曇り空のバルセロナ、マヌメンタル闘牛場。サルドゥエンド牧場。闘牛士、ファン・セラーノ“フィニート・デ・コルドバ”、ホセ・トマス、フリアン・ロペス“エル・フリ”。
ソルはアンダナーダまで満席。ソル・イ・ソンブラ、ソンブラ、はアンダナーダが半分くらいの入りでほぼ満席に近い。10時に闘牛場に行ったらテンディドは売り切れの状態でダフ屋からソルのテンディド、フィラ3を1万で購入。去年より2,3千高い。ホセ・トマスとフリが出て去年インドゥルトしたフィニートの組み合わせだったからだろう。
フィニートの1頭目は、トリル(牛門)から出てくるときの勢いがない。ブルラデロを角で突かないのである程度頭が良い牛だ。しかし、首の振り方や走り方を見ると力がないように見える。ピカは、左肩の上に入る悪いものだった。バンデリージャを打つと牛が膝を着いた。この牛はバンデリージャを打ちにくいし、倒れるのでやりにくい。パセもやりにくいだろうと思っていたが、フィニートは、丁寧な仕事をした。
右手のパセを大きく牛を回して牛の動きを確認しながら繋いだ。パセの後、牛が倒れた。右手のパセは長く大きい。ナトゥラルも長く大きなパセを繋いだ。ダメだと思った牛をムレタでしっかり動かしたのはクルサードして牛を誘っているからだ。それとムレタの動かし方が良い。牛に飽きさせずにムレタを振るコツを分かっているからだろう。楽団がマノレーテのパソドブレを演奏していた。剣を代えて右手のパセを繋ぎパセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴り喝采が送られた。剣刺しは、角度が浅い。観客は耳を要求したがプレシデンテは耳を出さなかった。まぁ、耳ではないでしょう。
2頭目は、ベロニカを繋ぐが牛が変だ。ピカは反対側のピカドールに向かっていった。ピカは右側にはいる。次は、ちゃんと正規のピカドールの所に行って、左側に軽く入った。牛が悪くバンデリージャが打ちにくい。打ちにくいから早く終わらせようとして打ちに行くから余計何回も打たなければならないことになった。風が強いのでムレタに水をつけてファエナを始めた。
膝を折った右手のパセから始めて牛の動きを確認し、パセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴り沸く。右手の長く大きなパセを繋ぎ、パセ・デ・ペチョ。右肘が曲がっているのが気になるがパセ自体は良い。パソドブレが鳴る。ナトゥラルも長い大きなパセをした。左手の肘は曲がっていない。良いナトゥラルだ。最後のパセ・デ・ペチョの時にムレタを牛に踏まれた。剣を代えて良いところに刺した。観客は耳を要求。プレシデンテの前の人が立って見えなかったせいだろうが耳2枚出る。本当かなぁと思った。
ホセ・トマスは今年も凄いことをしている。1頭目は、ベロニカを繋ぐが動かない。その場所にたったままでベロニカを繋ぐ。牛がコッホ(ビッコ)になった。キーテはガオネラをして観客を沸かせた。ムレタでは、アレナの中央に立って牛を誘う。アジュダード・ポル・アルト(両手でムレタを支え高いパセ)でパセを繋ぎ、パセ・デ・ペチョ。「オーレ」が鳴る。ピカが入って動きが鈍くなった牛を丁寧にクルサードして誘って動かす。右手の大きなパセ、ナトゥラルも切れがある。牛を体の近くを通すのでホセ・トマスの体が揺れ、牛の返り血が服に付く。この牛をここまで動かすこと自体が凄い。角も足の直ぐ近くを通している。
剣を代えて、マノレティーナを繋ぐ。剣はスエルテ・ナトゥラルで1発で良いところに決めた。観客は、「トレロ」コールを叫んだ。耳2枚。ちょっと甘いような気がした。良い仕事をしたが耳2枚には?が付く。
