いつものポンセ、世にも美しいモランテ、何故かフリもプエルタ・グランデ。

2005年5月30日アランフェス(第2級)闘牛場の結果。

 曇り。ダニエル・ルイス牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、ハンディージャ牧場)。ソブレロ、サン・ロマン牧場の牛。闘牛士、エンリケ・ポンセ、モランテ・デ・ラ・プエブラ、エル・フリ。フィグラが出場したのでソンブラは満員で全体では9割くらいの入り。開始30分くらい前にタキージャにてソルのバレラ購入し写真撮影しながら、隣の隣にアントニオ・コルバチョがいて一緒に観戦する。19時開始、終了時間記録せず。多分21時35分頃終了。

 エンリケ・ポンセは、いつものポンセ。何処へ行っても田舎闘牛仕様。良いときのいつもパターンが出ました。4頭目でパセを繋いでファエナの最後はアビソが鳴ったのに、左手でムレタを折りたたんでカルトゥーチョ・デ・ペスカドで牛の前に立って牛を誘い、ナトゥラルをする。それを今日は3回ではなく4回繋いだ。それからパセ・デ・ペチョをして牛の前でムレタを左手に持ってクルクル回すアドルノをして見栄を切ると観客は総立ち状態になって喝采を送った。ポンセは役者です。

 観客を喜ばせるのが好きでその為にこんな構成を考えついて日々実践しています。剣を代えて、スエルテ・コントラリアでメディアに剣が刺さった。2回目のアビソが鳴り、デスカベジョを持って牛の前でムレタを振って牛の注意を引いていたら牛が座り喝采が鳴りポンセは見栄を切ってから両手を広げて喝采を浴びた。耳2枚。ここまで観客を喜ばせたんだから当然です。僕は、アントニオ・コルバチョに、ポンセは闘牛士じゃなくて役者だねと言いたい誘惑にかられたがグッとこらえた。ごめんなさい、ポンセファンの人。こんな風にしか書けなくて。でも、書き様ながないのよね。

 モランテ・デ・ラ・プエブラは、厳しい表情でアレナに入ってきた。今年始めて観るモランテ。ちょっと太った様だ。それも去年ほぼ1年闘牛をやっていないからだろう。今日はモランテ見たさにサン・イシドロを振ってアランフェスまでやってきたのだ。去年も観てないから是非1回は観たかったのだ。そして、来た甲斐があった。2頭目の牛はインバリドで交換になったがソブレロも良い牛ではなかった。5頭目で世にも美しいパセを見せた。牛が悪くカポーテの時に角をアレナに好き立てて転んだり、動きが鈍く良いパセが続きそうになると止まったりしていたが、デレチャッソでもナトゥラルでもモランテのパセの時の姿勢の美しさとムレタの振り方の美しさが際だっていた。

 観客はその美しさに酔っているのだ。世にも美しいパセ。アゴを引いてパセを通すときの姿勢。その曲線の美しさとムレタが動く曲線と、牛が描く曲線、全てが調和して美を作り出している。こんなに美しいパセを繋ぐ闘牛士は他にはいない。モランテだけである。昔のオルテガ・カノの美しさをも上回っている。美しさに生きる闘牛士。芸術至上主義の闘牛士がモランテだ。写真は殆どがモランテを撮った。剣は、スエルテ・ナトゥラルでメディアと言うよりピンチャッソ・オンダに近かった。デスカベジョ1回で耳2枚。牛が悪くムレタを角で破かれたり、パセが切れたりしていたが、モランテの美しさに対する評価だと思う。

 エル・フリは、3頭目の牛のキーテで足を殆ど動かさないチクエリナを3回繋ぎメディア・ベロニカを決めた。これがフリでは1番良かった。こういうチクエリナを観るとホセ・トマスを思い出す。またみたいなぁホセ・トマスを。最後の牛で耳1枚取ったが殆ど良いパセはなかった。牛も悪く動かなかった。だから、牛の前に立ってクルサードしてパセを繋ごうとしていた。アントニオ・コルバチョに、ホセ・トマスと同じ事をやっているのに、感動がない。と、言ったら、その通りだと真面目な顔で応えてからニコッと笑った。剣はスエルテ・コントラリアでカイーダで決まり牛が倒れて耳1枚。何故か肩車されてポンセとモランテと3人でオンブロスでプエルタ・グランデ。

 訳が分からないけど、まあいいや。フリは恥を知らないのかと思うけどどうでも良い。やってください勝手に。モランテとポンセの笑顔を観た後、そんなのには背を向けてアントニオ・コルバチョに挨拶をした。どこに住んでいるのか聞かれたので、東京に住んでいて毎年ファリア・デ・アブリルとサン・イシドロを観に来ているのだと言った。そうしたら感心していた。そこで質問した。セサル・リンコンは何故遠くから牛を呼べるのかと聞いたら、答えのスペイン語が判らなかった。そうしたら、ああやって牛を呼ぶと4回か5回ムレタッソが出来る。でも、重要なのはパセは体の近くを通すことだと言った。僕はニコッと笑ってハイと言った。それからお礼を言って別れた。

 モランテが観れて、アントニオ・コルバチョと話が出来たのは非常に嬉しいことだった。アントニオ・コルバチョとは何度も書くけどホセ・トマスを育てた人だ。今年彼と知り合えたので、何かあったときにホセ・トマスと会えるか何かしてくれるかも知れない。それはそれで、彼は非常の無口でボーッとしている様に見えるときもあるが、物凄くものの見方が厳しい人だ。こういう人から教わるからホセ・トマスの様に物凄い闘牛をする闘牛士が育つのだろうと思った。彼はポンセの時もフリの時も厳しそうないつものを顔をしていたが、モランテの時は笑顔だった。多分、僕と同じでモランテを観に来たのだろう。始まる前に、ロベルト・ドミンゲスがカジェホンの中を通りアントニオ・コルバチョと挨拶をしていた。


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