基本的な立ち位置が間違っていないのに、牛は動かなかった。

2006年5月6日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場14回目開催の結果。

牧場:アントニオ・サン・ロマン
   全体的に、ソソ(味がない)

闘牛士:ファン・ディエゴ 挨拶、沈黙。
     フェルナンデス・ピネダ 挨拶、沈黙。
     トレス・ヘレス=コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ 挨拶、沈黙。

 追記:5頭目でフェルナンデス・ピネダのピカドール、フランシスコ・ロメロが拍手を受ける。

 晴れのち曇り。初めはTシャツでも暑いが日が暮れると強風が吹き上着がないと寒い。下もズボンだけでは寒い。アントニオ・サン・ロマン牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、トレストレジャ牧場、アメリア・ペレス・タベルネロ牧場。闘牛士、ファン・ディエゴ、フェルナンデス・ピネダ、トレス・ヘレス=コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。プレシデンテ、セサル・ゴメス・ロドリゲス。3割くらいの入り。ソルのアンダナーダ4にて観戦する。開始19時、記録していないが21時20頃終了。

 開始前プログラムを観ていたらトレス・ヘレス顔は40くらいに見える。驚いて誕生日を観たら78年生まれ。アベジャンより1つ上の28歳だった。それでも、去年アルテルナティーバをしたばっかりで、これでちゃんと闘牛出来るのかと思っていたが悪くない。

 今日は、トレス・ヘレスのコンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ。よって1頭目と6頭目の牛を相手にする。初めの牛は明らかに太い。首を上下に振りながら走る牛。カポーテの始めにタブラに向かって振っていたので牛がぶつかりそうになった。こう言うのは明らかに不味い!ピカが左前に入った。牛が転ぶ。カポーテでも牛が膝を着いた。2度目のピカは右後ろに入った。バンデリージャが打ち終わり、コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバの儀式が始まった。ファン・ディエゴからトレス・ヘレスにお祝いの言葉を言い、ファン・ディエゴが持っている剣とムレタをトレス・ヘレスに渡し、トレス・ヘレスが持っているカポーテをファン・ディエゴに渡す。2頭目のバンデリージャを打ち終わったあとに、逆の受け渡しをする儀式がある。

 膝を折ったデレチャッソから様子を見て、長いナトゥラルを2回繋ぐ。クルサードして2回繋いだが牛がパセの時に飛んだ。パセ・デ・ペチョで拍手。離れ場所を移動。こう言うところがまだまだだ。無駄な体力を牛に使わせている。風が強い。ナトゥラルを3回繋ぐと体の近くを牛が通った。離れデレチャッソ1回で手を替えてナトゥラル。角にムレタをはらわれる。牛の動きとムレタの振りが合っていないのだ。こう言うところが経験不足なのだろう。それからデレチャッソを繋いだがパセが短し、ブスカンドした。徹底してナトゥラル繋いだ方が良い牛なのにそれが出来ない。残念だ。

 それが分かってか、またナトゥラル繋ぐと角にムレタをはらわれる。そんなのを繰り返していたらこっちでもブスカンドした。あーあっ。長いナトゥラルが2回繋がった。クルサードしてパセを繋ぐがまた角にムレタをはらわれる。剣を代え、アジュダード・ポル・バッホ、アジュダード・ポル・アルト、トゥリンチェラ。構成は悪くないが1つ1つのパセの完成度が低い。牛をスエルテ・ナトゥラルに置いて2/3剣が入った。

 最後の牛は、観客に捧げられたが、ベロニカの時から、牛の返りが反対だった。牛に対しての立ち位置や牛の誘い方は間違っていないが、牛がソソで動かない。最後の方はメディア・パセになっていた。彼は馬鹿にしたもんではない。二十歳過ぎて闘牛士になっているが、良い物を持っている。が、これから上に上がって行くとなると相当な努力と運が必要だろうが・・・。

 ファン・ディエゴは、カポーテの振り方がノビジェーロの様だ。只振っているだけという印象を持つ。初めの牛は、小柄でカポーテを振るとちゃんと着いて来る牛。ランセをメディア・ベロニカで決めて拍手。ピカが入ると牛が膝を着いた。ピネダのキーテは、チクエリナ2回メディア・ベロニカ。返りが早い。全て左角を通すパセだった。僕には右角の方が良いように見えたので疑問に思った。

 ファエナは、やはり、右角の方が良い牛だった。デレチャッソで長いパセが繋がりビエンという声が出た。それでも、角にムレタをはらわれ落としたり、して良いところまでは行かなかった。剣は、ピンチャッソのあと、良いところに決まって口から血を吐きながら倒れた。挨拶。2頭目の牛は膝をよく着いたので手の位置をメディア・アルトゥーラでパセを繋いでいた。考えている。牛を観ている。が、トレス・ヘレスがやったように、そこでやればいいのに場所を移動して無駄な体力を牛に使わせていた。こう言うところが1流になれないところだと、思った。

 フェルナンデス・ピネダは、2回ポルタガジョーラをやった。初めの牛はベロニカを繋ぐと右角が短かった。牛は観客へ捧げられた。アレナ中央に立った。牛が動き出すと右手に持ったムレタで背中を通し、右に行った牛を左に通し、それからまた背中を通した。全て左角を通すパセだった。彼はちゃんと解っている。右角より、左角の方が良いことを。レマテはパセ・デ・ペチョ。拍手。離れ牛を呼んでナトゥラル。ちゃんと来る。素晴らしい!しかし、ムレタをはらわれる。それがなければ・・・。クルサードして2回繋いだがまたムレタをはらわれる。パセ・デ・ペチョで拍手。惜しいんだよなぁ。離れデレチャッソ。ブスカンド気味。3回繋ぎクルサードして3回パセを通し、クルサードして3回パセを通しトゥリンチェラで拍手。

 彼もまた徹底してナトゥラルを繋ぐと言うことが出来ない。売れない闘牛士の性。観客だって徹底してナトゥラルを繋げば判るのにそれが出来ない。残念だ。中途半端なファエナになっている。剣は、スエルテ・コントラリアでテンディダで良いところに入った。アビソが鳴り牛が座った。挨拶。

 今日闘牛士は牛との立ち位置はおおむね間違っていなかった。ここに立って牛が来なければ仕様がないところに立っていたが牛が動かなかった。それと角の見方も闘牛士たちはちゃんと観れていたようだったが、それを徹底してファエナに表現できなかった。極端に言えば、ホセ・トマスが初めてラス・ベンタス闘牛場でプエルタ・グランデしたときのように、左手1本でパセを繋ぐ様なファエナをしないとなかなか観客はその闘牛士の良さという物を理解してくれないのだ。


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