2000年5月29日、ラス・ベンタス(マドリード)の結果

フィニートのムレタ、モランテとアベジャンのカポーテ・・・。
でも、牛が・・・。

por 斎藤祐司

 快晴の闘牛場。下山さんと一緒に闘牛場に行った。ホセ・ルイス・ペレダ牧場の牛の予定は、獣医の検査を通ったのは1頭のみ。初めの牛は、ラ・デエシジャ牧場、2頭目、3頭目、4頭目、6頭目がガビラ牧場に代わった。フィニート・デ・コルドバ、モランテ・デ・ラ・プエブラ、ミゲル・アベジャン。

 フィニート・デ・コルドバは、1頭目で見せ場を作った。クルサードして右手の手の低い長いパセを繋いだ。闘牛場にオーレがなった。ナトゥラルでも手の引く長いパセを繋いでオーレをならせた。でも、ちょっとピコ(ムレタの先でのパセ)気味だった。次第に口笛が吹かれていった。パセ・デ・ペチョも脇の開いたものだった。剣はバホナッソだった。

 2頭目はマンソだった。ベロニカのパセの時から動きがおかしかった。右から誘って左にパセをすると牛は通常、時計回りに振り返る。この牛は反対に廻って振り返る牛だった。ムレタでもそうだった。そんな牛だったのでパセが良いパセにならなかった。その内パセの後に膝を着きだした。どうにもならない牛だった。彼のファエナを退屈なものにしたのは牛の動きだった。これじゃ闘牛士が可哀想だった。

 モランテ・デ・ラ・プエブラは、2頭目で良いところを見せた。角が上を向いた牛。カポーテを振っても向かっていかなかった。ピカが入るとコッホになった。アベジャンのキーテは、チクエリナを繋ぎラルガを決めた。オーレがなった。モランテも出ていってキーテをする。シンプルなベロニカを繋ぎ体に巻き付けながらのメディア・ベロニカにオーレを喝采がなる。2人とも良いキーテを見せて観客を沸かせた。

 少し離れたところから右手に持ったムレタを振って誘うと牛は吸い寄せられるように動き出した。手の低い長いゆっくりとしたパセが繋がるとオーレがこだました。綺麗なトゥリンチェラが決まると喝采が起こった。ナトゥラルでも手の低い長いゆっくりしたパセを腰を弓のように反って繋ぐ。オーレがなる。でもここまでだった。牛は初めから良い動きが続かないのは解っていた。
ここまで牛を動かしたのはモランテの技量がそうさせただけだ。

 牛は動かなくなったと思ったら座り込んでしまった。それを起こしてパセをしようとしても出来なかった。剣刺しもピンチャソ2回。牛がちゃんと止まっていてくれないために上手く刺せなかった。また牛が座った。もう立てなかったので短剣でバンデリジェーロが刺して殺した。ここに牛は、今年のセビージャの4月23日に出たが同じだった。力がないので途中でパセだ出来なくなる。持久力がないのだ。

 1頭目の初めの足を止めたベロニカは痺れた。電気が通ったようにビリビリきた。モランテの手に動き、腰の反り、顎の弾き方はベロニカを最も美しく見せる、訓練された肉体の動きだ。シンプルなベロニカがこんなに美しく見えるのはなかなかない。この牛も動きが悪かった。モランテはどうしようもなかった。

 ミゲル・アベジャンは、モランテの初めの牛でやったキーテから観客を沸かせた。カポーテを後ろに裏にして持ってパセを通した後片手を離して体の周りを回してパセする、いわゆるフレゴリーナを繋げ、ガオネラ、ラルガと決めるとオーレと喝采がなった。アベジャンがカポーテを持っただけでベンタスが静かになった。彼の体に直ぐ近くを通るパセは、どれほど自分が有名な闘牛士になりたがっているかを、観客に訴えている。これを命懸けの闘牛といわずして何というのだろう。そう言う気迫が観客にじわじわ訴えていくのだ。

 1頭目では、右手の手の低い長いパセを一歩引いて繋げたが、観客がその1回1回にクルサードしないと口笛を吹いた。するとアベジャンは、「あんた達はおかしいよ」と言うように首を振った。これはベンタス特有のものだ。アベジャンが可哀想だった。牛はマンソだったしパセが繋がらなかった。でもここまで牛を動かせたのはアベジャンの力量だった。1つだけ苦言を言えば、今日はパセ・デ・ペチョの時、脇が開いていた。

 2頭目の牛は、パセの後にモランテの牛を同じで反対に廻って振り返る牛だった。マンソだったし・・・。パセの途中で何度も牛は止まった。ダメだった。剣は良いところに決まった。

 今日も牛が悪かった。闘牛士がいくら良いところを見せようとしてもどうにもならないことがある。今日の3人の闘牛士は良くやった。もうちょっと良い牛を出してくれ。昨日は良い闘牛で疲れたが、今日は牛が悪くて疲れた。同じ疲れるなら良い闘牛で疲れたい。モランテ、アベジャン!また2日に会おうぜ!あっ、フィニート、モランテには明日アランフェスで会うんだった。


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