エル・シド、バホナッソでも耳1枚。アベジャン、ダメじゃん。アントン、あんぽんたん。

2005年6月3日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 2005年サン・イシドロ後のベネフィセンシア。快晴。暑い。サムエル・フロレス牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、サムエル・フロレス牧場)。闘牛士、ミゲル・アベジャン、エル・シド、アントン・コルテス。プレシデンテ、マヌエル・ムニョス・インファンテ。国王主催のベネフィセンシア(慈善闘牛)の為、ファン・カルロス国王とエレナ王女がロイヤル・ボックスにて観戦。横には、コムニダ・デ・マドリードのプレシデンタ、エスペランサなんたらもいた。闘牛場にへ入るときは切符を売っていたが今年21回目のノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド7バレラにてアナスタシアさんと一緒に写真撮影しながら観戦する。19時開始、21時12分終了。

 入場行進の後、スペイン国歌が吹奏された。6月3日プエルタ・グランデをしたエル・シドに対してオメナッヘの拍手が沸いた。エル・シドはアベジャンとアントン・コルテスを呼んで3人で拍手を受けた。去年のセサル・リンコンがやったと同じ事をやった。こう言うところまで、セサルは手本になっている。

 ミゲル・アベジャンは、金銭的な事で今年のサン・イシドロには出場しなかった。ベネフィセンシアに呼ばれたのはマドリードのアフィショナードの要望による物らしい。今日はそういう状況で、何としてもやるぞと言う気構えと気迫を期待したのに、アベジャン、ダメじゃん。1頭目の牛でベロニカを繋ぐと、「オーレ」がなった。右角が素晴らしい。ピカは左後ろと右前に入った。ピカの後、エル・シドとのキーテ合戦。ベロニカ2回でメディア・ベロニカ。全て左角を通していた。右角が良いのに何故?と思った。アベジャンは、チクエリナを通しメディア・ベロニカ。拍手がなった。盛り上がりが足りないキーテ合戦だった。

 牛は、ファン・カルロス国王に捧げられた。膝を折ったデレチャッソから始めパセ・デ・ペチョ。アレナ中へ行き、デレチャッソを3回繋ぎパセ・デ・ペチョ。あーあっ。クルサードしてないじゃん。だから、「オーレ」が出ない。右角が良いのだからクルサードして手の低い長いパセが出来る牛なのに、それをしない。パセの形が良くても、ここは田舎闘牛じゃない。ラス・ベンタス闘牛場。これじゃ観客は黙ってしまう。剣はスエルテ・コントラリアで良いところに決まった。

 4頭目の牛は、マンソで前脚が悪い。アレナ中央でベロニカを繋ぐと、「オーレ」がなった。メディア・ベロニカ、ラルガを決めて喝采がなった。ここまでは良い。でも、ファエナは始めの牛以上に悪かった。ムレタを牛の角に何度もはらわれていた。クルサードもしない。どうしたアベジャン。やる気が前面に出て命賭けの闘牛が出来ないのなら、技術を見せなきゃダメ。でも、それも出来ない。今日は不発。こんな日もあるのは判るが、サン・イシドロに出れなかった悔しさをここでぶつけなかったらダメじゃん。4頭目のバンデリージャがなかなか刺さらなくて、終わった後、バンデリジェーロがバンデリージャを拾った。すると観客は、意地悪く、いつものように、拾う度に、「ウノ、ドス」とカウントをした。アベジャンのバンデリジェーロのビセンテ・エステラが走ってきて3本目のバンデリージャに近づいて腰を落として拾おうとしたとき、「トゥレス」と観客がカウントしたが、エステラはフェイントを掛けて拾わなかった。そうしたら、闘牛場が笑いに包まれた。カジェホンの中のクアドリージャたちは爆笑していた。僕もおかしくて笑った。こんな事、エステラしか出来ないよなぁ。

 エル・シドには、今追い風が吹いている。ラス・ベンタス闘牛場の観客は彼を観に闘牛場に足を運ぶ。だから観客に魔法がかかったように、静かにさせることが出来るし、「オーレ」を叫ばせることが出来る。2頭目の牛は角が広いサムエル・フロレス牧場らしい牛。ベロニカを繋ぐと、「オーレ」がなったが今一。メディア・ベロニカで拍手がなる。後ろ脚が悪い。牛はファン・カルロス国王に捧げられた。動きそうもない牛を、今のエル・シドは動かしてしまう。距離の取り方、誘う角度、コロカシオン、などもう観客が騒がなくてもちゃんと出来ている。だから、牛が動くのだ。耳には足りないファエナだったが、ちゃんとした仕事が出来ている。

