ラス・ベンタスの観客の気持ちを掴んだアントニオ・フェレーラ、場内1周と耳を逃す。

2002年6月4日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 雲空で強風が吹き寒いマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、1,3,4,6頭目、マノロ・ゴンサレス牧場。2,5頭目、ゴンサレス・サンチェス・ダルプ牧場。闘牛士、マヌエル・カバジェーロ、ホセリートに代わりアントニオ・フェレーラ、ミゲル・アベジャン。ほぼ満員。テンディド6、バッホにてYさんと一緒に観る。

 マヌエル・カバジェーロの時だけ何故か強風が吹いた。それの良いときになると強風でファエナが盛り上がらなかった。1頭目の牛はパセの時に飛ぶ。それを、手の低いナトゥラルを繋ぐ。信じられない。良いパセが続いた。パセ・デ・ペチョをして、また、ナトゥラルをしようと牛を誘ったとき、強風が吹いた。緊張感は消え去り取れと共に、ファエナもダメになった。盛り上がりかけたときだけに残念だ。4頭目の時も強風が吹き、牛から良いパセを引き出せずに終わった。

 アントニオ・フェレーラは、ホセリートに代わって出場。17日のプエルタ・グランデしたときの余韻をそのまま引きずったような闘牛をし、観客を楽しませた。2頭目の牛は、マンソだった。得意のバンデリージャは、2回が角先で打って、1回は角の間で打った。3回目のバンデリージャを打ち終わると牛の前をフェイントを入れながら走り回り総立ちの観客から喝采を受ける。

 ファエナは、アレナ中央で牛と距離を取りナトゥラルで誘い、牛が動き出す。ナトゥラルが繋がると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョをすると喝采が鳴る。ナトゥラルを繋ぐ。パセ・デ・ペチョ前の長いパセの時、牛が体スレスレを通り危ない。悲鳴が上がる。デレチャソを繋ぐが、牛が首を振り上げる。角が顔に当たりそうになる。危ない牛。また、ナトゥラルに変える。「オーレ」はなるが、少し足りない。良いパセが繋がらないからだ。トゥリンチェラをし、剣を代える。スエルテ・ナトゥラルでちょっと前、横に少しずれて決まる。観客は耳を要求したが耳には少し足りなかった。場内1周。笑顔はなかったが良くやった。

 5頭目のファエナの方が良かった。カポーテでは良いパセが出来なかった。今度もバンデリージャは自分で打った。1回目は、左に行って角先で打った。2回目も左へ行って牛とタブラの間が1m位の所で打って喝采を浴びる。非常に危険なやり方だ。トロ・パサードだったがこれは許せる。3回目は、牛を誘い、右にフェイント入れキエブロ。場内総立ちになり喝采を送る。やっぱり、バンデリージャで盛り上げる。

 ファエナは、右手で膝を折ったパセから始め、右手から左手にムレタを替えて長いパセが繋がると、「オーレ」がなった。アレナの内側に行き、デレチャソを繋ぐ。牛が首を振るのでムレタがはらわれる。パセ・デ・ペチョをして牛から距離を取り、デレチャソ。手の低いパセが繋がると、「オーレ」が続いた。それでも時々、角にムレタをはらわれていた。気が付くと右目の辺りに血が付いていた。パセ・デ・ペチョの時、脇が開くのと、角の間に体が入っていなかった。ナトゥラルでも手の低いパセを繋いだが、こっちでも、ムレタをはらわれていた。ナトゥラルは体の近くを牛を通すので悲鳴が上がっていた。17日に比べるとちょっとパセが雑。それでも、ムレタを体の後ろに隠してクルサードしてのは立派。2頭目より良いファエナだった。が、剣がピンチャソ2回。それから良いところに決まったが遅かった。これで耳がなくなった。残念。

 ミゲル・アベジャンが相手にした牛は2頭ともダメだった。3頭目は、右角が体の方を通るときに真っ直ぐ来る牛。だから、クルサードしてパセを通そうとすると右足、体の右側が角に刺されそうになる。おそらく、右目が見えないのだろう。ナトゥラルでは、クルサードして繋ぐが、段々クルサードが甘くなった。怖いのだ。パセをしつこく繋いだが、クルサード不足。良いパセは出来ない。それと、ムレタで誘う前に牛が動き出すのでファエナがやりにくかった。これがクルサード不足につながったのだろう。

 6頭目の牛は、カポーテで左角が体の方を通るときに内側に来ていた。ベロニカで前足を痛めた。ピカは少し後ろに入った。キーテをやろうとしたが牛を誘っても動かなかった。ちゃんとクルサードしているのに。ファエナは、右手の膝を折ったパセから始め内側へ。クルサードしてデレチャソでリガールすると、「オーレ」がなった。トゥリンチェラ。牛から距離を取り、クルサードしてリガールするがムレタを角にはらわれる。盛り上がりかけるとこんな事になる。段々、クルサードも弱くなる。ナトゥラルもするが良いパセにならない。クルサードしても牛は動かない。

 今日闘牛場を沸かせたのはアントニオ・フェレーラだった。バンデリージャだけではない。そして、この前の闘牛がフロックでなかったことを証明した。乗っているときの闘牛士は、良いファエナを続けることが出来る。帰りに、Mさん夫婦とちょっと話した。「フェレーラは、バンデリージャだけじゃん。全然クルサードしてないよ。何で耳切ったの?パセの最後手が高くなっていたけど、あれじゃ大怪我するよ。あれじゃ、飽きられる。6頭目の牛は良かったじゃない。クルサードすれば動かせたよ」と言っていた。ちょっとムッとした。部分的に合っていると事はあるが全体的には違うと思った。僕たち闘牛ファンは予言者になる必要はない。第一、パセを通すとき、右側から通すときと、左側から通し時では牛の特性が違う場合がある。そこの部分を見極めていないような気がしたのだ。観ているだけだからそんなことは関係ないと言えば関係ないが、そこを観ていかないと、闘牛士の気持ちや、牛の動きを観ていないことになると思う。

 「6頭目の牛は良かったじゃない」。僕はその感覚は個人的なものなのであまり批判する気はないが、唯単に感覚だけじゃ?マークが付いてしまう。あの牛は、カポーテの時にアベジャンがクルサードを繰り返し誘っても全然動かなかったからだ。ムレタの時も同じ。デレチャソでリガールできたからそう思ったのかも知れないが、もともと動かない牛だった。そういうことをしっかり見て、言って欲しいと思った。後から、話そうと思うが、Mさんも頑固だし、こっちも頑固。物別れれになるかも知れないし、どちらかが、なるほどと言うことになるかも知れない。まっ、それは良いとして・・・。

 アントニオ・フェレーラはラス・ベンタス闘牛場の観客の気持ちを完全に掴んでしまった。今年これから楽しみだし、来年も楽しみだなぁ。


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