今年はテンプラールが良いセラフィン。今後が楽しみな価値のある耳1枚。

2005年4月5日セビージャ、レアル・マエストランサ(第1級)闘牛場の結果。

 晴れのち曇り。初めはTシャツでも暑いが日が暮れると肌寒い。コンデ・デ・ラ・コルテ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<1つ前の血統>、タマロン牧場)。闘牛士、ルイス・ミゲル・エンカボ、フェルナンド・ロブレニョ、セラフィン・マリン。7割5分くらいの観客の入り。ソルのバレラにて、下山さんと一緒に観戦する。開始18時30分。終了時間は記録しなかったが開始から2時間以上たっていた。始まる前にパティオ・デ・クアドリージャで闘牛士のアップの写真が撮れた。

 エンカボは、長いこと闘牛場に出場して闘牛士として生きていくことが出来るだろう。上手い。牛を知っている。牛を観ている。初めの牛は出てきたときから前脚が弱く、後ろ脚を走るときに引きずっていた。ベロニカを繋ぐと左角が短いのが判った。ピカドールは、牛に左側にピカを刺していた。下山さんが言うには、それで良いのだという。これは、反応の良い右角を生かすと言うことなのか?バンデリージャは自分で打った。1回目は左に走って角の間で打った。2回目は右に走ってトロ・パサードだった。3回目はタブラから左に走っていきポル・デントロで打って拍手が沸いた。

 ファエナは、デレチャッソで牛が膝をついた。非常にやりにくい牛だった。ナトゥラルでは、当然のようにブスカンドしたので直ぐにデレチャッソに変えたが、牛の動きが止まった。次の牛はこの日1番悪い牛だった。これじゃどうしようもないが、彼は自分がプロフェッショナルであることをトレアールすることによって証明して見せた。恥じることにない仕事だった。

 フェルナンド・ロブレニョは、初めの牛で良いファエナをした。ポルタガジョーラからラルガ・カンビアールをすると闘牛場に「オーレ」鳴り拍手が沸いた。パセをすると飛ぶ牛で、下山さん曰く、前脚の弱い牛はああやって誤魔化すのだという。ファエナは、デレチャッソから始めた。この牛はカポーテの時は気付かなかったがムレタになったらデレチャッソの時に体に向かって動き出してそれから動くムレタに反応する。いつブスカンドするか判らない危ない牛だった。それでもデレチャッソを繋ぐと、「オーレ」が続いた。パセ・デ・ペチョで一連のパセを切ってから、牛との距離を充分取ってからまたパセを繋いだ。この距離の取り方がフェルナンドは良い。

 ナトゥラルはパセが短い。左角の反応が悪いのだ。それでもファエナをまとめたので耳に近かったが剣がカイーダでしかもデスカベジョが4回じゃ何もない。次の牛は、左角が短い牛だった。ファエナの始めにデレチャッソから右手でパセ・デ・ペチョをやるとコヒーダされた。これは完全にフェルナンドの不注意だ。バンデリジェーロがカポーテを振っているのを観ていないからそれに気付かないのだ。危なく大怪我をするところだった。フェルナンドは、バンデリージャの時にちゃんと牛を見ていないところがダメだ。元々怪我が多いのだからそういうところを修正しないとダメだ。

 セラフィン・マリンは、素晴らしかった。初めの牛は出てきたときから前脚の悪い牛だったが、ブルラデロを突かない、この日1番良い牛だった。タブラ付近からベロニカを始めるとゆっくりと旋回してパセを繋いだ。セラフィンはいつの間にかアレナの中央までベロニカを繋いだ。そのベロニカは非常にゆっくりとしたテンプラールなパセだったので闘牛場は、大きな「オーレ」の声が続いた。メディア・ベロニカをアレナ中央で決めると歓声と喝采がなった。セラフィンがこんなテンプラールなパセを見せるなんて驚きだった。まるでクーロ・ロメロが良いベロニカを繋いだときのようにセビージャのレアル・マエストランサ闘牛場が沸いたのだ。エンカボはキーテをした。ベロニカを繋ぎメディア・ベロニカ。拍手がなる。セラフィンもキーテ。テンプラールのチクエリナを繋ぐと「オーレ」がなった。それからもっとテンプラールなベロニカを繋ぎメディア・ベロニカを決めると観客は立ち上がって喝采を送った。素晴らしいランセだった。ガオネラのないランセでもセラフィンは優れたパセが出来ることを証明して見せた。

 牛は観客へ捧げられた。この牛は、右角が特に優れていると下山さんが言っていた。確かにその通りだった。ファエナは、牛を遠くから呼んで、エスタトゥアリオから始めた。デレチャッソの手の低い長いゆっくりしたパセが繋がると、「オーレ」の声は大きく闘牛場にこだました。パセ・デ・ペチョをすると喝采がなった。そしてバンドがパソドブレの演奏を始めた。牛から充分距離を取ってナトゥラルで牛を呼ぶ。勿論クルサードをしている。手の低いゆっくりとしたナトゥラルだった。「オーレ」が続いた。場所を移動してデレチャッソを繋いでパセ・デ・ペチョ。牛はセラフィンの物だった。ムレタ捌きで観客を魅了した。最後の方は牛の動きが止まったので良いファエナが続かなかった。剣を変えて直ぐに牛を置いた。スエルテ・コントラリアでカイーダだったが牛が倒れて耳1枚。後半、牛が止まらなければ耳2枚出ていてもおかしくなかっただろう。

 最後の牛でも緊張感のある良いファエナをした。パセが続かない牛を、クルサードを繰り返しながら丁寧に牛からパセを引き出していた。こういう仕事が出来るのは非常に重要なことだ。観客はセラフィンのファエナを注意深く見つめ決して集中力が途切れることなく見つめていた。剣は初めの牛よりカイーダだったが牛は直ぐに倒れた。喝采がなったが耳は出なかった。喝采に応えて挨拶をした。セラフィンは今日の闘牛で、彼が決してコリーダ・ドゥーラの闘牛士ではないことを証明した。突進する牛を相手に素晴らしい闘牛をすることが出来る本当のフィグラへの道を歩み始めたと言って過言じゃないだろう。これからはフィグラと一緒にカルテルが組まれるようになっていかなければならない。

 今日の闘牛は良かった。耳はセラフィンが耳1枚取っただけだったが、3人とも良い仕事をした。観客は満足しただろう。セラフィンは闘牛があまり盛んでないバルセロナ、カタランの闘牛士だが物凄い存在感を示した。去年も今年もセビージャで価値のあるファエナをした。


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