セバスティアン・カステージャは剣で耳が消え、ペレラは耳に至らず。

2005年5月29日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 2005年サン・イシドロ第19日目。曇り。風が吹いていた。ヌニェス・デル・クビジョ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、カルロス・ヌニェス牧場)。闘牛士、28日グラナダのウニコで大怪我したエル・ファンディに代わりセバスティアン・カステージャが出場、サルバドール・ベガ、ミゲル・アンヘル・ペレラ。プレシデンテ、ホセ・マヌエル・サンチェス・ガルシア。エル・ファンディに代わりセバスティアン・カステージャが出場したために、切符の払い戻しがあり、ノー・アイ・ビジェテにはならなかったがほぼ満員。ソルのテンディド5にてYさん、Tさんと一緒に観戦する。19時開始、終了時間記録せず。多分21時15分頃終了。

 エル・ファンディに代わりセバスティアン・カステージャが出場。闘牛をあまり知らない一般大衆はエル・ファンディを観たかっただろうが、グラナダで大怪我をして医者の制止も振り切って麻酔を打って最後まで続けサン・イシドロには出場できなくなった。代わって出てきたのが、今年のサン・イシドロにセンセーションを巻き起こしているフランス人闘牛士、セバスティアン・カステージャ。彼の出場は、ラス・ベンタス闘牛場のアフィショナードの多くが望んでいたことだった。そして、今日こそプエルタ・グランデを開けさせようと彼も思っていただろうし、アフィショナードも期待していた。

 だが、1頭目の牛は余りにも悪すぎた。ベロニカをするとパセの時に飛んだ。これは前脚が悪い証拠。その通りピカが入った後、左前脚がコッホになっていた。そしてよたよた歩き。観客は牛の交換を要求したがプレシデンテはそれを認めなかった。ファエナは、アレナ中央でタブラにいる牛を誘ってデレチャッソで背中を通すパセから始めた。パセ・デ・ペチョ、背中を通すパセを繰り返し、パセ・デ・ペチョ2回で拍手が沸いた。離れ、デレチャッソを3回リガールしたが2回目のパセはムレタを牛の角にはらわれていた。離れデレチャッソ4回でパセ・デ・ペチョ。もうこの時点で牛の動きは悪くなっていた。ナトゥラルでも牛の動きは悪く、おまけにムレタを牛の角にはらわれていた。耳が出るようなファエナにならないのは初めから判っていたことだが、この牛を交換しないプレシデンテには腹が立った。

 4頭目の牛も良い牛ではなかった。出てきて白線を飛んだ。マンソ。ベロニカをするとパセの後によたついた。ピカが入り牛の動きが止まった。セバスティアンは、ゆっくりしたベロニカを4回繋ぎメディア・ベロニカを決めて喝采を浴びた。素晴らしいキーテだった。ピカの後、サルバドール・ベガのキーテもベロニカ2回とメディア・ベロニカ。これも良かった。バンデリージャが6本打たれた後、ブリンディースはTVカメラにしていたが、これは怪我をしたエル・ファンディに捧げられたそうだ。なかなか良いところがある。

 ファエナは、タブラ付近でエスタドゥアリオで始めた。3回繋がりパセ・デ・ペチョ2回で拍手が沸いた。エスタドゥアリオの2回目は背中の方から牛を迎える危ないパセだったので観客は、「オー」というような危険を感じている声を上げた。良くアグアンタールした。こう言うところに彼のやる気と意気込みを感じる。それからアレナ中央へ行って遠くから牛を呼んでデレチャッソをリガールすると、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで牛が膝を着いた。折角盛り上がると牛がそれに水を差す。離れデレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手が沸く。それからナトゥラルを3回繋いだ。離れナトゥラルを3回繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手がなる。デレチャッソを4回リガールすると、「オーレ」が鳴りパセ・デ・ペチョで拍手が沸く。

