99年5月26日、ラス・ベンタス(マドリード)の速報

闘牛場を総立ちにさせたホセ・トマス。
(男だけじゃなく、興奮して女まで立っていた)
が、プエルタ・グランデならず

por 斎藤祐司

 

 牛、サン・ロレンソ。闘牛士、マヌエル・カバジェーロ、ホセ・トマス、エウヘニオ・デ・モラ。

 曇り空の中で始まった闘牛。観客を魅了し喝采を浴びたのはやはりホセ・トマスだった。カポーテからムレタまで観客の視線を釘付けにして、「オーレ」の合唱が響いた。

 初めの牛はビッコの牛。それを問題にすることなくカポーテでベロニカを繋ぎ、「オーレ」がなる。キーテはチクエリナ。足を揃えた体の近くと通すパセの連続。メディア・ベロニカの後は喝采。ピカの後に、エウヘニオのキーテ。カポーテを背中の後ろで持ってパセを繋ぐ。「オーレ」がなる。牛が彼の体に触って行く。闘牛服が血に染まる。喝采。ホセ・トマスも負けじと同じパセ。こちらの牛が彼の体に触れて通っていく。「オーレ」がなる。闘牛服が血に染まり牛の前で見栄を切る。喝采。

 アレナの中央で観客に牛を捧げる。ファエナは、その場で牛を誘って始める。牛を30m離れた所からムレタで引いてきてパセ。観客が沸く。右手の低いパセを繋いで、パセ・デ・ペチョは大きくゆっくりしたものを通して喝采を浴びる。この5,6回のパセで観客の気持ちを掴んでしまった。

 右手で牛を体の近くを通すパセ、ナトゥラルも手の低いパセを繋いだ。お汗の度に「オーレ」がなりパセ・デ・ペチョの後は喝采でホセ・トマスを向かえた。剣はスエルテ・コントラリアでピンチャソ。スエルテ・ナトゥラルで決めた。デスカベジョ2回。耳1枚。

 次のホセ・トマスの牛は非常に難しい牛だった。それでも牛を動かしてしまうことに凄さを感じてしまう。クルサードして牛を誘いナトゥラルをする。手が低い。牛を怖がらない。これが今他の闘牛士では出来ないのだ。剣を代えに行くと闘牛場の観客は総立ちになってホセ・トマスを向かえた。男達は強い喝采を浴びせた。勿論、女達も立っていた。そう、ホセ・トマスは女まで立たせる物凄い闘牛士なのだ。

 しかし、剣は刺されなかった。ピンチャソ10回。刺せなくてデスカベジョ2回。ホセ・トマスはこの日失った耳は3枚。剣さえ決まっていれば耳4枚取っていたことだろう。観客はプエルタ・グランデをさせたかったが、剣が悪けりゃどうしようもない。が、1番ガッカリしたのは他ならぬホセ・トマス自身だろう。

 マヌエル・カバジェーロは、カポーテのラルガの連続で観客を沸かせた。

 エウヘニオ・デ・モラは、初めの牛で良いファエナをやった。が、去年の様な良いファエナにはならなかった。

 今日は、ホセ・トマスに心を奪われた日。マドリードの idolo は、ホセ・トマス。闘牛史上最高の闘牛士、それがホセ・トマスだ。


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