2頭目は、良い牛。3頭目は、左角が短い。
   4頭目、角が広く走り回ってばかりで落ち着きがない。前脚が悪く、ブスカンドする。
   5頭目は、ブスカンドするし動かない牛。6頭目は、非常に良い牛でやりやすい。


闘牛士

エル・ファンディ 弱い耳要求で挨拶、沈黙。

セバスティアン・カステージャ 耳1枚とそれに対する弱い抗議があった、拍手(アビソ2回)。

エル・カペア =コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ 挨拶と抗議の口笛、沈黙。

 追記:セバスティアン・カステージャのバンデリジェーロのファン・マヌエル・モリーナがコヒーダされ
 医務室に行く。プンタッソなので軽傷の模様。

 くもり。初めは暑かったが、日が暮れても寒くはなかった。闘牛が熱かった。1頭目、2頭目、3頭目、6頭目、ガルシグランデ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場。4頭目、ドミンゴ・エルナンデス牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場。5頭目、ホセ・ルイス・ペレダ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、クロティルデ・ロペス・ドミンゲス牧場。闘牛士、エル・ファンディ、セバスティアン・カステージャ、エル・カペア=コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。満員の入り。ソルのテンディド6にてMさんと一緒に観戦する。開始19時、21時20分頃終了。

 今日は、エル・カペアのコンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。よって1頭目と6頭目の牛を相手にする。が、こんな奴どうでも良い!馬鹿は後回しにする。兎に角始めにセバスティアン・カステージャを書かなかったら何の意味もない!

 セバスティアン・カステージャは物凄い!感動で涙ぐんでしまった。もう少しで嗚咽を上げるところだった。感情が込み上げてくる。何という感動なのだろう!言葉で表すのが勿体ない気さえしてくる。しかし、伝えなければならいならない責任と義務が生じる闘牛だった!下品かも知れないが、ずっと勃起したまま射精しいるような状態の感動と興奮が未だに続いている。とんでもない奴だ。とんでもないファエナだ。スペインでは外国人闘牛は、差別的に扱われるが、セサル・リンコンにしろ、セバスティアン・カステージャにしろ、トレロ・コロンビアーノとか、トレロ・フランセスとか言われないだけの実力と感動を持った闘牛士だ!これは間違いない!確認された事実だ!!!

 改めて、セバスティアン・カステージャ。初めの牛は、出てきてベロニカを繋ぐと左角がブスカンドした。体型的に太め。これは競走馬を普段観ているから感覚として判ること。ベロニカを繋ぐとオーレがなった。牛はカポーテの動きに付いてくる。綺麗なメディア・ベロニカを繋ぐと拍手が起きた。馬の前に牛を連れて行くためにカポーテを振っていたら牛が膝を着いた。ピカは左前に入った。牛は馬を倒しピカドールが危なかった。牛を馬から離しカポーテを振っていたらまた牛が膝を着いた。キーテは、正面を向いて軸がぶれないチクエリナ。オーレがなる。綺麗な曲線を描いたラルガ。拍手が沸く。右角を通すパセだった。牛がまた膝を着いた。ピカが同じ所に入った。この牛は左角が短かった。

 バンデリージャが6本打ち終わるとセバスティアンは、アレナ中央へ立った。ブルラデロ付近にいる牛を呼んだ。牛はセバスティアン目掛けて走り出した。セバスティアンは、左側から牛に向かい、右手に持ったムレタを背中の方に振った。牛はセバスティアンの背中すれすれに通りすぎた。オーレと悲鳴が上がる。それから体の右側に行った牛をパセしてデレチャッソを繋ぎ、手を替えて体の近くを通しパセ・デ・ペチョ。オーレと悲鳴が重なりながら続いた。喝采がなる。この牛は左角が短い。それなのに、初めのパセを左角が通るようにし向けた。案の定、牛は体ギリギリを通った。刺されるかと思って観客は悲鳴を上げたのだ。

 距離を取ってナトゥラル。そんなもん危ないじゃないかと、思ってみていたら、コヒーダされる。悲鳴が上がる。幸い刺されてはいない。ホッとしたのも束の間、何とコヒーダされた左角でパセしようと、ナトゥラルで牛を誘う。それは危ないでしょ!でも、セバスティアンは平気。2回パセを繋ぐと牛が体に向かってきた。また闘牛場に悲鳴が上がる。セバスティアンは後ろに逃げながら、ムレタを振って牛を交わした。牛は明らかにブスカンドして体に狙いを定めている。それを1番判っているのはセバスティアンだ。それなのにまた、ナトゥラルで牛を誘おうと向かっていった。観客は、驚き、呆れ、恐怖した。

 ナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。観客はホッとする。離れまたナトゥラル。何という勇気だろう。徹底している。覚悟が出来ている。異様な緊張感が闘牛場を支配した。セバスティアンはまた闘牛場を墓場にしようとしている。この込み上げてくる感情は何なんだろう。観客は固唾を飲んで見守る。それしか出来ないのだ。怖くて手で目を塞いでいる女性も多かっただろう。いつブッツリと刺されてもおかしくない状況が続いている。パセを2回通した。牛は土に角を突いて倒れた。起きあがり、またナトゥラル。手の低い長いナトゥラルが2回続くとオーレがなった。パセ・デ・ペチョ。観客は立ち上がって拍手を送る。一瞬だが異様な緊張感から解放された喜びだ。そして、感動だ。

 離れようやくデレチャッソ。長いパセが4回通った。体は動かない。オーレが響く。パセ・デ・ペチョを決めると観客は立ち上がって喝采を送った。闘牛場が異様な緊張感に包まれその中で、ついに牛の動きまでコントロールしだした。セバスティアンは命を賭けて闘牛をし観客の心をわしづかみにした。離れ深いクルサード。拍手がなる。パセを繋いで剣を代えた。アレナ中央に置いた牛に向かい、正面を向いて立った。それから右手に持ったムレタを背中で隠しクルサードして誘う。また闘牛場に緊張感が走った。それからムレタを出してマノレティーナをする。体の近くを牛が通るが体が動かない。非常に危険だ。クルサードして誘いマノレティーナ。手を替えてナトゥラル。わざと体の近くを通すようにムレタを少ししか出さない。パセ・デ・ペチョ。オーレがなり喝采がなった。物凄いエモシオンだ!アレナ中央で剣刺し。カイーダだったが牛が倒れた。セバスティアンは、ファエナの殆どをアレナの中央で行った。しかも、剣刺しまで。凄いことだ。

 闘牛場に牛が倒れる前から白いハンカチが振られた。牛が倒れると闘牛場の360度に感情を揺り動かされた観客の心のように白いハンカチが振られた。物凄い抗議の口笛が吹かれる。プレシデンテに早く耳を出すように強く要求しているのだ。プレシデンテのセサル・ゴメス・ロドリゲスは、去年のサン・イシドロでセバスティアンに2枚目の耳を出さずにプエルタ・グランデをさせなかった人間だ。ちょっと心配した。が、ちゃんと耳が出た。良かった。本当に良かった。耳に対する抗議の手拍子も少し起きた。それは剣がカイーダだったからだろう。それはこの場合、問題ではないと思った。セバスティアンは耳を受け取り場内1周を始めた。未だ少年の面影が残る顔で、しかし、あまり笑わない。観ていると、厳しい生死を賭けたファエナのあとで放心しているようにさえ見えるのだ。

 プエルタ・グランデがかかった2頭目。牛は頭が高く角が広い。角に刺されたら即死するような角だ。だから、僕の仲間内では即死型の角と言っている。ベロニカを繋ぐと牛はパセの時に頭を上下させる。角は地面に平行に通っていく。飛行機が旋回するように廻る方に傾かないのだ。パセが抜ける感じだ。そして、また左角が短い。ピカはほぼ背骨の上に入ったが後ろだ。あと10cm後ろに入れなければならないのに。ピカのあと、牛の動きが止まった。2回目のピカも同じ所に入った。後ろだろうと思った。これじゃファエナにならないぞと思った。バンデリージャのあと、牛は観客へ捧げられた。拍手がなった。モンテラをアレナ中央部に置きタブラの方へ歩いていった。

 膝を折ったデレチャッソからアレナ中央部へ移動し、距離を取って牛を誘う。デレチャッソが4回繋がるとオーレがなった。パセ・デ・ペチョで拍手がなる。離れデレチャッソをクルサードして3回パセを通し、クルサードして4回パセを通しパセ・デ・ペチョ。オーレが続き喝采がなった。しかし、2回目のパセの時に牛はブスカンドした。危ない牛。離れデレチャッソを2回繋ぐと牛が止まった。クルサードして2回パセを通しパセ・デ・ペチョ。牛と接触して靴が片方脱げた。悲鳴が上がる。もう片方の靴も脱いで牛に向かう。そして、より危険な左角のパセ、ナトゥラルを始める。3回パセを通すと体の近くを角が通った。パセ・デ・ペチョで拍手がなる。