2頭目は、1頭目よりも悪かった。マンソの牛。落ち着きがなくなかなか向かってこない。ピカは左肩前に強く入った。次は右肩に軽く入った。バンデリージャは非道いものだった。牛が悪いから仕方ないが。ムレタでは、ナトゥラルが手が高かった。でも次第に手が低くなった。それとパセをするときに牛が近くを通す。パセの途中で牛が止まっても動かない。そのまま待ってパセを繋ぐ。相変わらず凄いことやってます。牛が動かないから丁寧にクルサードする。剣はバホナッソだったので耳にはならなかったが良い闘牛だった。ホセ・トマスはバホナッソの剣を見てまるでピンチャソしたときと同じ表情をしていた。
フリの1頭目は、牛は良い出方をしたがやはり弱い。ベロニカ。ベロニカを膝を着いてした。ベロニカの時、膝が動いているのが偽物だ。その後、良いベロニカを繋ぎメディア・ベロニカ。観客が沸く。チクエリナの連続で馬に近づけて、チクエリナの外側の手を離すパセをして馬の前に牛を置いた。観客が沸く。バンデリージャも自分で打った。左、右、左と打つときの回りを変えて打っていた。ブリンディースは観客へ捧げられた。
膝を折ったパセから始め左足を軸にして右手のパセを繋ぐと「オーレ」が鳴り響いた。ナトゥラルをすると牛は膝を着いた。パセ・デ・ペチョをするとパソドブレが鳴った。左足を軸にして右手のパセを続けた。良いパセを繋いだ。ポンセが97年にサラマンカでやった右手のパセのコピーをした。体の左側後ろに牛を置き右手ムレタで大きく回しながら牛を通し、ムレタを尻の方まで振ってパセし、また同じように体の左後ろに牛を置き右手のパセを繰り返す。これを連続で3回やって観客を総立ちになった。でもこれは、ポンセのコピーなのであまり感心しない。剣はスエルテ・ナトゥラルで良いところに刺さった。文句なしの耳2枚。尻尾も要求したが当然でない。
2頭目は、バンデリージャを打つところまでだった。ムレタでは牛が悪すぎて良いところを見せれなかった。カポーテでは、例のロペシーナを3回やった。向かってこない牛に対してロペシーナをすること自体牛を分かってない証拠のように思う。写真を撮れるから良いけど牛に合わせて闘牛しないと良い闘牛士にはなれない。フリはならなくても良いけど。剣は良いところに刺したがそれだけ。
フリとフィニートが肩車されてプエルタ・グランデに行こうとしたがホセ・トマスが未だなのでフリがホセ・トマスに来るように誘ったが来なかった。カジェホンの中にいるホセ・トマスにカピタリスタ(担ぎ屋)のペドロが肩車させるように言っているが、がんとして言うことを聞かない。エンリケ・マルティン・アランスはいつものように無表情で立っている。2人のプエルタ・グランデが終わってから、ホセ・トマスはアレナの中に出てプレシデンテに挨拶した。
観客は凄い口笛を吹いてプエルタ・グランデをしなかった事に抗議したが、口笛の後には大きな喝采でホセ・トマスを向かえた。そして、「トレロ」コールまで再びホセ・トマスに向かって起きた。
ホセ・トマスは一昨年から続いていたバルセロナでも7回連続プエルタ・グランデの記録を更新することを自ら拒否して自分の足で闘牛場を後にした。何故、プエルタ・グランデを拒否したのか判らない。新聞にも載っていない。僕の想像だと、今日の闘牛に満足しなかったからだと思う。僕が観ていても耳2枚じゃないような気がした。本人が1番判っていることだろう。これは常人には判らない向こうの世界に行った人の価値観だろう。
「江夏は、アナウンサーを助けて当意即妙な話が出来なかった。江夏は勝負を決する一球について語りたかった。そのときピッチャーはどういう心理状態にあったのかバッターの狙い球は何だったのかを正確に伝えたかった。しかし、TVやラジオには、そういう余裕はなかった。彼はもともと能弁家ではない。勝手のわからない世界での葛藤が江夏のストレスになっただろうことは想像に難しくない。」
3月か4月の始めにホセリートが耳と切ったのに場内1周をしなかったことがあった。ホセ・トマス、ホセリートは江夏のように最高レベルのところで闘牛を観ているから満足しないとプエルタ・グランデをしないこともある得るのだと言うことを知った。これはかなり考えさせることだった。一つのショックだった。
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