雨の午後。笑顔のセサル・ヒメネス、プエルタ・グランデ!エンカボ、エドゥアルド・ガジョ、耳1枚。ケ・グラン・タルデ!

2006年5月11日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場のサン・イシドロ2日目(17回目)開催の結果。

19時開始、21時15分頃終了。プエルタ・グランデは20分頃。19時51分照明点灯。

プレシデンテ、マヌエル・ムニョス・インファンテ。今年3回目のノー・アイ・ビジェテで、観客は満員。

牧場

ビクトリアーノ・デル・リオ
   結果的に観れば、良い牛が出たと言うことになるのだろうが、1頭目、2頭目は、確かに良い牛。
   3頭目は、4頭目は、5頭目は、コンプリカド。6頭目は右角が良い牛。


闘牛士

ルイス・ミゲル・エンカボ 口笛、耳1枚とそれに対する抗議があった。

セサル・ヒメネス 耳1枚、耳1枚とそれに対する弱い抗議があった。

エドゥアルド・ガジョ 沈黙、耳1枚。

 開始のラッパが鳴ったら強風が吹き雲に覆われ3頭目の途中から雨が降り出す。カッパを着ていたので、寒くはなかった。ビクトリアーノ・デル・リオ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場。闘牛士、ルイス・ミゲル・エンカボ、セサル・ヒメネス、エドゥアルド・ガジョ。満員の入り。ソルのテンディド5にて観戦する。開始19時、21時15分頃終了。



 今日は順番を変えてセサル・ヒメネスから始める。何故ならプエルタ・グランデしたから当然である。セサル・ヒメネスは、初めの牛を迎える前に、テンディド9にあるブルラデロではなく、テンディド6にあるブルラデロに行った。強風が吹く中で1番風が吹きにくいところがテンディド5だからだ。ホセリートのアドバイスかも知れないが初めからこの日のコンディションを考えている。走り回る牛。テンディド7の前でベロニカを繋ぐとパセの時に牛が飛んだ。返るときに体を急に曲げたのでバランスを崩して牛を足から崩れた。ピカは左前に2回入った。前脚が悪い。

 バンデリージャのあとのファエナは、アレナ中央で膝を着いてデレチャッソで構えて牛を誘った。テンディド6にあるブルラデロの所にいた牛が走り出してムレタに向かっていった。膝を着いたデレチャッソが5回繋がるとオーレがなった。牛がまた膝を着いた。パセ・デ・ペチョで喝采がなる。距離を取って遠くから牛を誘ってデレチャッソで3回繋ぎパセ・デ・ペチョ。オーレがなり喝采が沸いた。最後のパセは角にはらわれていた。デレチャッソで場所を移動した。風は未だ吹いている。距離を取り、ナトゥラル。クルサードして角にムレタをはらわれる。それから手の引く長いパセが3回繋がるとオーレなったが、牛が膝を着いた。パセ・デ・ペチョで拍手。距離を取り手の引く長いパセが3回でオーレが続き牛を廻すようなパセで喝采がなる。

 ナトゥラル1回でクルサードして2回目のパセで牛がブスカンドした。クルサードしてまたブスカンド。それでも逃げずにパセを繋ぐ。良い根性している。パセ・デ・ペチョ拍手。でも危ない。離れテンプラールなデレチャッソが3回繋がるとオーレが続き喝采がなる。剣を代え、スエルテ・ナトゥラル良いところに決まった。グラン・エストカーダ!牛が倒れ耳1枚。笑顔で場内1周。

 2頭目は、非常に難しい牛だった。頭が高くブスカンドした。角にムレタを何度もはらわれた。今日1番難しい牛だった。ピカは右前に2回入った。ファエナはアレナ中央へ牛を連れて行って始めた。距離を取りデレチャッソで2回パセを繋ぐとブスカンドした。それでもクルサードして2回パセを繋いでパセ・デ・ペチョ。拍手がなる。牛は初めからなかなか動かない。パセとクルサードを繰り返して何とか良いパセを繋ごうとしている。パセの時に姿勢も腰が引けたりしていない。綺麗な曲線を作ってパセを通している。危ない牛なのに見事である。

 ナトゥラルでは同じだった。パセとクルサードを繰り返して何とか良いパセを引き出そうとしていた。でも牛は、なかなか動かない。時々長いパセが繋がるとオーレがなった。牛はムレタとセサルの体を交互に観たりしていつ向かってくるか危ない状態だった。それでも落ち着いて牛の前に立っていた。牛が疲れてきてメディア・パセになっても、丁寧にクルサードをして牛を操ろうとしていた。それがフリみたいに嫌みじゃない。常に緊張感が漂っている。レマテをパセ・デ・ペチョで決めると喝采がなった。剣を代え、スエルテ・コントラリアで良いところに決めると牛が座った。耳1枚。抗議の弱い手拍子も起きたがプエルタ・グランデが決まった。4月16日ドミンゴ・デ・レスレクシオンに続いて2回連続のプエルタ・グランデである。彼の将来の可能性の高さを感じさせるファエナだった。

