土砂降りの雨。強風。戦慄の牛。

2002年6月6日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 土砂降りの雨が降り寒いマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、ホセ・エスコラル牧場。闘牛士、フェルナンデス・メカ、オスカル・イガレス、ホセ・イグナシオ・ラモス。多分大体満員(雨のため席に着かない人がいるので、良く分からない)。テンディド6、バッホにて観る。

 今日はテンディド・セロを観てから18時45分頃出たので、ギリギリに着くか19時を廻る頃になる取ろうと思っていたら、着いたのは19時3分頃。切符を切る人に未だ始まってない、と聞いたら、未だだよ、と言うので、土砂降りの雨が降っているので、てっきり開始時間がずれているのと思ってトイレに行って出てきたらアルグシージョの馬がプエルタ・グランデへ通じる門から出てプエルタ・デ・クアドリージャの方へ向かっていった。気づいたら何と始まっていた。良く始めたもんだ。今日のディレクトール・デ・リディアはフランス人のフェルナンデス・メカ。始めは気でも狂っているのかと思ったが、闘牛を観たら彼の気持ちが伝わってきた。

 そんなわけで、1頭目は闘牛場の中のバルの前にあるTVで観たので良く判らなかった。4頭目のフェルナンデス・メカの牛は、戦慄が走るような牛だった。体型はまさに闘牛用の牛にふさわしいし、風格がある。出てきただけで拍手が沸く。昨日観たカブラの様な牛とは全然違う。良い体だ。ブルラデロ前で止まるとき後ろ脚の甲を着く。ベロニカをすると左角が通る方がパセが短かった。ピカが入っても口を開けない。バンデリージャ打ちの後のカポーテで膝を着く。

 ファエナは、右手の膝を折ったパセから始めた。が、左角が通る方が内側に来る。内側に行き距離を取りデレチャソ。今度もパセが短いと言うより、明らかにブスカンドしている。それでもクルサードしてパセを繋ごうとしている。でも、ブスカンド。非常に危険だ。いつコヒーダされてもおかしくない。ナトゥラルを始める。クルサードしてパセをするとこっちもブスカンド。非常に危険。両方のパセが危ない。それでも、サン・イシドロに出来て良いところを見せたいという気持ちが、クルサードを繰り返させる。でも、何度やってもダメ。体の方に向かってくる。しつこく繰り返すが危ないだけだ。おまけに強風が吹きムレタが旗のように揺れる。非常に危ない状況だ。雨はこの頃はあがっていたが、アレナはびしょ濡れで、水が浮いているところがあり滑りやすい。

 フェルナンデス・メカの心情が充分伝わってきた。折角のサン・イシドロなのにこのコンディション、この牛じゃ良いところが見せれない。残念だったろう、無念だっただろう。でも、僕は忘れない。こんな危ない戦慄する牛で、これだけ、手続きをを踏んで良い闘牛をやろうとしていたことを。来年も出て来いよ。そして、来年はもっと良いところを見せてくれ。今日は、君のやる気と、勇気を讃える。

 それに比べるとあまりにも非道いオスカル・イガレス。2頭とも良い牛だった。2頭目は土砂降りの降る雨の中というコンディションが悪かったが、それでも、何故ちゃんとやらないんだろう。強風が吹いていたからと言うかも知れないが、怖くてクルサードできてないじゃない。この牛が今日1番良い牛だった。雨が降っていなかったら場内1周しているような牛だった。それが残念だ。パセの後の返りが早いからシン・パラールのような牛。だから、余計怖いのだろう。でも、ちゃんとした技術がある闘牛士なら、こういう牛が1番面白いのに。

 5頭目は、もっとやりやすい牛で、良かったのに出来ない。ちゃんとクルサードして誘うと牛は簡単に動くのにクルサードしているのはムレタの方。ビビっている。そっちの方が本当は危ないのに・・・。ガッカリするようなファエナ。牛が持ったない。可哀想だ。良い牛が彼のせいでダメになった。非道すぎるファエナだ。

 ホセ・イグナシオ・ラモスは、アレナに水が浮いている状態にも関わらず、バンデリージャを打った。全部左に行って打っていたが、難しい打ち方をやったり、角間で打って喝采を受けていた。3頭目の牛は返りが早くしかも、頭が高かったのでパセの時にムレタをはらわれていた。6頭目は、耳が切れそうだったのになぁ・・・。でも、彼もクルサード不足で牛をちゃんと動かせなかった。あれでクルサードしたら耳はちゃんと切れただろう。剣は少しずれていたが1発で決めた。デスカベジョ2回。挨拶。

 ホセ・エスコラル牧場の牛は、トリルから出てくると拍手が沸いた。体型の良さ、気品、風格を感じさせる牛だった。危ない牛もいたのは、血統が、ビクトリーノ・マルティンだからだ。プログラムを観てそれが判ったが、なるほどと気づいた。サン・イシドロの最後の3日間は牛の日だ。明日が、アドルフォ・マルティン。明後日が、ビクトリーノ・マルティン。これは、面白そうだ。


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