99年4月22日、セビージャの結果

悪い牛が出てくるとやる気がない、リベラ・オルドニェス

por 斎藤祐司

 

 牛、マリ・カルメン・カマチョ。闘牛士、エスパルタコ、リベラ・オルドニェス、フリアン・ロペス“エル・フリ”。

 

 1頭目、エスパルタコ。落ち着いて見ることが出来なかったので上手くかけない。一言。牛が悪かった。

 2頭目、リベラ。ラッパが鳴るとカポーテを引きずりながらトリルの前に行き両膝を着いて牛を向かえる。闘牛場は期待で騒がしくなる。ラルガ・カンビアール(両膝を着いてカポーテを頭の上で廻し牛をパセする技)の3連発。「オーレ」が3回なった。中央に行ってベロニカを5回、メディア・ベロニカを決めて大喝采。セビージャのファンの前で期待に答えたかに見えたが。ピカドールが出てきてキーテ。チクエリーナ3発で牛を持ってきてラルガ(片手でのカポーテ捌き)で決めて牛を置く。チクエリーナは、パセを通す方の足を通さない方の足に、引いてパセをしていた。これは誤魔化しのパセだが、観客を沸かす。牛は膝を着く。良い牛での悪い牛でもない。

 バンデリージャを刺した後、パセをすると牛が逃げていく。牛が駄目になったようだ。剣刺しの時の牛の置き方が難しいだろう。

 パセで牛は動くが味のないパセ。何故なら牛を体の近くを通さないパセだからだ。パセの後、牛は膝を良く着く様になった。ファエナを諦めて剣を変えに行った。剣刺しは牛の前足を閉じた状態で刺そうとしている。これだとピンチャソになる確率が高い。やはり、ピンチャソになる。合計8回のピンチャソ。牛の置き方が悪い。あれじゃ刺せない。何と剣を刺せなくて、デスカベジョで殺す。恥知らずな奴。

 3頭目、エル・フリ。シンプルなベロニカで観客を沸かす。それからカポーテの裏側で牛をパセし、カポーテを頭の上を通してから、体の横に出すパセを3発、ラルガで決めてピカドールの前に牛を置く。ピカで突かれると牛は両膝を着いた。牛は期待できないかも知れない。

 フリは、自分でバンデリージャを撃たない。観客はフリにバンデリージャを撃たせようと騒いだが撃たなかった。何故なら牛が悪いからだ。

 右手のパセを通常の型で牛を誘ってやる。パセの後、牛は膝を着いて転ぶ。パセ・デ・ペチョの時にムレタを角がはらう。脇が開いて牛を誘っている。脇は締めないと駄目だ。ムレタが角ではらわれるので良いパセにならない。ナトゥラルは良いパセをする。左手の一連のパセの後、見栄を切って観客を沸かせる。再びナトゥラルを繋ぎトゥリンチェーラを決め、剣を変える。剣刺しは、ピンチャソ1回、2回目で剣を決め喝采を浴びた。

 4頭目、エスパルタコ。良いピカが入ったと思ったら、馬が潰されてピカドールが危なかったが、バンデリジェーロが牛を馬から離し事なきを得た。2回目のピカも、ピカドールが右手を大きく上げて牛を誘って良いところにピカが入った。牛の誘い方、刺し方、刺す場所、刺している時間、最高に近いものを見せてくれた。良いピカドールだ。満場の喝采を受けて退場。

 バンデリージャはトロ・パサードで刺していた。バンデリジェーロは見せ場なし。

 牛が悪くパセの後直ぐに闘牛士の方を向く。スペイン語では、ブスカンド(捜す)と言う。闘牛士を捜すのだ。危険な牛の1つ。難しい牛。エスパルタコは、パセの時に牛を体の遠くを通している。難しい牛だから仕方が内面もあるが、これが彼のスタイルでもある。嫌いなタイプの闘牛士。牛の角の間に体を入れずに牛を誘う。これはクルサードが足りないと言う。難しい牛だからこそクルサードしないと牛は動かない。今更教科書通りのことを彼に言っても仕様がない。彼はクルサードが出来ないからだ。5月2日のマドリードでこんなことしたら、思いっきり抗議されるだろう。剣刺しは、ピンチャソ1回の後、バホナッソ(横から刺した剣)。セビージャじゃ抗議の口笛が鳴らない。地元闘牛士には甘いのがセビージャの特長。

 5頭目、リベラ。牛は出てきて落ち着きがない。ケレンシアの問題。止まることがなく、常に動いている。難しい牛で闘牛士がコントロール出来ない。ピカが入ってから牛は止まる。

 バンデリジェーロが牛を誘っても、牛にその気がない。なかなかバンデリージャを撃てなかった。

 牛は確かに難しい。が、クルサードが足りない。パセが出来ないんじゃなく、パセをしないのだ。このふてくされた態度はいつもながら気にくわない。彼は、自分が有名な闘牛士一家に生まれたことであんな態度をとっているのだろうが、それがなければ見向きもされない技術しか持ち合わせていないことを知らない。やる気がなく牛を捨てた。剣は1発で決めたが、デスカベジョは何回も刺したがなかなか決まらなかった。くだらねぇ闘牛をやりに出てき上がって、馬鹿野郎。罵声をあげていたらスペイン人が振り向いていた。でも彼に口笛を吹いて抗議する人も多くいた。最後に場を納めるために 「ティエネ・コーニョ」 と言ったら、そこかしこで笑い声が起こった。この後、隣のフランス人がマルボロを1本くれたので、ありがたく頂いた。

 6頭目、エル・フリ。牛が出てきて直ぐ気付いたのは左利きの牛。カポーテのパセで左角を振って通っていた。それと左前足が悪い。風が強いためパセがやりにくく、コヒーダされそうになる。難しい牛。

 バンデリージャは今回もフリが撃たなかった。今回も悪い牛と見たからだ。

 この牛は、右手のパセの時は動くが、左手のパセの時はブスカンドする。丁寧に右手のパセを繋いだが牛は思うような曲線を描いてくれない。左手のパセは危ない。リベラの様なふてくされた態度をとったりしない。フリは努力したが出来なかった。


 早めに出てきたので闘牛士の車の前で待ってると、3人の闘牛士が来た。エル・フリの所のバンデリジェーロは、去年までセサル・リンコンの所にいた、マヌエル・ゴメスが付いている。マヌエルに挨拶をして闘牛場は後にした。ダフ屋から闘牛開始時間を過ぎてから買ったので値引きに成功した。これは、下山さんから授かった知恵だ。持つべきものは友。いい友に恵まれると良いことが色々ある。

 今日の収穫は、エル・フリの正闘牛士になってからセビージャ初登場。と、フリと言えども悪い牛に当たると耳は切れないと言うこと。当たり前の事を改めて学んだ。


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