ポンセ剣だけで耳1枚。アベジャンはやる気だけはあったが・・・。

2005年5月6日バルデモロ(マドリード)(第3級)闘牛場の結果。

 快晴。席が指定されていないのでほぼ開門と同時に入場してソルの座る。帽子を持ってきていないせいもあるが物凄く暑い!もう夏だと言いたくなる暑さだ。小さな闘牛場なのでほぼ3時間近く直射日光に当たって唇は乾きぱなし。水を飲んでも全く解消されない。ロス・グアテレス牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ファン・ペドロ・ドメク牧場)。闘牛士、エンリケ・ポンセ、ミゲル・アベジャン、アンドレス・レブエルタ。何とノー・アイ・ビジェテで満員。ソルのヘネラルで入ったが、コントラ・バレラの席でアナスタシアさんと一緒に写真撮影をしながら観戦する。18時半開始、20時35分頃終了。

 今年始めてみるエンリケ・ポンセ。やっぱり今年も変わらずポンセはポンセだった。ここまでフィグラになって今までの闘牛のやり方を変える必要はない。1頭目だって耳が出てもおかしくなかった。剣は良いところにメディアで決まった。でも、牛が口から血を吐き出してなかなか倒れず、それを見た観客が冷めたのだ。4頭目は、牛が悪いせいもあるがパセするときの手の位置が高い。いつもだけど。でも、パセが長い。それで誤魔化している。役者が違いますポンセは。

 元々パセを繋ぐときは、立ち位置は牛に近い。距離とか間とかはあまり感じない闘牛士。それでも牛が動くから不思議だが凄い。牛にムレタを見させ集中させる事が上手いのだろう。そんなに良いファエナじゃなかったが、剣はちょっと後ろだったがほぼ良いところに入り牛が直ぐ倒れて耳1枚。いつ観ても姿勢が良い。タダ立っているときも、カポーテやムレタを持っているときも。場内1周するときの笑顔もいつもすがすがしい。役者が違いますポンセは。

 ミゲル・アベジャンは、今年ダメかも知れない。えー、そんなことない!これからドンドン良くなるの!アナスタシアさんが言った。でも、セビージャの時も非道かったが、今日の闘牛を観ていると、去年から進歩してないじゃないかと思ってしまう。牛は悪い。でも、動かない牛をどうやって動かしていくかは闘牛士の闘牛へ対する考えが現れてくるのだと思う。レマテの後に、距離取り間を取って牛を休ませるから、ダメな牛でも動くようになる。それが上手くできていなかった。どちらかというと自分がパセを繋ぎたいから繋ぐというようなパセを今までもやっていたが、今日はそこが良くなかった。

 それとパセを繋ぎすぎる。だから、牛が直ぐに動かなくなる。距離の取り方も足りない。牛に対する距離が分かっていない。それは1頭1頭違うのだ。それと間の取り方も同じ。これは、パセをすることだけに神経が行っていて、牛からどういうパセが引き出せるかと言うことが今日は特に欠如していた。ここが問題だ。もう一つダメを押せば、剣刺しの時の立ち位置が牛の角の間に立っていない。牛の右角の正面か外よりに立って剣を構える。

 剣を刺すときの足の運びは、1歩目が左足。2歩目が右足。向かう方向は、牛の正面。そして3歩目に左足を左側に開きながら(体は牛の外に出て行く)左手に持ったムレタを振って右手の剣を刺す。最後の3歩目を踏み出すまで体が牛の角の間に残っているから剣を持つ右手も牛の正面に残り良い場所に刺しに行けるのだ。それが、今日のアベジャンの立ち位置だと牛の右角の正面くらいに立っているからそのまま真っ直ぐ牛に向かうと角に向かうことになる。危ない。だから、自然に向かう方向は初めから牛の外側に向かう。と、なると剣を持つ右手は初めから牛の外側にあるので良い剣が刺さらない。

 事実、2頭目の牛の剣刺しでは、アトラベサーダ(斜めに刺さる)で剣先が牛の左脇腹から出ていた。5頭目の剣刺しでピンチャッソを繰り返していたがその原因もそこにある。バホナッソのアトラベサーダ。今までこんな剣刺しだったけ?もし、今年からこんな状態なら本当ガッカリだ!2頭目の剣刺しが1回で決まっていたら耳が出ていただろうが・・・。

 アンドレス・レブエルタは、去年サン・イシドロで怪我人が出て突然のアルテルナティーバをした。その時は、ちょっと可哀想になるくらい何も出来なかった。あれから1年たって色々勉強してきた成果は見られる。でも、フィグラになるためにはその闘牛士が沢山の特徴を持ち合わせていないと観客へ強烈な印象を残すことが出来ない。フィグラの闘牛士たちはそういう物を多く持っている。彼には真面目さがある。でも、これが彼の個性だと言える物がファエナから見えてこない。ポンセにも、アベジャンにもそういう特徴をいくつも持ち合わせている。

 闘牛学校時代には、学ぶことが出来ない物を、闘牛場では多く学ぶことが出来る。観客の反応もその一つだが、本物の雄牛が、それも1頭1頭違う個性を持った雄牛が闘牛士の最良の教師なのだ。それを学生のようにいちいちメモを取らずに、体に刻んでいった物が自分自身の財産になっていく。時には傷つき、血を流し、重傷を負い、逃げ出したくなったり、泣きそうになったり、真っ青になったりしながら体に刻んだ物が・・・。

 今日の彼は、アベジャンよりもずっと牛に合わせて闘牛を組み立てていた。そういうことを1つ1つ積み重ねて行かないと、アフィショナードは彼の名前を直ぐに忘れてしまうだろう。まだまだ足りない物だらけ。でも、そうやって諦めず積み重ねていくことが、何よりの近道だと思う。僕は彼を見て今日そのことを思った。

 牛は悪かったが6頭ともファエナでバンドがパソドブレの演奏をした。闘牛士たちが努力して牛を動かしていたからだ。ポンセは役者が違い、アベジャンは、彼の最大の特徴のやる気だけはあったけど、内容は非道かった。アンドレス・レブエルタは、真面目だが特徴がない。今その特徴を自分で探しているところだ。でも、そういう物ってなかなか見つからないんだよなぁ。だって、個性って言うのは自然に滲み出てくる物でしょう。


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