99年5月9日、ラス・ベンタス(マドリード)の結果

泣きそうになったグラン・ファエナで、ホセ・ルイス・ボテ耳1枚取る。

por 斎藤祐司

 牛、ラモン・サンチェス、と、イバルゲン。闘牛士、ホセ・ルイル・ボテ、レオナルド・ベニテス=コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ、ホセ・アントニオ・イニエスタ。

 

 1頭目、レオナルド。シンプルなベロニカを続けた。ピカは左肩の後ろに入る。定位置に行く間に牛がピカドールに向かっていったので刺した。2回目は肩の後ろ、刺し代えて肩の前に刺す。キーテは、ファロールを連発してラルガ。なかなかやる。バンデリージャは自分で撃つ。観客に挨拶をして左に行きゆっくり撃つ。テンディドス7に挨拶して右に行って角の間で撃つ。3回目も同じ。大きな拍手が沸く。アルテルナティーバの儀式が始まる。ボテから剣とムレタを受け取り、カポーテを渡す。ボテからはわりと長いレオナルドへの言葉があった。

 レオナルドは、プレシデンテに挨拶をしてからアレナの中央に行って観客に牛を捧げた。中央で牛を誘う。牛は突進していった。牛を誘うときにクルサードが足りない。が、牛は動く。パセを繋ぎ左手のパセ・デ・ペチョは脇が開いている。パセ・デ・フローレンス、右手のパセを続けが牛は膝を着く。ナトゥラルはクルサードしているが、ピコだ。左手のパセ・デ・ペチョ脇が開く。ファロール、ナトゥラル、を繋げる。クルサードして手の低いパセをする。合格点のパセだが何かが足りない。

 ベルナディーナ3回、パセ・デ・ペチョ、牛の前で見栄を切る。拍手。剣刺しは中央でやる。珍しい。はじめて見た。良い剣が入る。牛はもう死んでいる。ただ、剣を刺しに行くときに剣が牛の体に中央に向いていず外側に向いていた。白いハンカチは振られたが耳は出なかった。当然だ。

 2頭目、ボテ。膝を折ったベロニカ、シンプルなベロニカを続けメディア・ベロニカ2回、ラルガ。拍手が沸くが、牛の前脚が悪い。抗議が起こる。ピカが入るとまた牛が膝を着く。牛交換。

 代わった牛は上手くパセの出来ない牛。走り回っている。この悪い牛でムレタでパセを繋ぎ「オーレ」を合唱させる。パセ・デ・ペチョは脇が開くも牛が悪いので仕方ない。剣を代えてスエルテ・ナトゥラルで良い剣を刺す。ボテ右手を上げて左右に振っている。牛は倒れた。白いハンカチが振られるが耳は出なかった。残念。

 3頭目、イニエスタ。パセをすると直ぐに向きを変えて向かって来る牛。ピカは瘤の後ろに入る。牛、膝を着く。ムレタでのパセの後、膝を着く。クルサードするが右手のパセ、手が高い。ムレタが角にはらわれる。ナトゥラルも手が高い。パセの後、牛は座り込んでしまう。剣刺しはバホナソ。

 4頭目、ボテ。足を止めたパセが出来ない。ピカは左肩上に入る。刺し代えて左肩と背骨の間。次は肩の後ろに入る。悪いピカの見本。ムレタではクルサードして右手のパセをするが牛が思うように動かない。それでも真面目にパセを続ける。アレナ中央でパセをしているが牛がちゃんと動いてくれない。退屈なファエナが、突然「オーレ」の合唱が起きてきた。真面目にパセをしていたら牛が動き出した。これはボテのつきか、運か。いやいやそう出なきゃ真面目にやった甲斐がないじゃないか。

 クルサードして右手の低いパセを繋ぐ。「オーレ」の声は次第に大きく闘牛場に響いていく。ナトゥラルの手の低いパセが続くと「オーレ」の声はもっと大きくなった。良く牛を動かしたぜ!牛の前で何かを叫んで剣を代えた。ボテが良くやる事だが、今日は格好いいじゃないか。前にいる、おっさんが、物凄く興奮している。パセの度ごとに大声を出してボテを応援している。

