エル・フリ、耳1枚。ハビエル・カスターニョの静かで力強い闘牛。

2001年5月31日、マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。(第1級闘牛場) 

快晴のラス・ベンタス闘牛場。ノー・アイ・ビジェテ。

 コリーダ・デ・プレンサ。牧場のコンクール。1頭目、アラウス・デ・ロブレス、2頭目、アルクルセン、3頭目、サルドゥエンド、4頭目、カンポス・ペニャ、5頭目、ビクトリーノ・マルティン、6頭目、ハンディージャ。闘牛士、アルミジータ(メキシコ人)、エル・フリ、ハビエル・カスターニョ。

 アルミジータには、期待はしていなかった。どうせこんなもんだろうと思って見ていた。だから1頭目で、腰が揺れ足が動くパセを繋いでも何とも思わなかった。2回だけきっちりとしたパセをやったときの美しさの方がビックリした。折角牛をファン・カルロス国王に捧げたのにこれだもの。角が広く上を向いていた。怖いんだよねきっと。剣は、ピンチャソ3回。刺せずにデスカベジョ5回。口笛が鳴る。牛が退場して静だったのは観客が呆れたからだろう。

 2頭目はマンソ。ベロニカをまともに出来ない。ピカは遠目から良いところに3回入った。ピカドール、アンデルソン・ムリージョの上手さが光った。遠くから呼んでしかも良いところに刺す。腕の良い証拠。元セサル・リンコンのピカドールだ。セサルと同じコロンビア人。セサルが引退して仕事がないのかと思ったらスペインでも仕事にあり就ける。今日のメホール・ピカドールは文句なしにアンデルソン・ムリージョのもの。

 牛は良くなかったが、観客に牛を捧げた。やる気だけはあった。初めは右手で凄くクルサードして誘っていた。良いパセも5,6回あった。ナトゥラルでも良いパセを見せたが、牛が動かない。怖がって腰を引く。それで終わり。最後はクルサードもしなくなった。剣は、ピンチャソ5回の後、凄いバホナッソ。口笛が鳴る。ともあれアルミジータ最後のラス・ベンタスは終わった。退場の時、座布団が投げられた。

 今日のエル・フリは、良かった。1頭目はマンソの牛だったが、キーテは遠くから呼んでメディア・ファロールを後ろ向きで決めてガオネラを繋いだ。角が体の近くを通っていた。最後はラルガで締めた。「オーレ」がなった。良いキーテだった。バンデリージャを自分で打った。3回とも左回りで回り、トロ・パサードが1回。角の間で打てなかったが、喝采がなる。女子供のフリスタのせいだ。何処が良いと、聞いても、グアポ、と言う答えしか返ってのないのだろうから聞くのも馬鹿馬鹿しい。牛は、ファン・カルロス国王に捧げられた。

 アジュダード・ポル・アルトを繋ぎ牛は飛ぶようにパセを繰り返し、珍しく綺麗なトゥリンチェラが決まると喝采がなった。牛を中央へ持っていき、右手のパセを繋ぐと「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョも内から内へ通す。「オーレ」がなる。今日のフリは良いじゃないか。ナトゥラルを繋ぎ内から内へ通すパセ・デ・ペチョ。それがゆっくりと長く繋がるから非常に良い。ナトゥラルもクルサードして体の近くを通すパセを繋いだ。剣を代え、手の低いナトゥラルを繋ぐと「オーレ」が続く。パセ・デ・ペチョも良い。どうしたの?今日のフリは良いじゃない。剣は、スエルテ・ナトゥラルでメディア・エストカーダ。ファエナが良かったのと剣が刺さった位置が良いから耳1枚。場内1周の時、そこかしこから「グアポ」の声が飛ぶ。まぁ、ファエナが良かったからな。

 2頭目は、シン・パラール気味の牛で、ベロニカでアビオンしていたので期待していた。だって、ビクトリーノ・マルティンの牛だよ。所がピカを右肩に受けたら腱を損傷したようだ。膝を着くようになる。ピカドール。お前が悪いんだ。角が上を向いている。今度もバンデリージャを打った。今度は良かった。2回左に回り1回右に回った。角の間で打っていた。ムレタでは、膝を折った右手のパセから始め、アレナの中央へ。右手のパセはメディア・パセになってしまう。おまけにブスカンドする。コヒーダされそうになる。ビクトリーノの牛は必ずこういう仕草をする。危ない牛だが、上手い闘牛士が相手にするとこの上なく興奮する。

 パセの後、膝を着くのがダメだ。ナトゥラルでも膝を着く。また、右手をするがやはりブスカンドする。剣を代え、スエルテ・ナトゥラルで物凄い剣を決めた。文句なしのメホール・エストカーダ。牛が直ぐに倒れた。ファエナが悪かったので耳は出ない。喝采に応えて挨拶をした。

 今日の1番期待は、ハビエル・カスターニョ。1頭目は、アジェダード・ポル・アルトから右手を繋ぎパセ・デ・ペチョをすると「オーレ」がなった。がここまでだった。サルドゥエンドの牛はあまり良くなかった。ちょっと肉がたるみ気味だった。剣刺しは非道かったので書かない。問題は最後の牛だ。

 ハンディージャの牛は出てくるとブルラデラ横のタブラを一突き。突進する牛。カポーテでクルサードしてベロニカを繋げない。ハビエルはいつもそう。これが欠点。そんなんじゃ良いベロニカにならない。だからカポーテの外を牛が通っていく。だが、ムレタは素晴らしい。右から繋ぎ、アレナの内側へ。クルサードして右手のパセをリガールして繋ぐと「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョも長い。右手で誘うが思うように牛が動かない。がクルサードして牛を誘うまでの緊張感がフリには欠けている。パセの美しさも。パセ・デ・ペチョは2回繋いだが足が全然動かなかった。素晴らしい。ナトゥラルも手の低い長いパセを牛から引き出した。

 静だが自分の生き様を語っているパセだ。フリスタには判らないだろう。ハビエルの時の「オーレ」の声と、フリの時の「オーレ」の声は違う。「オーレ」の声に女子供の声が聞こえるのがフリ。男の野太い声が聞こえるのがハビエルだ。闘牛ファンはこういう飾り気のない静に自分の生き様を闘牛で語る闘牛士が好きなのだ。ハビエルは、“出来る男”なのだ。剣が少しだけカイーダだった。残念だが耳には少し足りなかった。でも、良いファエナだった。観客の喝采を浴びて挨拶をした。良い仕事ぶりだ。闘牛は耳だけじゃない。ハビエルの男の生き様を見せてくれたのが俺は嬉しかった。

 今日のまとめ。メホール・ガナデリアは耳を取ったので、アルクルセン牧場になるのかな。
 メホール・トレロは、エル・フリにして上げよう。
 メホール・キーテは、エル・フリ。だってアルミジータは何もしなかったし、ハビエルのカポーテは良くないもの。
 メホール・エストカーダは、文句なしにエル・フリの2頭目。
 メホール・ピカドールは、文句なしに、アンデルソン・ムリージョ。
 メホール・バンデリジェーロは、ホセ・マヌエル・サモラノ(長身でハビエル・カスターニョのバンデリジェーロ)

 ってとこかな。


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