 ルイス・ミゲル・エンカボ。この日初めの牛は良い牛だった。しかし、雲に覆われ強風が吹く中で、ファエナになった。テンディド5に牛を移動させて始めたが風がやまない。そういうときは、変に風の吹いていない場所を探さずにそこでずっとやるべきなのだ。何故ならラス・ベンタス闘牛場ではここが1番風が吹かないところなのだから・・・。それを我慢できなくてテンディド10へまた移動した。そっちの方が風強い。良い牛だから期待していたのにダメだった。牛には拍手がなったが、エンカボは口笛を吹かれる。中途半端な場所の移動の繰り返しだけで時間をつぶしたからだ。この牛が今日1番良かった。

 エンカボの2頭目の牛は、頭が高くブスカンドする牛だった。それをムレタを上手くコントロールして捌いていた。遠くに置いた牛をクルサードして誘う。頭が高い牛を操るのはこういう風にするんだと言うように、牛を誘うときのムレタの位置は高いが、そこからパセしながら手を低くして通し、最後は頭をかなり低い位置にまで下げさせてパセを繋いでいた。当然、オーレがなった。こういうパセは、他の闘牛士の手本になるパセだ。非常に素晴らしいパセだった。剣は、カイーダだったから抗議の口笛が吹かれたが、ファエナの内容から言って耳1枚の価値が充分あった。

 エドゥアルド・ガジョは良くやった。初めの牛でもガンバったが、最後の牛ではさらに良かった。牛は、頭が高く、特に左角がブスカンドした。カポーテを大きく広げたベロニカを繋ぐとビエンの声が出た。メディア・ベロニカで拍手がなる。前脚が悪い。ピカは左前に入った。キーテは、牛の正面を向いてチクエリナ3回でラルガを決めた。オーレを拍手がなった。上質のパセだった。ピカが同じ所に入り、エンカボのキーテは、チクエリナ。こちらは軸がぶれる。レマテは、メディア・ベロニカ2回。これは良かった。オーレと拍手がなった。

 バンデリージャのあと、牛は観客に捧げられた。モンテラを投げるとちゃんと上を向いていて観客が喜んだ。デレチャッソで牛を左右にパセして、アレナ中央へ行って牛を遠くから誘った。今日の3人は全員遠くから牛を呼ぶ。これも今の流行だろう。それを作ったのはセサル・リンコンだ。牛を遠くから呼んでデレチャッソを3回繋ぐとオーレがなった。パセ・デ・ペチョで拍手がなる。今日の3人は素晴らしい。距離を取り、デレチャッソを3回繋ぎパセ・デ・ペチョから右手から左手にムレタを替えてパセを仕様としたらコヒーダされた。悲鳴が上がる。角は両足の間に入ったので角傷は受けなかったが、左頬から首にかけて牛の返り血が付いた。あとから下山さんが言っていた。ポンセは凄い。ガジョは、マノ・カンビオのパセでコヒーダされたのは、右手から左手にムレタ持ち替えるときにムレタの動きのスピードが変わるから牛が体の方に来てコヒーダされたけど、ポンセは、持ち替えてもムレタの動き、スピードが変わらないので牛がスムーズに通っていく、と。

 それからまた離れてデレチャッソ4回繋ぐとオーレの声が大きくなった。パセ・デ・ペチョで牛の前に止まって、喝采がなる。距離を取り、パセ・デ・フローレスから4回パセを繋ぎパセ・デ・ペチョでオーレの声はさらに大きくなり喝采が沸いた。離れトゥリンチェラからナトゥラル。クルサードして誘うが、牛が反応が悪い。パセが短い。それでまたデレチャッソに変えた。パセが短くなってムレタを落とし剣を代えた。左手にムレタ、右手に持った剣をムレタに添えてマノレティーナのようなパセをクルサードして誘い4回繋いだ。体の直ぐ近くを通すパセに観客は息をのんだ。パセ・デ・ペチョが決まると喝采がなった。スエルテ・コントラリアで牛を置き、ほぼ良いところに剣が決まった。牛が座り耳1枚。2間出でるかと思ったが、ペティシオンがなかった。残念だ。

 セサル・ヒメネスは、欠点が少ない。あらゆる面で色んな事を知っている。そして、瞬時にそれを表現できる。いわば優等生的な闘牛士だが、しかし、模範的である。これは重要なことである。やっていることが素晴らしい。彼の2頭目の牛のファエナでは、ホセ・トマスが非道い牛でプエルタ・グランデを決めたファエナを思い出した。そこまでの感動はなかったが、彼にとっては非常に重要なファエナだった。将来大闘牛士になっていくだろう予感を大いに感じさせられた。

 今日1番驚いたのは、エンカボ。4頭目の頭の高い牛で見せたムレタは素晴らしかった。パセの時に体を通り過ぎてから手を低くして牛の頭が1番低くなって通っていた。ああいうパセは素晴らしい。そして、今日1番感動したのがエドゥアルド・ガジョ。セサル・ヒメネスのようにそつなく上手ければ良いという物でないのが闘牛だ。技術的には足りない部分があるが、それでも感動がある。僕はこういう闘牛の方が好きなようだと思った。ガジョ良くやった。気持ちの中では耳2枚だったと思って居るよ。

 サン・イシドロで1日に耳4枚出たのは2002年5月24日以来の事である。こんなに耳が出る日はそうない。今年1番耳が出た日になるのかも知れない。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。


ホームに戻る  2006年闘牛観戦記