 5頭目の牛で耳1枚を切る。この牛も角が広く上を向いていた。ベロニカを繋ぐと左角が短かった。前脚が弱い。ピカは、左前と左後ろに入った。ピカ後にベロニカをすると、左角が長くなっていた。ピカ効果だ。バンデリージャ後のファエナは、膝を折ったデレチャッソから始めた。アレナの内側へ行きデレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ2回。「オーレ」が鳴り拍手が沸いた。離れて、デレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョ2回拍手がなる。離れデレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ2回。「オーレ」が鳴り喝采がなった。離れてデレチャッソの2回目にコヒーダ。角は足の間に入ったのでコルナーダはない。アレナに落ちた後、グルグル転がって逃げたが、なかなかクアドリージャたちが来なくて危なかったが、ムレタが牛の頭の牛にあったので助かった。

 それからデレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴り拍手がなったが、腰が引けていた。離れナトゥラルを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ。物凄いナトゥラルを1回した。「オーレ」が鳴り喝采がなった。離れナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴り拍手がなった。剣を代えて、スエルテ・コントラリアで牛を置き、バホナッソで剣が決まった。コヒーダもあって白いハンカチが闘牛場を埋めた。耳1枚。テンディド7からは耳に対する抗議の手拍子が起きた。ちょっと甘いけど、耳を持って場内1周するエル・シドの嬉しそうな顔は、そういう気持ちまで和ませる。

 アントン・コルテスは、去年のサン・イシドロでグラン・ファエナをした。この日出場したのもその為だ。今年のサン・イシドロに出場しなかったのは、牛との兼ね合いがあって出たい牧場で出れなくなったから。でも、サムエル・フロレス牧場の牛で出てきて出来るような闘牛士じゃないよなぁ。彼の良かった闘牛は去年の1回だけ。3頭目の牛はマンソだけど危ない牛じゃない。それでも腰が引けたパセを繰り返しパセ・デ・ペチョは、脇が大きく開いていた。それで早めに諦めて剣を代えた。当然口笛が吹かれた。あの牛を、動かせないのは、やる気と技術が足りないからだ。

 6頭目の牛は、首を振りながら来るが、カポーテの前で止まる牛。しかも、即死型の角をしている危ない牛。それをカポーテを振って牛に動きを教えて、外へ外へとベロニカを繋ぐと闘牛場は、「オーレ」を叫んだ。メディア・ベロニカを決めると喝采がなった。やれば出来るじゃないか。でも、ファエナは3頭目と同じ。何も出来ません。恐がりの性格、誉められないと、良い自分が出せない。これじゃ田舎闘牛向き。このままじゃドサマワリの闘牛士で終わるよ。去年悪かった剣は、2回ともメディアだったけど良いところに決まった。それだけが進歩したこと?

 サムエル・フロレス牧場の牛は、角が広く、体がでかく、マンソの牛が多い。だから、闘牛士たちは決してやりやすい牛ではない。でも、こういう牛でもちゃんとした仕事を出来る闘牛士と出来ない闘牛士がいるのだ。今日は、エル・シドだけがちゃんと闘牛が出来、アベジャンとアントン・コルテスは出来なかった。アベジャン、ダメじゃん。アントンは、あんぽんたんだ。

 ベネフィセンシアの闘牛は、サン・イシドロに比べて観客違う。アボノで闘牛場に通っている人じゃない人が多い。だから、雰囲気も全然違う。緊張感も違う。あの神聖な緊張感があるのは、同じラス・ベンタス闘牛場でも、サン・イシドロの時だけである。だからこそ、サン・イシドロの重要性があるのだ。サン・イシドロの耳はその闘牛士を世界に出ていくチャンスをもたらす。プエルタ・グランデは、フィグラへの道を開くのだ。エル・シドは今年それを掴んだ。これからも、努力を惜しむことなく、上を目指して闘牛をしていって欲しい。今、彼の前には大闘牛士への道が見えてきた。そう、セサル・リンコンのように・・・。


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