 クルサードして膝を折るパセを続ける。「オーレ、オーレ、オーレ」牛をスエルテ・ナトゥラルで置いて、剣を1回で決めた。デスカベジョ1回。闘牛場は白いハンカチで包まれた。耳1枚。これが耳だ。これこそが耳だ。ボテ良くやった。途中で牛が悪くて気を失いそうなくらい眠かったが、バッチリ目が覚めた。こんな悪い牛で、ちゃんとクルサードして手の低いパセを繋いだ。俺の気持ちは耳2枚だ。場内を1周しているときに「トレロ、トレロ」とトレロ・コールまで起きた。目に涙が溜まってくるぜ、ボテ!顔を真っ赤にしてブエルタしてるから恐らくボテも泣いてるんだろう。泣け!ボテ!俺も嬉しいぜ!正しいことをやる闘牛士にはビルヘンも味方する。今日は来て良かったホントに良かった。

 5頭目、レオナルド。膝を折ったベロニカから始めるが角にカポーテを持って行かれる。馬の前に牛を持っていくとき、牛が膝を着いた。牛問題あり。ピカは左肩に2回入る。牛に、フエラの声が飛び、三拍子の手拍子が起こる。ピカ3回目の同じ所。バンデリージャは自分で撃つ。左に行って2回角の間で撃つ。見事。そしてキエブロで大拍手を貰う。これこそ見事だ。

 膝を折るパセから始め、中央で牛を誘う。クルサードして右手パセを繋げて、パセ・デ・ペチョ。途中でコヒーダされそうになったのでやめる。左足が流れ気味になって右手のパセをする。パセ・デ・ペチョはムレタが角にはらわれる。ナトゥラルを繋ぐがまだ足りない。クルサードしてナトゥラルをするがピコだ。パセを繋ぐがムレタを角ではらわれる。手が高い。観客から「ファルタン・ムーチョ」と言われ笑い声が聞こえる。マノレティーナの後、見栄。中央で剣刺し。ピンチャソの後、良いところに決まる。やる気の見える良い闘牛士だが、見せ場はバンデリージャまで。ムレタ捌きはまだまだだ。

 6頭目、イニエスタ。パセの後の牛のバランスが悪い。ピカは肩の後ろ。キーテで膝を着く。ピカの時、膝を着く。瘤の後ろに入る。バンデリージャは3回とも角の間で撃っていた。拍手が起きる。始まりの一続きのパセの後、牛が座り込んでしまった。右手でまあまあのパセを繋いだが牛が動かない。イニエスタは首を振って駄目だという感じだ。ナトゥラルでも牛は動かなかった。剣を代える。スエルテ・ナトゥラルでピンチャソ3回。スエルテ・コントラリアでピンチャソ1回。ピンチャソ・オンダ。ここで席を立った。

 闘牛士が退場する門でボテを向かえるために。ボテが1番始めに戻ってきた。友人や知人の囲まれて抱き合って喜んでいる。ゆっくり待った。そして、「良いファエナだったね」と言って握手した。彼の右手は包帯が巻かれていたので強くは握らなかった。にこっと笑って、「ありがとう」と言って外に出ていった。ボテが出ていくと強い拍手が外で起こっていた。今日は気持ちの良い日だ。良い闘牛だった。ボテに泣けてきた。大怪我を何度も何度も克服して俺には闘牛しかないと、言った男が、今日は本当の闘牛をした。今日のファエナに乾杯。正しいファエナに乾杯だ。

 帰って来て直ぐに、下山さんにTELを入れた。ラジオのニュースを聞こうと思っていた所だったそうだ。今日の闘牛のことは話した。他の2人のことも。俺が泣きそうになったことを話したら笑っていた。が、勿論喜んでいた。恐らくこれからボテにTELをするだろう。だって下山さんとボテは友人なのだから。


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