最初が雨。最後が座布団の雨。

2003年6月4日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 雨が降りやがてやんだ。風が吹くラス・ベンタス闘牛場。パルティド・デ・レシナ牧場。第1ソブレロ、第2ソブレロ、カスティブランコ牧場。闘牛士、ホセリート、ビクトル・プエルト、セルヒオ・アギラールのトマール・デ・アルテルナティーバ。ノー・アイ・ビジェテ。テンディド6でYさん、Tさんと観戦す。

 今日はセルヒオ・アギラールがトマール・デ・アルテルナティーバの日。雨の中で闘牛が始まった。風も吹いている。元気良く出てきた牛はアレナを2,3周する。ベロニカをゆっくり繋ぎメディア・ベロニカ。牛が膝を着く。実は今日はこんな牛ばかりだった。キーテは、メディア・ファロールを繋いだ。牛が途中で膝を着いてキーテの決めが出来なかった。ムレタでもクルサードしてパセを繋いでいたが牛が悪い。良いファエナにならない。

 最後の牛は、ベロニカで脚がおかしくなってフラフラ状態。牛交換。代わった牛もまたダメ。ムレタを何度振って誘っても動かない。セルヒオは2回ほど、「ちゃんとやっているのに全然動かない」という風に牛に背中を向けて、自分に怒っているような、腹立たしさを表した。それくらいダメな牛だった。どうしようもない。可哀想だった。

 ホセリートは、ちょんと闘牛をやろうとしていたが、如何せん牛が悪すぎる。2頭目はそれでも悪い牛で良く動かした方だ。ちゃんとクルサードして牛を誘っているのになかなか牛が動かない。パセ・デ・ペチョをすれば返りが早く危ない。動いて膝を着いたりする牛の方が闘牛士がちゃんとやっているように見える。でも、動かないし膝も着かない。動かないから当然だが。ちゃんと1回1回クルサードしてパセを繋いで何とか動かしていたが、牛という素材が悪いから如何ともしがたい。

 4頭目の牛はダメな牛だった。さっさと交換すれば良いのにプレシデンテはなかなか代えない。ピカの後、ホセリートは悪い牛でキーテをする。チクエリナを1回やったら牛が倒れようやく交換になった。これはワザと牛が悪いというのを見せるためのキーテだったのだろう。代わった牛もダメ牛。右角がブスカンドする。直ぐに気づいてナトゥラルをするが思うように動かない。クルサールしてパセをすると直ぐに膝を着く。止まって動かない。あの牛でどうやってファエナをしろというのだろう。出来ない。さっさと殺した。観客は牛が悪いのをプレシデンテやガナデロに向けず、闘牛士に悪態をつく。僕はこれは筋違いだと思う。物凄い罵声と口笛が鳴った。

 ビクトル・プエルトの牛もダメだった。始めの牛が左角がブスカンドする牛。右手だってパセしようとしても動かないんだから。5頭目もダメ。パセを繋げば膝ばかり着く。いくらアレナ中央で牛を誘って背中を通すパセから始めてやる気を見せても牛がどうしようもない。

 最後の牛が終わる頃、3ヶ所くらいで観客が殴り合いの喧嘩を始めた。ざわざわする闘牛場。みんな怒っているのだ。そういうフラストレーションを隣の人にぶつけてもしようがないじゃないか。怒るなら、牛を代えないプレシデンテ、悪い牛ばかり出す興行主、こんな悪い牛を出す牧場に文句を言うべきなのだ。闘牛士が退場の時、座布団の雨が降った。口笛、ブーイングがなる。でも、僕はホセリートには拍手を送っていた。だって悪くないもの。悪いのはプレシデンテだし、牧場だし、興行主なのだから。

 でも、腹が立つよなぁこんな牛ばかりで。


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