エル・シド再びセビージャを征服!将軍は今年2回連続でプエルタ・デル・プリンシペから凱旋する。

2005年4月7日セビージャ、レアル・マエストランサ(第1級)闘牛場の結果。

 晴れのち曇り。初めはTシャツでも暑いが日が暮れると風が吹き肌寒い。ビクトリーノ・マルティン牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源、または<基の血統>、マルケス・デ・アルバセラーダ牧場)。闘牛士、ウセダ・レアル、エル・シド、ルイス・ビルチェス。満員。多分、ノー・アイ・ビジェテ。ソルのグラダにて、観戦する。開始18時30分。20時45分終了。始まる前にパティオ・デ・クアドリージャで闘牛士のアップの写真が撮れた。

 乗っている闘牛というのは、凄い物だ。今のエル・シドはまさにそれ。旬なのだ。これを観ずしてどうする。だから今日は順番を変えてエル・シドから書くことにする。

 エル・シドは、パティオ・デ・クアドリージャに1番最後に来た。カメラを向けても堂々としている。今日は俺のために闘牛があるという自信が漂っている。そして、落ち着いている。やはり、去年のサン・イシドロでビクトリーノ・マルティンの牛を相手にラス・ベンタスを熱狂させた事が大きい。あの時のファエナで、闘牛という物が解ったような感じだった。

 初めの牛がアレナに出てくると拍手が沸いた。体型、角の形、素晴らしい。肌の色もビクトリーノらしい芦毛だ。角は尖って上を向いている。走り方も良い。ブルラデロを角で突いた。ベロニカを繋ぐと、「オーレ」がなった。6回カポーテの周りと旋回してメディア・ベロニカを2回。「オーレ」が続き喝采がなった。ピカは右前の横の方に入った。悪いピカだ。キーテは大きなベロニカを4回やってメディア・ベロニカを決めると喝采がなった。モランテのメディア・ベロニカの様に綺麗だった。ピカが左後ろに入った。ルイス・ビルチェスのキーテはあまり良くなかった。

 牛は当然のように、観客へ捧げられた。拍手が沸く。膝を折ったデレチャッソから始めデレチャッソをすると牛が膝を着いた。でも、牛は元気だ。それから大きなパセが3回続くと「オーレ」がこだましてレマテのパセ・デ・ペチョで拍手が沸いた。距離を取り角2本クルサードして手の低い大きなデレチャッソを3回繋ぎパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が続いた。距離と間をとっると、バンドがパソドブレの演奏を始めた。ムレタを左手に持って角2本クルサードして牛を誘った。手の低い大きなナトゥラルが3回繋がると、「オーレ」はよりいっそう闘牛場にこだました。パセ・デ・ペチョが決まると喝采がなった。牛も良い、でも、エル・シドも凄い!

 ゆっくりと距離を取り牛に休息を与えてからナトゥラルを2回繋ぎ、クルサードし直してまた2回手の低い大きなナトゥラルを通すと、「オーレ」はもっと大きくなった。パセ・デ・ペチョ決めて牛の前に立つと観客は立ち上がって喝采を送った。距離を取りクルサードして手の低いナトゥラルを4回パセ・デ・ペチョ。「オーレ」と喝采が続いた。観客は男だけでなく女まで立っている。デレチャッソからナトゥラル、パセ・デ・ペチョで牛の前にピタッと立ち止まって笑顔で観客を見上げる。観客も立ち上がって笑顔で喝采を送った。剣を代え、スエルテ・コントラリアで良いところに剣が決まった。その時、左の尻をコヒーダされるが大丈夫だった。当然の耳2枚。

 凄いもんである。ゆっくりと笑顔で場内1周を始める。観客は立ち上がって拍手を送る。場内1周を終えてアレナ中央へやってきたエル・シドの両手には鳩が握られていた。観客に挨拶をした後、両手に持っていた鳩を放すと2匹の鳩は大空へ飛んでいった。素晴らしい光景だった。まるでレコンキスタの将軍が民衆に自由を与えたようなそんなイメージだった。

 次の牛も良い牛だった。ベロニカの時に風が吹いて危なかった。パセが切れない牛だったので耳が取れるのかと思ったが、上手く捌いた。デレチャッソの膝を折ったパセから始め牛を調教した。良く距離を取り、クルサードして手の低いパセを繋いだ。ナトゥラルではブスカンドしていたがデレチャッソは手の低い大きなパセが繋がった。ファエナ後半はデレチャッソでもブスカンドしていたが、おまけではない、完全に耳1枚以上ある価値のファエナだった。剣はカイーダだったが当然の耳1枚だった。

 ウセダ・レアルは、牛に恵まれなかった。初めの牛で少しだけ見せ場を作ったが、次の牛では距離の取り方を間違えていた。動く牛を誘う悪い見本までやっていた。これはセビージャ仕様?いやいや、2年前のサン・イシドロでも、同じ間違いをしている。良かったのは剣だけ。それにしてもこの剣刺しはいつも凄い!

 ルイス・ビルチェスは、初めの牛で良いファエナをした。セビージャなら耳1枚出ていただろうが、剣を失敗して耳をなくした。

 闘牛が終わり、闘牛士たちの退場が始まる。エル・シドは一緒に出たウセダ・レアルとルイス・ビルチェスを先に退場させようと、カピタリスタが肩車しようとするのを嫌がって2人に挨拶に行った。それでもカピタリスタはエル・シドを追いかけ股ぐらに頭を突っ込もうと争った。男が女を追い回すのを、女の尻を追うと言うが、男が男の股を追いかけ回すというのはまさに男が男に感動して惚れている姿。そしてようやく場内1周が笑顔で始まった。途中で2回くらい肩車する人間が変わった。1度などは、担ぐ人の前に背中を向けて立ち止まってエル・シドの股ぐらを奪っていって失笑されていた。

 クーロ・ロメロがアレナから去ってセビージャの闘牛士は、モランテ・デ・ラ・プエブラしかいないような状況だったが、今セビージャを代表する闘牛士は、間違いなくマヌエル・ヘスス“エル・シド”だ。今度の15日もプエルタ・デル・プリンシペすることになったら大変な事になる。過去に3回連続でプエルタ・デル・プリンシペした闘牛士はいたのだろうか?多分いないだろう。ホセ・トマスですら出来なかったのだから。もし、3回連続になれば、ほぼ4回連続は決定したような物だ。何故なら、9月のフェリア・デ・サン・ミゲルではソリタリオをするのだから。6頭の牛を相手に耳3枚は切って当然の勢いを感じるからだ。

 ビクトリーノ・マルティンの牛は素晴らしかった。半分は良い牛だった。エル・シドが耳2枚切った牛は本当に素晴らしい牛だった。場内1周してもおかしくない牛だった。アレナに出てきて拍手が沸いたのは、2頭目、3頭目、4頭目、5頭目、6頭目だった。


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