曇り空から夕日が射し込んだラス・ベンタス闘牛場。多分ノー・アイ・ビジェテ。
パルティード・デ・レシナ牧場。闘牛士、フランシスコ・エスプラ、ホセリート、ゴメス・エスコリアルに代わりエル・シド。
エスプラは今日一体何をしたのだろう。ノートを見てもやったことはトロ・パサードのバンデリージャを打ったことくらいしかないぞ。牛も悪かった。でもクルサードもしなかった。逃げてばかりでまともなパセをした記憶がない。書きようがない。
まともに闘牛をしたのはホセリートだけだった。いくら非道い牛でもクルサードして牛をコントロールしその牛の力を引き出していた。それでこそ牛に対して尊厳を持って殺すことが出来るのだ。カポーテでも美しいベロニカを繋ぎ、牛をマンダールしていた。2頭とも後ろ脚がコッホの牛だったがやることをやっている。腰を引いて恐がりはしなかったし、パセの途中で体を動かすと余計に危ないことを知っている。だからブスカンドする牛でもクルサードしてムレタを振っていた。
2頭目では、手の低い長いナトゥラルが繋がると「オーレ」がなった。丁度ヨーロッパ・チャンピオンの試合が始まりバレンシアがゴールを決めたときに闘牛場でサッカーのラジオを聞いている人たちがいて、ホセリートの闘牛中に「ゴール」と叫んで白けさせていたが、ホセリートは全く気にすることなく自分の仕事に徹した。ナトゥラルの後のパセ・デ・ペチョで牛が誘いに乗らないとクルサードし直してパセを繋いだ。落ち着きがあり見ていて安心できる。
今日1番非道かったのは、エル・シドだ。初めの牛は交換しなければならない牛だったがプレシデンテはそれを拒否した。パセの出来る牛ではなかった。それでも非道い剣刺しの後刺し直しがピンチャッソ6回でアビソ2回。剣刺しの時に左足から踏み込んでいかない。ちょっと呆れた。
最後の牛はちょんとやればパセが出来た牛だった。もしホセリートがやっていたら良いパセを引き出して面白いファエナが観れただろう。1番の失敗はこの牛との距離が判らなかったこと。誘う前に立っている位置で牛が動いて近づいてくる。牛の特性が1頭1頭違うことを彼は分かっていないし、確かめようとしない。これで闘牛やって闘牛をやろうとしているのだろう。牛が動くから怖がって腰が引ける。腰が引けるから牛が余計に体の方に向かってくる。もっと離れたと事から牛を見て観察して反応を確かめてそれから牛を誘わないと牛を操ることは出来ない。
怖いもんだからパセの途中で体を反対側に倒してパセを省略しようとしているが、そうすればそうするだけ牛に自分の体を見せていることになるのが判らないのだろうか。この牛をパセの出来る牛だった。出来ない牛だったらこんな事は言わない。今日1番良い牛だったのだ。それを操れないエル・シドに腹が立った。闘牛の1番面白いのは距離をいかに把握するかなのだ。その事が彼にはどうでも良いことのようだ。それで逃げ回っていて牛が止まってから見栄を切って、「俺はちゃんとやっているぞ」格好をするのは止めて欲しい。それは偽善でしょう。見栄を切る前にやることやって欲しい。やらないで見栄を切るのは誰でも出来る。
今日は、牛が非常に悪かった。エル・シドが相手にした1頭だけがパセを繋げる牛だった。交換しなきゃならない牛を交換しないプレシデンテも非常に悪い。闘牛をぶち壊しにしているのに等しい。ホセリートが相手にした2頭をエル・シドがやっていたらまともなパセを繋げなかっただろう。1流とはこういうことなのだ。自分の技術で牛を動かして始めて闘牛士だ。良い牛でパセを繋いで耳を切ることは誰でも出来る事じゃないか。ホセリートだけが1流の技術を見せた。今日の牛はエル・シドと同じように呆れてしまう。
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