風が吹いて寒いラス・ベンタス闘牛場は、ちょっとだけ熱くなった。

2005年4月3日ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 晴れのち曇り。風が吹き寒い。アントニオ・サン・ロマン牧場の若牛。ソブレロ、エル・レタマル牧場の牛。出場見習い闘牛士、カニト、ダビ・ガラン、ホセ・ルイス・トレス。3人ともラス・ベンタス初登場。1/4くらいの観客の入り。テンディド7(ソル)のアンダナーダにて、三木田さんと一緒に観戦する。開始18時。20時25分頃終了。

 入場行進の後、先日死んだローマ法王パブロ2世への1分間の黙祷が捧げられた。

 カニトは背が低い。始めにポルタガジョーラをやろうとしたが、トリル(牛門)が開いたのでアレナ中央で牛を待ちかまえてラルガ・カンビアールから始めた。しかし、ベロニカが良くない。バンデリージャも打ってやる気が見える。こう言うところは買う。ファエナは、牛を遠目から呼んで始めたが、味のないパセ。ナトゥラルをするとパセが短い。直ぐに右手のパセに変えた。牛の見方も判っている。が、パセに味がない。パセをやっていくと段々牛に近づいて行き、結局牛が動かなくなっていく。パセ・デ・ペチョの後の見栄だけは一人前だ。

 この日4頭目の牛は、この日1番良い牛だった。だから耳が出てもおかしくなかったが・・・。ポルタガジョーラからラルガ・カンビアールを2回繋ぎベロニカ。もう少しちゃんとしたベロニカが出来ないのだろうか?ピカは後ろに刺さる悪いピカで、馬から離れるとパセで2回膝を着いた。またバンデリージャを打ったが、最後はキエブロだった。拍手を受ける。ファエナは、デレチャッソをアレナの内側で始める。パセが繋がって、「オーレ」がなる。パセ・デ・ペチョで拍手。その後、牛を移動させる。膝をつく牛に負担をかける行為だ。こういう事をやっていると牛が動かなくなる。案の定牛の動きが止まってきた。ナトゥラルをすると牛の動きは鈍くなりパセ・デ・ペチョを2回するが脇が開いたパセになっている。牛の前に立って見栄を切ると拍手がなる。動きが止まった牛に、モリネーテからデレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。もうつまらないパセの連続だった。拍手がなり剣を変えた。アジュダード・ポル・アルトからトゥリンチェラ。これはまあまあだった。スエルテ・コントラリアでカイーダ。耳要求があったが、剣刺しが悪い事と、それ以前の問題としてファエナが耳の値がなかっ た。牛が良くても扱い方が判っていないのだ。

 ダビ・ガランは、3人の中で1番ダメだった。牛を誘うときの距離が全く判っていない。牛が動かなくなると、ドンドン牛に近くなっていく。そうすればそうするほど、牛は益々牛は動かなくなる。そういうことが一切判っていない。それじゃダメじゃん!

 ホセ・ルイス・トレスは、3人の中では、1番良かった。ガオネラはまあまあだったが、カポーテの捌き方がぎこちない。彼は距離はある程度判っているし、落ち着きもある。パセの時の姿勢も良いが、重要な物が欠けているような気がする。それが何かを自分で見つけられなければサン・イシドロに出るような闘牛士にはなれないだろう。

 昔の見習い闘牛士は、とんでもなく非道いのがいたが、この日観た3人はそれなりにまともだった。が、地方巡業をする見習い闘牛士としてはこれで良いだろうが、第1級闘牛場を渡り歩くにはかなり勉強不足だ。牛の扱い方は勿論、カポーテやムレタの振り方自体の練習が不足しているような気がする。そういう基本的な練習をおろそかにして、派手なパセをしようとしてもそれは闘牛術という物を取り違えていると言われても仕方がないだろう。ベロニカがちゃんと出来ない奴がチクエリナやラルガ・カンビアール、ガオネラをやっても意味がない。それはクルサードしないで牛を誘っているのと同じだ。クルサードしても、ムレタをちゃんと振れなかったら、牛は思うように動いてくれないし、観客が観て感動など出来るわけがない。ラス・ベンタスは厳しい!耳だと思ったでしょう、カニト君。でもあれは完全に耳ではなかった。そっ田舎なら耳2枚出てたよね。母親のように温かい田舎闘牛と、世間よりも厳しいラス・ベンタスは全く違うのだ。


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