ドラマに泣いた!天国の父に捧げたファエナ。エル・カリファ、Abierto la Puerta Grande !

2003年6月3日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 ラス・ベンタス闘牛場。1頭目、4頭目、5頭目、6頭目、ドロレス・アギレ牧場。2頭目、3頭目、カルロス・ヌニェス牧場。第1ソブレロ、クリアド・オルガド牧場。第2ソブレロ、ホセ・バスケス牧場。闘牛士、ペピン・リリア、ファン・ホセ・パディージャ、エル・カリファ。ほぼ満員。テンディド6でYさん、Tさんと観戦す。

 入場行進が終わり1頭目の牛が出てくる前に拍手が起こった。6月1日、日曜日にホセ・パチェコ“エル・カリファ”の父親が亡くなった事に対して弔意と励ましの拍手が起こったのだった。

 始めの2人は短めに書く。今日はエル・カリファのことを書かなかったら何にもならないからだ。ペピン・リリアは、危ない牛でパセを繋いでいた。でも、昔に比べると情熱が少なくなって来ているのだろうか。

 ファン・ホセ・パディージャは、ダメだった。バンデリージャ打ち6回とも左に行って打っていた。どう言うことだ。

 エル・カリファは、闘牛開始前に観客から拍手を貰い、父親の死に何とかしなきゃとやる気になっていたのだろう。しかし、牛が悪かった。3頭目。膝ばかり着いていて牛交換。ソブレロはホセ・バスケス牧場の牛。牛が出てきてアレナ中央で止まる。バンデリジェーロがカポーテ振って誘うと逃げ出すマンソの牛。カリファが出ていってカポーテを振っても同じ。何度も何度も逃げ回る。ようやくカポーテに向かってきた。ベロニカを繋ぐと、「オーレ」が鳴った。メディア・ベロニカも綺麗だった。ピカが入り牛の動きが少し良くなった。でも、バンデリージャの時にカポーテを振っているのを観たら、左角がブスカンドする牛だった。プレシデンテに挨拶をしてアレナ中央へ歩いていきモンテラを天に向けてブリンディースした。天国にいる父親に牛を捧げた。込み上げてくるものがある。

 テンディド10辺りの2本ある白線の所で右手の膝を折ったパセから始めた。右に左にパセを繋ぐと、「オーレ」が鳴った。パセ・デ・ペチョと、思ったら膝を折ったままパセを通した。一瞬刺されたかと思った。近くにいた女の人の悲鳴が聞こえた。喝采が鳴り牛をアレナ中央へ持って行った。左手にムレタを持ってナトゥラル。こっちの角はブスカンドするから危ない。案の定、牛はブスカンドしてきた。ムレタを右手に持ち替えるのかと思ったらまたナトゥラルを続けた。男だぜ!こういう牛なのにクルサードして手の低いナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。距離を取ってデレチャソ。牛が悪からクルサードしてパセを繋ぐと「オーレ」が鳴る。良くこんな牛でパセが繋げるもんだ。パセ・デ・ペチョ。喝采が鳴る。デレチャソを繋ぐ。牛が体の近くを通る。牛の体に服がくっついて牛の返り血が服にべっとり付きだした。怯まずにパセを繋いでパセ・デ・ペチョ。喝采が鳴る。再びブスカンドするナトゥラルを手を低くして繋ぎパセ・デ・ペチョ。喝采が鳴る。しつこいくらいにパセを繋ぐ。デレチャソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。

 ようやく剣を代えてスエルテ・コントラリアで牛を置き、牛が動いたがそのまま刺しに行って良いところに決まった。剣刺しの時にカリファはコヒーダされる。痛そうに立っていた。腹の辺りだと思ったが・・・。牛が座り、プンティージャで立ち、また座りプンティージャ2回。闘牛場に白いハンカチが振れる。耳を要求する口笛が鳴る。しかし、耳は出なかった。喝采の答えてカリファが場内1周をする。顔が青ざめているようだ。足はビッコを引いている。良く見ると右足の太股の部分の服が切れている。服が血だらけだから牛の血なのか角傷の血なのか判別できない。場内1周しても喝采が止まずまた場内1周。合計場内2周。これは観客が耳1枚のファエナだったと完全に認めた証拠だ。下山さんから後でTELで聞いたことでは、この時、カジェホンにいたエウヘニオ・デ・モラにインタビューして、エウヘニオは場内2周と耳1枚じゃ全然意味が違う。何故、プレシデンテは耳を出さなかったのかと、怒っていたそうだ。はっきり言って俺も怒っていた。でも、これが6頭目のプエルタ・グランデに繋がったんだから不思議なものだ。