 離れデレチャッソ。牛の動きが止まってきた。クルサードを繰り返してパセを繋ぐ。クルサードの度に拍手がなる。ホセ・トマスのようだ。まるでホセ・トマスが闘牛をやっているようだ。しかし、これは真似ではない!セバスティアンの命を賭けたやり方が、ホセ・トマスの幻影とダブルのだ。デレチャッソからナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョで牛の前にピッタリ止まって見栄を切る。喝采がなる。ケ・トレロ!ケ・トレロ!と叫び声を上げそうになった。しかし、ここで叫んだら泣き崩れてしまいそうで声が出なかった。もう目はウルウル状態。極度の緊張状態が続くので肩がこってくる。

 剣を代えて、牛の前に立ってクルサードしてマノレティーナ。丁寧にクルサードしてマノレティーナ。手を替えてナトゥラルからトゥリンチェラ、パセ・デ・ペチョ。牛の前に立ち止まって見栄を切ると喝采がなった。あとは剣だけだ。これが決まればプエルタ・グランデ。感動と期待で闘牛場は静寂に包まれた。剣を構えて牛に向かった。剣が刺さった。しかし、何とバホナッソ。あー天を仰いでしまった。抗議の口笛が吹かれる。アビソ。牛が倒れない。バンデリジェーロがカポーテを振っていたら牛に追いかけられてコヒーダされた。もう1度剣刺しに行く。スエルテ・コントラリアでカイーダ。牛は口から血を吐いて座った。プンティージャで牛が立ち上がった。2回目のアビソが鳴る。そして牛が倒れた。耳は出ず、喝采がなった。非常に残念だった。しかし、これほど感動したことには非常に満足した。

 エル・ファンディは、バンデリージャとキーテで見せ場を作った。本当なら初めの牛は耳が切れた良い牛だったのでファエナをちゃんとやっていればと思う。そこが未だ出来ない。しかし、カポーテとバンデリージャは上手い!チクエリナだって軸がぶれない。牛がちゃんと体の近く旋回していく。立派だ。バンデリージャは優に及ばず素晴らしい。兎に角、ファンディのバンデリージャは世界一なのだから。ビオリンだってあんなに簡単にやってしまう。牛を走りして打つバンデリージャは他の誰も真似が出来ないものだ。今日は、牛が勢いよく走りすぎて角の間では打てなかったのが残念だ。

 エル・カペアは殆ど話にならない。最後の牛などは簡単に耳を切れる牛。カポーテを振っていたら素直にそのまま付いてくる。それをカポーテが始まって少ししたら変な振り方を繰り返して牛を自分でダメにしている。ムレタだってまともに振れていない。ちゃんと振れたときだけ牛は良いパセで通っていた。牛の質が高いから変な振り方をしてもいつでも良いパセに対応出来るだけ。カペアが良い訳ではない。あの牛でちゃんとしたファエナが出来ないのならどの牛で出来るわけ?信じられない非道さだ。父親が大闘牛士のニーニョ・デ・ラ・カペア。子供なのにニーニョが取れているのがおかしい。多分、闘牛は、アポデラードのフェルナンド・ロサノに教えられているのだろう。何故なら余りにも下手だからだ。父親に教えて貰っているのならこんなに無様じゃないだろう。

 闘牛が終わってみんなで集まった。Yさんはセバスティアン・カステージャに感動していた。何かホセ・トマスみたいでしょうと言うと、本当にそんな感じで、でもあれは真似じゃないのと興奮して言っていた。そして、昨日のプエルタ・グランデよりずっと感動したと目をウルウルさせながら言った。あたし決めた。16日タラベラにセバスティアンを観に行く!と言っていた。それから、去年のサン・セバスティアン・デ・ロス・レジェスのセバスティアン・カステージャを観て感動して、サン・イシドロ以降今まで闘牛観てなかった事を後悔して9月の追っかけを敢行した話をした。Tさんも同じように昨日よりすっと良かったと言っていた。番長も、一緒に観ていたMさんも笑顔。そして、初めて闘牛を観たcaballoさんも感動していた。みんな興奮状態だったので飲みに行くことにした。みんなでセバスティアン・カステージャに乾杯して飲んだ。いやー本当に良い闘牛、感動を戴いた。セバスティアン、ありがとう。本当にありがとう。

 観戦記を書きながら泣いている俺は馬鹿だ。でも、カペアの馬鹿とは、馬鹿が違う!俺は感動に震えている馬鹿なのだから・・・。

 人は真剣に生きることを要求されている。セバスティアン・カステージャは言葉ではなく、闘牛でそれを深く語った。そのことは忘れてはいけないことだ。セバスティアンの闘牛は、観客の心の奥の奧まで感動が入り込んでくる。そんな感動が今日の闘牛にあったのだ。この事を記録出来ることは幸せなことだ。ありがとう。本当にありがとう。セバスティアン。


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