注目の新星、セサル・ヒメネス、ソリタリオでプエルタ・グランデを開ける!フエンテ・インブロの凄い牛、場内1周!

2002年4月28日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 快晴のマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、フエンテ・インブロ牧場。見習い闘牛士、セサル・ヒメネスのソリタリオ(ウニコ・エスパーダ=1人で6頭の牛を相手にする闘牛)。ソブレサリエンテ、見習い闘牛士、チャプラ、セサル・ガルシア。テンディドは6割から7割の入り、全体で約半分の観客の入り。ノビージョ(見習い闘牛士)では異例のソリタリオでこれだけ観客が入れば上等だ。普段の日曜日の観光客相手の闘牛に比べて倍近い入場者だろう。

 入場行進が終わり闘牛が始まる前に、場内の観客からセサル・ヒメネスに対して喝采が送られた。1人で6頭相手にするのだから、これに対するものだ。

 1頭目の牛のカポーテからなかなかやるなと思った。牛の誘い方が良い。それはムレタの時もそうで、角2本目に掛かってクルサードしている。時には2本目を越してクルサードするのでこれは凄いことだ。パセをするときの形も綺麗だ。しかし、若いので構成力がないので、2頭目、3頭目では盛り上がりに欠けた。観光客の様な人は耳を要求していたが、あれで耳を上げたら、オレハ・デ・ツゥーリスタ(観光客の耳)じゃないか。だから、場内1周もしなかった。

 5頭目の牛で、ラルガ・カンビアールを2回続けるがカポーテを角に取られた。ピカは2回とも、左側に入った。バンデリジェーロがトロ・パサードなのに喝采を受け挨拶をした。格好だけ良かったが意味が判らない。この牛は、カポーテの時は判らなかったが、ムレタの時に凄い牛だと判った。こういうことは珍しい。カポーテの時から判るものだけど。

 セサルは、アレナ中央部分に立って、タブラ付近にいる牛を誘う。左側を向けて直立して牛を呼び、右手で持ったムレタで背中を通すパセ、体の前を通すパセ、ムレタで背中を通すパセ、体の前を通すパセ、と2回繰り返しパセ・デ・ペチョを決めると立ち上がって喝采を送る人もいた。良くあの距離から牛を呼んだ。牛も良く反応したものだ。10mから15m位離れたところから右手のムレタで牛を呼ぶと牛がムレタに向かって走り出した。手の低い長いパセが繋がると、「オーレ」が鳴り響いた。パセも良いし、牛も凄い。熱狂が闘牛場を包んだ。

 遠めから牛を呼んでデレチャソ(右手のパセ)、左手に替えてナトゥラルを繋ぐ。手に低い長いパセ。「オーレ」がこだました。角2本越したところまでクルサードしてまたナトゥラルを繋ぐ。「オーレ」の声は大きく力強く叫ばれた。良いパセ、凄い牛だ。剣を代えて、膝を折ったパセを繋ぐ仕上げでも良い仕事をした。「オーレ」が続きスエルテ・ナトゥラル出牛を置きピンチャッソ1回。ため息が漏れる。上を向いて悔しがっている。観客はそれでも拍手を送っている。スエルテ・コントラリアでバホナッソ気味に決まった。デスカベジョ1回。耳1枚。でもう1枚要求。牛が退場前から喝采が起こりプレシデンテは青いハンカチを出して牛の場内1周を認めた。

 良いファエナ、凄い牛だった。あんなに遠くから呼んで動く牛はそうざらにいない。名前も同じだけどセサル・リンコンのファエナを思い出した。あれだけ牛を呼べるのはかなりの力量を感じないわけにはいかない。

 6頭目の良かったが剣刺しがカイーダ。それでも耳1枚。観客から口笛の抗議も受けたが結果として耳2枚を取りプエルタ・グランデを開けた。直ぐに、プエルタ・グランデに向かった。開かれたプエルタ・グランデから出てきたセサル・ヒメネスの表情は初々しかった。16,17歳だろう。しかし、凄い才能を感じた。牛も判るし、パセの形も綺麗だ。危険なときの逃げ方や誤魔化し方まで知っている。しっかりとした技術と、闘牛場で生き残るすべも知っているように思った。今日の6ユーロは大満足。注目の新星が期待以上の闘牛を見せた。

 中には、「あれはプエルタ・グランデじゃない」と、言う人もいるだろう。今日はそのことが重要なんじゃない。将来、良い経験を積めば、良い闘牛士になるであろう才能を観たと言うことが重要なのだ。

 セサル・ヒメネス。1984年4月19日マドリード生まれ。18歳。2001年2月4日マドリード、ビスタレグレ闘牛場でノビジャーダ・コン・ピカドールでデビュー。マドリード闘牛学校出身。初代アポデラードが、あのビクトリーノ・マルティン。現アポデラードは、シモン・カサスとエンリケ・パトン。サラゴサの興行主コンビ。サン・イシドロには出る予定はないけど来年のサン・イシドロには出て欲しい。そこで活躍したらアルテルナティーバをすればいい。君は未だ若い。じっくり勉強をしてから正闘牛士になった方がより良い闘牛士になれるだろう。マドリード闘牛学校は良い闘牛士を闘牛界に送り続ける。凄いことだ。あのクルサードの仕方なんか、たまんないよ!

 今日は観戦記を書くつもりがなかったが、良かったので書いてしまった。


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