 何とか耳の価値があるファエナになっている。デレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョで牛の前に立ち拍手。デレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョで牛の前に立ち見栄を切って拍手なった。剣を代えて、アジュダード・ポル・バッホを2回繋いだが牛はもう動かなかった。後は剣刺しだけ。スエルテ・コントラリアで牛を置いて剣が決まったと思ったら牛から離れたセバスティアンの右手には剣が握られていた。つまり、バホナッソで剣が刺さったのを抜いたから剣を持っていたのだ。一瞬歓声がなって観客は立ち上がりかけたが、それが溜息に変わった。耳が消滅した瞬間だった。その後にカイーダで剣が決まり牛が座った。牛が退場した後にセバスティアンは喝采に応えて挨拶をした。残念な剣刺しだった。

 サルバドール・ベガは、ちょんと闘牛をやっていたが今日は1番印象に残らなかった。注目や期待が、セバスティアン・カステージャやミゲル・アンヘル・ペレラに行っていたからだろうがそれを自分の方に引き戻すことが出来なかったのだ。2人に比べてやはり技術的に劣ると言うことも否めない。花もないし気迫も感じられなかった。観客はそういう彼の特徴のなさに興味を示さなかったのだ。

 ミゲル・アンヘル・ペレラは、6頭目で良いファエナをした。耳には少し足りなかったと僕は思うが、それでも良い剣が決まっていれば耳が出たかも知れないが・・・。牛は出てきて白線を飛んだ。マンソ。ベロニカをすると角をアレナに突き立てて転んだ。前脚だけでなく後ろ脚も弱い。ピカは牛を遠くから呼んで左前に入った。拍手がなる。2回目も遠目から牛を呼んで左前に入った。良いピカだった。ファリア中で1番良いピカだった。キーテは、牛を近めに置いて足を1歩も動かさないチクエリナが4回続きメディア・ベロニカで喝采がなった。3回目のチクエリナだけだ少しだけ足が動いたがホセ・トマスを思わせる素晴らしいチクエリナだった。ピカドールの退場に拍手が沸く。

 バンデリージャの後に牛は観客へ捧げられた。そのままアレナ中央に立ってタブラにいる牛を呼んでデレチャッソで背中を通すパセから始めた。デレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手が沸く。良い感じでファエナが始まった。離れデレチャッソを4回リガールしてパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴り拍手が沸いた。離れデレチャッソ3回繋ぎ、クルサードし直して2回繋ぎパセ・デ・ペチョ。この辺から誘う距離が近くなっていった。セサル・リンコンのように遠くから牛を誘ってパセを繋げば牛は動いたはずだが、それが出来ないのだ。ペレラにはそういう技が未だ身に付いていないのだ。それでも良くやっている方だが・・・。

 ナトゥラルを3回繋ぎパセ・デ・ペチョ。ピコ気味だ。デレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョ。拍手がなる。牛の動きが悪い。剣を代えて、クルサードしてムレタを振って牛の動きを確認してベルナディーナを3回繋ぎパセ・デ・ペチョ。異様なほど緊張があるパセだった。アビソがなった。剣はピンチャッソが4回。牛が座った。ペレラは良い闘牛士だったが結果を出せなかった。しかし、今後に繋がるファエナが出来たと思う。

 ヌニェス・デル・クビジョ牧場の牛は難しい。脚が弱いし力強さがないのでファエナ後半になるとバテて動きが悪くなる。パセをなかなか通せなくなるのだ。ホセ・トマスのように牛の近場でクルサードを繰り返してパセを繋ぐしかなくなるのだ。この牧場はラス・ベンタス闘牛場のようにアレナが広いところでは良いファエナは期待薄だ。2級闘牛場とかのようにアレナが狭いところの方が扱いやすいし、耳も出やすい。

 観客が期待していたセバスティアン・カステージャのプエルタ・グランデは来年以降にお預けになった。彼はラス・ベンタス闘牛場で観客を呼べる闘牛士になった。今年、1番センセーションを起こしたのがセバスティアン・カステージャだ。しかし、ファンディの怪我で急遽出場が決まって3回目の出場だったが耳が出なかったので、サン・イシドロのトゥリンファドールの行方は、限りなくセサル・リンコンに近づいた。


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