99年6月3日、ラスベンタス(マドリード)の結果

闘牛史上2人目のフランス人闘牛士のプエルタ・グランデ!
サン・イシドロ祭、最優秀見習い闘牛士ファン・バウティスタ!

por 斎藤祐司

 

 若牛、プエルト・デ・サン・ロレンソ。見習い闘牛士、グスタボ・マルティン、サムエル・ロペス、ファン・バウティスタ。

 快晴の闘牛場。風は昨日より弱い。

 グスタボ・マルティンは、一体何しに出てきたんだろう。パセをしても何も感じない。風が強く吹いているときでもあったが、ちゃんとしたパセを出来なかった。右手も左手もクルサード不足。カポーテ捌きも書くようなことはない。年も年だし考えた方が良いようだ。今日1番非道かった。

 サムエル・ロペスは、危ない牛で2回コヒーダされた。カポーテ捌きはまともだった。ムレタは右手の低いパセを決めていた。良いものを持っている。が、彼の方がもっと年。もう28歳だ。どうなるのだろう。

 ファン・バウティスタは、勿論今日の主役だ。風が吹いても落ち着いている。クラシックなスタイルだがカポーテ捌きも上手いしバリエーションも沢山ある。チクエリナの後メディア・ファロールを、2回続けたり見せる。メディア・ベロニカも良い。牛も解っている。技術も才能も勇気もある。

 ブリンディースは、アポデラードのルック・ジャラベールに捧げられた。彼は父親である。ムレタ捌きは、今年見たノビジェーロの中ではピカ一だ。手の低い初めの牛ではナトゥラルを試みたが牛が体の方に向かって来るので直ぐに右手に切り替えてパセを繋いだ。クルサードは勿論している。長いパセをする。パセの形が綺麗だし、体の線も綺麗だ。剣も上手い。耳1枚。

 最後の牛は、とても耳が切れそうな牛じゃなかった。と、言うよりパセを繋げそうな牛じゃなかった。カポーテの時は良いパセが出来なかった。中央に牛を連れていってファエナを始めた。距離を取ってから牛を誘うと動きそうになった。ムレタを体の前に出して誘うと牛は動き出した。牛との距離はやく5mだった。そうやって誘って行くと牛はムレタに向かっていった。

 パセをするごとに牛との誘う距離は縮まって行ったが手の低いパセを繋いで「オーレ」と喝采を浴びた。牛が動かなくなると、牛の鼻面の前に立ってムレタを体の後ろに隠すしてから前に出してパセしていた。牛が体に来ようとするとまた体の後ろに隠して牛を止め、ムレタを体の前後に振って牛の動きを確認してそれから牛を誘ってパセを続けた。これを左右の手でやった。大した奴だ。ベンタスの観客は彼の物凄いクルサードにエモーション感じたようだ。

 クルサードを続けると客席から拍手が自然に起こった。剣はバホナソで入ったのを手を離さず抜いて、2回目の剣刺しは完璧な剣刺しで牛を倒してしまった。耳1枚取って、今年のノビジェーロの始めてのプエルタ・グランデを決めた。そして、フランス人闘牛士では2人目のラス・ベンタス闘牛場のプエルタ・グランデを開けてしまった。

 始めに開けたのは、フランス闘牛史上最高の闘牛士、“ニメーニョU”。そして、フランス人の期待を集めていた17歳のファン・バウティスタが2人目のプエルタ・グランデを開けた闘牛士になった。“ニメーニョU”が死んでからスペインで通用する闘牛士が出てきていなかったが、ついに出てきた。年も若く、才能も、技術も、表現力も、全てを持っている様に見えた。彼の将来が非常に楽しみだ。

 今のノビジェーロの中では、スペイン人を入れても彼が1番かも知れない。フランスの闘牛界は大騒ぎだろう。プエルタ・グランデの時、ファンはニコニコしていたが、帰ってきてビデオを観たら、2枚目の耳が決まった後のインタビューでは声を詰まらせて泣き声になっていた。彼の父親も耳が出るか出ないか待っているときに、またタバコに火を点けて自分の感情を何とか保とうとしていた。

 おめでとう、ファン・バウティスタ!おめでとう、フランス闘牛界。新しいスターの誕生を目撃できたことを幸せに思う。


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