ファンタスティコ、エル・ファンディ!闘牛の楽しさを伝える伝道師、耳1枚。

2002年6月2日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 快晴でとても暑いマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、1,5頭目、ヘラルド・オルテガ牧場。2,3,4,6頭目、セプルベダ牧場。闘牛士、ペピン・リリア、ホセ・ルイス・モレノ、エル・ファンディ。ノー・アイ・ビジェテ。テンディド6、バッホにて寿美さんと一緒に観る。

 ペピン・リリアは、何とかしようとしていたが牛が非道くて良いファエナは出来なかったが、やることはやった。

 ホセ・ルイス・モレノは、非道かった。牛が悪いというのが言い訳にならないような非道さ。フィグラじゃないんだからちょんとやらないと来年から呼んでもらいなくなるだろう。

 エル・ファンディは、アントニオ・フェレーラと共にラス・ベンタス闘牛場に衝撃を与えた。闘牛ファンがここ十何年忘れかけていた、バンデリージャ打ちの楽しさを思い出させてくれた。昔で言えば、ビクトル・メンデスやモレニート・デ・マラカイの様なしっかりとしたバンデリージャ打ちを披露して観客を熱狂させたが、今、そう今年2002年はあの時のような、いやそれ以上の熱狂をバンデリージャ打ちで思い出させてくれた。そして、その技術の高さは物凄いものがある。闘牛を全く観たこともなく、知らない人でも、エル・ファンディのバンデリージャ打ちを観たら、闘牛の楽しさ、面白さを感じるだろう。

 3頭目。カポーテではベロニカを繋ぎ膝を着いたメディア・ベロニカをすると、「オーレ」がなり、立ってセルピエンティーナをすると喝采が鳴った。ピカは左側に入った。馬が倒れた。キーテは、ナバラを繋ぎラルガ。沸く。バンデリージャは、1回目は、左へ行き角の先で打った。2回目は、後ろ向きで後ろに下がりながら牛を呼び、牛の描く円と、ファンディの描く円が一緒になったとき角の間できっちり打った。観客は立ち上がって喝采を送る。こんなバンデリージャ打ちを出来る奴は他にいない。凄い。3回目は、後ろ向きで後ろに下がりながら牛を呼び、左右に蛇行しながら下がり角の間で打ったが、残念。1本しか刺さらなかったが、あまりの凄さに喝采が鳴る。凄い、凄すぎる。寿美さんと顔を見合わせて、物凄い難しいことをしていると、感心した。

 ファエナも良かった。デレチャソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。「オーレ」がなる。アレナの内側へ行き距離を取って牛を呼びデレチャソ。そのまま綺麗にリガールをすると「オーレ」が大きくなった。良い牛を引き当てた。パセ・デ・ペチョ。喝采が鳴る。距離を取り、また、デレチャソで長いリガールをすると「オーレ」がなる。パセ・デ・ペチョ。喝采が鳴り距離を取り、ナトゥラル。長いパセが繋がる。「オーレ」が続く。パセ・デ・ペチョはちょっと脇が開いている。

 またデレチャソをするが牛の動きが悪くなる。剣を代え、膝を着いたモリネーテを繋ぐと「オーレ」が続きパセ・デ・ペチョ2回、トゥリンチェラ。スエルテ・コントラリアでピンチャソ3回。その後良い剣が決まったが遅かった。腕だけで刺しに行っている感じ。1回で決まっていたら耳1枚だったのになぁ。

 6頭目最後の牛。この牛は良くなかった。ラルガ・カンビアールからベロニカを繋ぎメディア・ベロニカ。「オーレ」がなる。ピカは少し左にずれていた。キーテは始めのチクエリナが一歩も動かず体ギリギリに牛を通してドッとなったが、後は一歩足を引くチクエリナ。今一。今度もバンデリージャを打った。これが凄かった。1回目は、後ろ向きで後ろに下がりながら牛を呼び、牛の描く円と、ファンディの描く円が一緒になったとき角の間できっちり打った。観客は立ち上がって喝采を送る。2回目は、何気なく右手のバンデリージャ2本持ったと思ったらそのまま牛に向かって走っていき、ビオリン。観客は立ち上がって喝采を送る。3回目は、両手にバンデリージャを持って膝を着いて牛を呼ぶ。距離は5mくらい。牛がファンディに向かって走り出すと立ち上がって右側にフェイントを入れて、綺麗なキエブロ。場内総立ちの状態でエル・ファンディに喝采を送る。こんな凄いバンデリージャをいとも簡単にやってのける。物凄い奴だ。

 ファンタスティコ、エル・ファンディ!あの距離で膝を着いて牛を呼びキエブロをやること自体が信じられない。ましてやそれを綺麗にやってしまう。寿美さんはこれを観ていて、バンデリージャで耳2枚の価値があるというようなことを言った。勿論、バンデリージャで耳なんか切れるわけがないのは寿美さんは知っている。でも、そういう風に言いたくなる物凄いバンデリージャだった。

 ファエナは、「オーレ」もなったが3頭目に比べるとかなり落ちた。剣は、少しずれていたが牛が直ぐ倒れて耳1枚。ファエナが良くなかったからバンデリージャと剣刺しで取ったような耳だ。だから、耳に対する抗議の口笛もなった。当然だろう。が、耳で良かったような気にさせるのはファンディの楽しい闘牛のせいだろう。

 兎に角、物凄い高い技術のバンデリージャ打ちだ。ファンタスティコ、エル・ファンディ!闘牛の楽しさを伝える伝道師だ。

 今年のサン・イシドロでエル・ファンディとアントニオ・フェレーラのバンデリージャを観て闘牛が変わって来るんじゃないかと思ってしまうようなバンデリージャ打ちだ。この2人は今年スペイン、フランスで爆発しそうな勢いを感じる。闘牛って理屈抜きに面白いんだって事を初心者にも分かり易い闘牛をする。こういう闘牛は多くの観光客を呼ぶ闘牛といえるだろう。本当にファンタスティコ、エル・ファンディ!


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