メホール・タルデ!ビクトリーノの良い牛。エスプラ、耳1枚。エル・シド、ロブレニョ、剣で耳消える。

2003年6月7日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 快晴で蒸し暑いのラス・ベンタス闘牛場。ビクトリーノ・マルティン牧場。闘牛士、フランシスコ・エスプラ、エル・シド、フェルナンド・ロブレニョ。ノー・アイ・ビジェテ。テンディド6でYさん、Tさんと観戦す。

 フランシスコ・エスプラは、今年もやりました。4頭目の牛も、ビクトリーノらしい牛。カポーテで内側に来る。バンデリージャは自分で打った。3回とも左側に回って打った。それほど良いものではなかった。モンテラをかぶったままムレタは右手の膝を折ったパセから始めコヒーダされそうな危ない場面もあったが、アレナ中央に牛を持って行った。クルサードしてパセを繋ぐと、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョ。この牛はちゃんとクルサードしてパセをするとそれに応えてくれる。多少返りが早いがそれほど危険ではない。それが判るとエスプラは笑みを浮かべて余裕が出た。牛の正面にクルサードして立ちパセを繋いだ。クルサードして観客の方を見た。客席が沸いた。パセを繋ぐと「オーレ」がなった。

 一連のパセをパセ・デ・ペチョで切って牛から一旦離れクルサードしてナトゥラルを始めた。「オーレ」がなる。左角の方が良い動きをする。パセ・デ・ペチョ。離れナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。剣を代え、ナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。牛をアレナの中央に持って行って、レシビエンドを決めた。エスプラはバンデリージャに牛は死んだからカポーテを振らないようにと制した。が、バンデリジェーロはカポーテを振ってタブラへ連れていった。デスカベジョを持ち牛の前に立ったエスプラは左手のムレタ振って牛の頭を下げ右手のデスカベジョを左手に持ち替えて、モンテラを右手で取って牛の前に置いた。それからデスカベジョを右手に持って刺した。失敗。牛の背骨が真っ直ぐではなかった。2回目で決めた。観客は耳を要求してプレシデンテは耳1枚を意味する白いハンカチを1回出した。

 味のあるファエナだった。エスプラの悟ったようなあの笑顔が何とも良い。アレナ中央でやったレシビエンドも良かった。デスカベジョの時、モンテラを牛の前に置いたのがとても格好良かった。

 エル・シドを見直した。こんなに出来る闘牛士だったけ?セビージャで、まともにラス・ベンタスで通用するのはモランテと、エル・シドだけだ。後のセビージャと言わずアンダルシア風の闘牛をする闘牛士は殆どダメ。牛が判っているのと、ちゃんとクルサードしてパセを繋ぐ。5頭目の牛は良い牛だった。ファエナは、右手のパセをクルサードして始めた。ムレタの振り方が良い。それとパセの間が良い。牛とムレタの距離がしっかりしているので牛が綺麗に動く。

 右手だけじゃなく、ナトゥラルの時も良い。始めは牛とも距離の取り方が少し短かったが「オーレ」がなると落ち着いて距離の取り方やコロカシオンも良くなった。良いファエナだった。剣もちゃんと決まった。が、アビソが鳴り、デスカベジョが3回。耳が消えた。

 フェルナンド・ロブレニョは、この日も良かった。6頭目最後の牛は僕が好きな牛だった。カポーテの時から、「オーレ」がなる。非常に反応が良い牛。ビクトリーノの牛は芦毛の肌の牛が良いが、この牛は黒い毛だった。牛は観客に捧げられた。右手の膝を折ったパセからアレナ中央の方へパセをしながら移動してパセを繋ぐと「オーレ」がなった。

 中央で牛を誘う時のコロカシオンが良い。もうすでに角2本分クルサードしている。パセが繋がると「オーレ」がなる。パセ・デ・ペチョ。ムレタを出して誘うと牛が反応する。素晴らしい牛だ。見事だ。ナトゥラルも良い動きだ。手の引く長いパセを繋いだ。パセ・デ・ペチョの後牛の前で見栄を切るフェルナンドの表情が命懸けの闘牛を象徴している。牛はムレタに従順に従ってムレタをなぞってパセを続けた。剣を代え、正面を向いて右手のパセをする。牛は動くものにとことん反応する。「オーレ」がこだまする。後は剣だけだった。でも、それが決まらなかった。剣が決まっていたら耳2枚はまで行ったかどうか判らないが、確実に耳は切れていた。ピンチャソ5回で刺せずアビソが鳴り、デスカベジョ1回。牛は場内1周だと思った。観客は要求したがプレシデンテは青いハンカチを出さなかった。

 この日はビクトリーノ・マルティン牧場の牛と言うことでノー・アイ・ビジェテになり、その通り良い牛が出た。6頭目が終わり闘牛士3人が喝采を浴びて退場した後、ビクトリーノ・マルティン牧場のマジョラールが出てきて観客に挨拶した。TV中継したカナル・プルスのアナウンサーは剣が決まっていれば3人の闘牛士がプエルタ・グランデしていたと、言っていた。僕はそれにはちょっと疑問を持つが、今年のサン・イシドロの中で間違いなくメホール・タルデだったと言うことは断言できる。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。


ホームに戻る   2003年闘牛観戦記に戻る