 6頭目が始まる前にエンフェルメリアの門からカリファが登場すると拍手が起こった。牛が登場し走っている歩様を観ると前脚がおかしい。ピカは反対側の方に牛が行き左前に入った。牛が離れると膝を着いた。また、悪い牛。2度目のピカはいつも刺すテンディド8で刺し左後ろに入った。ファエナは、アレナ中央で右手に持ってムレタで牛を誘い背中を通すパセから始めた。逃げるように離れていった牛を遠くから誘い牛を呼んでパセを繋いだ。観客はカリファの味方だった。右角がブスカンドする。危ないが逃げ腰にならない。角は左足の直ぐ近くを通っている。角は左足の近くになると急に足に向かって角度を変えていたが、カリファはビビっていない。天国のお父さんも後押ししている。命を懸けてパセを繋ぐ。「オーレ」が鳴る。

 ナトゥラルと繋ぐ。「オーレ」が続く。両足を揃えて立ってパセをする。喝采が鳴る。もうモソ・デ・エスパーダが剣を代えようと声を掛けるがまた牛に向かっていった。パセの後牛が何度も逃げていった。やりにくい牛だった。逃げると追いかけてムレタを振り、逃げようとすると剣で尻を刺しこっちを向かせた。手の低いナトゥラルを繋ぐと「オーレ」が鳴る。もうパセを繋ぐと「オーレ」を叫んでいた。パセ・デ・ペチョの代わりに両足を揃えて立ってのパセ。「オーレ」が鳴り喝采が鳴る。カリファは興奮している。モソ・デ・エスパーダが声を掛けてもまた牛に向かっていった。デレチャソをブスカンドする牛を相手に繋いだ一連のパセを切るとバンデリジェーロが剣を持って代えに行った。剣を代え、ナトゥラルを繋ぎスエルテ・コントラリアで牛を置き剣を1発で決めた。もう闘牛場に白いハンカチが振られた。今度は観客が始めっから白いハンカチを振りだした。

 剣はカイーダだった。牛が倒れ、退場用の馬(ロバ)が3頭ひかれてきた。アレナ中央にその3頭が来たときにプレシデンテは白いハンカチを出した。早いなぁと思った。それでも観客はハンカチを振るって口笛を吹き続けた。牛のそばに3頭が来たとき、2回目の白いハンカチをプレシデンテが出した。耳2枚。プエルタ・グランデ。2000年の時は最後の牛でコヒーダされて耳2枚取ってもプエルタ・グランデは出来なかった。僕は直ぐに肩車を観ずにプエルタ・グランデに向かった。下山さんの話だとカリファは泣いていたそうだ。そして、2000年の時も泣いていたモソ・デ・エスパーダも抱き合って泣いていたそうだ。非常に価値のあるプエルタ・グランデだった。

 確かに6頭目で耳2枚?と言う疑問を当然出てくる。でも、3頭目の牛の時にプレシデンテが出し渋った反省で耳2枚出たのだろう。あの1番厳しい判定をするプレシデンテ、ファン・ラマルカ・ロペスが出したのだから・・・。

 プエルタ・グランデには6頭目に決まったからか、それほどフィグラじゃなかったからか思ったほど人がいなかったが、プエルタ・グランデが開いてカリファが出てくる頃にはやはり大勢の人垣をかきわけて肩車に乗ったカリファが出てきた。顔がくしゃくしゃだった。車で待っていたカリファの関係者はカリファが来るとみんな泣き出していた。観ていた俺もジーンときた。良いもの見せて貰いました。終わって番長、Wさん、Mさん夫婦、Yさん、Tさんと話した。あれは2つ合わせて1枚と言う人もいれば、今日は3枚取れていた、と言う人もいた。それからコロキオにみんなで行って話した。その中で、逃げる牛はタブラに向けてパセをすれば良かったという意見は卓見だった。

 ともあれ、おめでとう、エル・カリファ。俺は感動で3頭目の時に泣いてしまった。命賭けりゃあれだけのことが出来るじゃないか。天国のお父さんがこれからも君のことを見守っていてくれるさ。2000年の時のファエナは良い牛で最高のファエナだった。今日は悪い牛であれほど良いファエナではなかった。が、かえって牛が悪かったから耳2枚取れた様な気がする。やー、酒が美味ーや、今日は!


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