エウヘニオ・デ・モラ、コヒーダの後、耳2枚。プエルタ・デ・エンフェルメリア。

2001年5月22日、マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。(第1級闘牛場)

 快晴のラス・ベンタス闘牛場。ノー・アイ・ビジェテ。

 1頭目、3頭目、5頭目がドミンゴ・エルナンデス牧場。2頭目、4頭目、6頭目がガルシグランデ牧場。闘牛士、エスパルタコ、エウヘニオ・デ・モラ、エル・フリ。

 エスパルタコは今日は良くやった方だ。いつもクルサードしないでパセを繋ぐ人が2頭目では凄いクルサードをして牛の前に立った。その事が驚くべき事だ。良いパセなど出来るような牛ではなかったがあそこまでエスパルタコがクルサードしたのは僕の記憶にない。エウヘニオがコヒーダされたため3頭目の牛も相手にした。3頭目でもクルサードしてパセをしていたがボロが出た。外から外にパセを通しパセ・デ・ペチョでは完全に腰の引けた外から外へのパセを繋いだ。思わず笑ってしまった。今年引退のエスパルタコ。最後に見せたクルサードが印象に残った。

 今日1番良かったのがエウヘニオ・デ・モラ。彼、独特の内側から内側に通すパセ・デ・ペチョは絶品だった。こんなパセ・デ・ペチョを1回のファエナの中で何度も続けて出来る闘牛士は他にはいない。テンプラール(ゆっくり)で長い。

 綺麗なベロニカを繋ぐと「オーレ」がなった。メディア・ベロニカも味がある。牛は後ろ脚に欠陥があった。左後ろ脚を引きずっている。テンディド7から盛んに牛を交換するように口笛や緑のハンカチが振られている。ピカは右側に入った。バンデリージャが刺されたが牛は交換にはならなかった。右手から始めたファエナはパセの2回目で牛がバランスを崩して座り込んだ。また、一斉に口笛が吹かれる。

 アレナの内側へ行き右手の体に近くを通るパセを繋ぐとまた「オーレ」がなった。内側から内側に通すパセ・デ・ペチョが決まると喝采がなった。ナトゥラルもクルサードして体の近くを通し、テンプラールの内側から内側に通すパセ・デ・ペチョを通した。絶品だ。右手で角にかかる位の所で牛を誘う。左足を軸にしてパセを繋ぐリガールを続けると「オーレ」は大きくなった。そして、テンプラールの内側から内側に通すパセ・デ・ペチョ。絶品だ。剣を代え、直ぐにスエルテ・ナトゥラルで刺しに行った。剣が決まったと思った瞬間エウヘニオは角の上に乗っかってコヒーダされていた。これは、完全に刺されたと思った。剣は少しコントラリアに決まった。

 みんなが走り寄って抱えられて医務室に向かう。牛は剣を背中に刺したままタブラに寄っていった。医務室前のカジェホンでエウヘニオが一旦立ったが医務室に向かった。牛は少しして膝を着いた。観客は一斉に白いハンカチを振って耳を要求した。口笛が鳴る。プレシデンテは白いハンカチを出した。僕は耳1枚だと思っていたら観客はもう1枚を要求した。白いハンカチは振られ続け口笛はさらに大きく吹かれた。あれっ、2枚はやりすぎだと思っていた。しかし、プレシデンテは観客のプロテストの前に屈して2枚目の耳を出した。つまり、耳1枚+コヒーダ分の耳1枚で耳2枚になったのだろう。

 今度はテンディド7を中心に2枚目の耳に対する抗議が始まった。当然だと思う。2枚目は余計だった。僕はエウヘニオのファンだけれどあれを出してはいけないと思った。

 エウヘニオは、右太股に15cmの角傷を受けてこの日は1頭しか相手にしなかった。いつ復帰するのか現時点では判らない。

 エル・フリは、味のないパセをする。カポーテでは牛の動きとカポーテがパセをするときに遠すぎる。もう少し近い方が見ていて乗ってくる。せめて後10cm近かったら良いだろう。ただやっていることは凄いことをしている。ポルタガジョーラからラルガ・カンビアールをしたが、キーテでは、チクエリナ、メディア・ファロール、チクエリナ、メディア・ファロール、メディア・ベロニカといった具合に何気なくやってしまう。ナバラ、メディア・ファロール、ナバラ、メディア・ファロールと繋いだり派手なことをやって観客にアピールする。フリが出るときはミーハーファンがベンタスでも多いのでより効果がある。

 2頭とも、バンデリージャを自分で打ったが殆どがトロ・パサード(牛の角の間で打たずに頭の横にずれて打つ)だった。これで喝采がなるのはちゃんとやっているバンデリジェーロに失礼だと思う。人気だけで拍手を貰ってちゃそのうちダメになるさ。しかし、色々問題点を指摘したがムレタは1番問題がある。クルサードして誘っている。それは良い。でも、左右のパセの時に体を反らせ過ぎるので感情を刺激されない。良いパセに感じないからだ。いくら体の近くを通してもグッと来るものがない。「オーレ」を声が出ない。

 それに今日の1頭目は距離を掴んでいなかった。何処に立ち、何処で誘えばいいのかが判っていなかった。だから離れて立たなければならないときに、近づきすぎて牛が動いて寄ってきたりして自分でファエナをやりにくくしていた。右手のパセでリガールするときも初めの誘うときにクルサードしていなかったり、やっている仕事が雑だ。ナトゥラルの時もムレタを後ろまで振りすぎ。おまけに最後にムレタが高くなる。

 雰囲気としては初めの牛の時、耳が出そうな感じだったが剣を失敗してパー。年々剣が下手になってきた。人気も段々落ちてきた。牛を誘うときに「あー」「あー」言い過ぎ。鶏じゃないんだからガジャンドばかりしないで欲しい。もっと静に闘牛やっても良いじゃない。そう言う姿、自体も飽きてきた。

 ともあれ、エウヘニオが3年ぶりにラス・ベンタスで耳2枚を切った。これで乗ってくれれば良いのだが。信じられないことだが、ホセ・トマスと同じ年。エウヘニオ。もう少し落ち着きが出てきても良いかもよ。でも、何度も書くけどあのパセ・デ・ペチョは絶品だ。それだけで食事をしてしまいたくなるような美味しいプリンのようだ。6月8日のサン・イシドロには出てこれるのだろうか?


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