99年6月9日、ラス・ベンタス(マドリード)の結果

ファン・モラが凄いナトゥラルをして沸かせたが剣刺しを失敗して耳を切れず!

por 斎藤祐司

 

 牛、ビクトリーノ・マルティン。闘牛士、ファン・モラ、マヌエル・カバジェーロ、ウセダ・レアル。

 曇り空で始まったが、途中からどしゃ降りの雨になった。

 ファン・モラは、今日の主役だった。初めの牛でもコヒーダされ次の牛でもコヒーダされた。牛はビクトリーノ・マルティン。良い牛だが闘牛士泣かせの、難しい牛だ。4頭目の牛でカポーテから観客を沸かせた。シンプルなベロニカだが、ゆっくりしたカポーテ捌きで観客を魅了した。メディア・ベロニカはゆっくりとした素晴らしいものだった。

 ファエナは、右手の足を大きく開いた手の低いゆっくりとしたパセをした。が、段々闘牛士の体の方を狙ってくるようになった。これがビクトリーノ・マルティンの牛の特長だ。そしてコヒーダされた。だが大したことはなかった。風が時々強く吹くやりにくい条件だった。ムレタに水をかけてまた牛に向かった。左手のナトゥラルでは探りに来なくなった。クルサードして牛を動かした。ナトゥラルの長いパセが続くと「オーレ」の声は1番大きくなった。このナトゥラル後に、観客が立ち上がって喝采を送った。

 本当に痺れるパセが続いた。耳を疑うものはこの時点ではいなかったろう。剣にキスをして刺しに行ったがピンチャソになった。ため息の様な歓声が洩れた。2回目はバホナソになった。非常に残念な結果だ。

 マヌエル・カバジェーロは、牛に恵まれなかった。5頭目の牛の時にどしゃ降りの雨になった。ゆっくりした手の低いパセを出来なかった。何故なら牛が動かかったからだ。それにどしゃ降りの雨の中じゃ条件が悪すぎる。観客は席を立って雨から逃れる人が多くいたし、残っている人も集中力が切れている。去年のようにビクトリーノ・マルティンの牛で観客を感動させることは出来なかった。

 ウセダ・レアルは、初めの牛で良いファエナをした。ブリンディスはファン・カルロス国王に捧げられた。右手の大きなパセを繋いで「オーレ」をならせた。ナトゥラルをすると体の方に探りを入れてきた。右手のパセに代えて繋いだ。剣はバホナソに刺さった。ちゃんと刺さっていても耳は出なかったろう。

 ビクトリーノ・マルティンの牛は良い牛の代表。今日はまあまあだった。やはり去年の牛に比べれば物足りない気もするが、去年の牛が良すぎた。感動を呼ぶ牛とはああいう牛なのだ。今日はファン・モラが凄かった。ああいうパセを見ていると闘牛の素晴らしさを改めて感じる。ウセダ・レアルのパセは僕の好みじゃない。アベジャンのパセもそうだ。でも2人とも恵まれた才能を持っていることに疑いはない。これは完全に好みの問題だ。

 これで今年の闘牛観戦は終わった。闘牛は素晴らしい。素晴らしい闘牛をする闘牛士は凄い。彼等は見ている人に人生を教えてくれる。それは言葉じゃないから、体で感じることが出来る。体で感じたものはなかなか忘れられないのだ。また、来年の今頃になったら闘牛を観に来いと、耳には聞こえない闘牛士の声が体の中で感じて、サン・イシドロに来るかも知れない。

 闘牛は素晴らしい。人生以上に素晴らしい。この1回性こそが最大の魅力だ。今見なきゃ、いつ見る?


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