バルタサル・イバンの良い牛

2001年5月21日、マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。(第1級闘牛場)

 小雨の降るラス・ベンタス闘牛場。大体満員。

 バルタサル・イバン牧場。見習い闘牛士、レジェス・メンドーサ、フリオ・ペドロ・サアベドラ、セルヒオ・アギラール。

 レジェス・メンドーサは、この日1番良かった。ブルラデロを突き、Avion(パセの時に、飛行機が旋回するときのように角を斜めにして通る牛)する良い牛。ピカは真ん中少し右に入った。キーテは、ガオネラ4回、ラルガを決めると「オーレ」と喝采がなった。脚が丈夫で気性も申し分がない牛だ。ムレタでは、アジュダード・ポル・アルトを繋ぎトゥリンチェラ2回すると、「オーレ」が続き拍手がなった。アレナの内側に牛を連れていきクルサード不足で牛を誘って右手のパセを繋いだ。左足を軸にして右足をパセの後に一歩引いてパセを繋げるリガールを続けた。手の低い長いパセは観客の気持ちを掴んだ。パセの後の、パセ・デ・ペチョの時に足を動かさないまま牛をムレタで誘い決めるところがマヌエル・カバジェーロの様でなかなか良い。

 クルサードしてナトゥラルも手の低い長いパセを繋ぐと「オーレ」が続いた。非常に良いムレタ捌きだ。右手のパセで背中を通すパセをしてハラハラさせた。ナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。パセ・デ・ペチョへのもって行き方が非常に良い。剣を代えて、マノレティーナを繋ぎファエナを締めくくった。剣が決まれば耳を切れる。が、なんとピンチャッソ6回。アビソが鳴る。コントラリアのカイーダで剣が刺さった。ファエナも牛も素晴らしかった。剣だけがダメだった。

 2頭目の牛でも良い仕事をした。だが、途中から牛が動かなくなった。それでも丁寧にクルサードを繰り返して牛をパセした。剣刺しが悪いのが玉に傷。1977年9月14日コルドバ生まれ。父がバンデリジェーロ、兄弟がノビジェーロという闘牛一家。一つ一つの技がしっかりしているので見応えがある。牛も判っている。剣さえ決まるようになれば良い闘牛士になるだろう。

 フリオ・ペドロ・サアベドラも良い牛を相手にした。反応が良い牛だった。パセの時に首を横に振るが、癖があるわけではなさそうだ。ピカは左に入り牛は馬を押してアレナ中まで押してって倒した。次のピカは左前に入った。離れると膝を着いた。ピカの刺し所が悪いようだ。セルヒオのキーテはメディア・ファロールを4回、ラルガで決めた。良いパセだがあまり沸かない。牛は観客に捧げられた。

 右手の膝を折ったパセから始めトゥリンチェラ。真ん中へ行き、タブラ付近の牛を誘った。牛は右手のムレタに誘われて長い距離を走った。良い呼び方だった。右手を繋ぎパセ・デ・ペチョ。沸く。がちょっとパセに味がない。ナトゥラルは手に低い長目のパセを見せるがパセ・デ・ペチョは体の外から外に通すものだった。良くない。両足を揃えたパセが良かった。剣刺しはバホナッソのメディア。牛の頭が低いのに剣刺しに行った。頭を上げてからじゃないとコヒーダされるか、ちゃんと刺せない。頭上げれずにまたピンチャソ。最後はバホナッソ。デスカベジョ2回。牛退場の時、場内1周を観客は望んだが叶わなかった。良い牛だった。

 今日1番注目していたセルヒオ・アギラールにはガッカリした。ムレタが全くダメ。ちょっと悲しくなった。カポーテはバリエーションもあり技をもう少し磨けばもっと良くなる。バンデリージャも自分で打つがまあまあ。キエブロは非常に良かった。が、如何せんムレタ捌きが・・・。クルサードもしている、でも、牛をムレタでパセするときの誘い方は通常牛にムレタを触るくらいに近づけないと牛が動かない方が多い。時にはわざとムレタを牛に触るように振って牛を動かしている闘牛士もいる。でも、セルヒオは、ムレタを牛に見せるだけで近づけないし触らない。あれじゃよっぽどの技術がなければ牛は動かないだろう。パセの時のムレタ捌きも面白くない。ただ単に下手としか思えないようなムレタ捌きだ。非常に上のレベルで闘牛をしようとしているのかも知れないがガッカリした闘牛だ。

 去年の4月9日に膝の腱を切って6ヶ月の重傷をおった。アメリカのスポーツ医学を頼ってヒューストンまで行って手術してようやく治ったのだ。彼も父親が闘牛。マドリード闘牛学校出身。かなりガッカリした内容だった。

 今日はサン・イシドロで1番牛が良かった。脚がコッホになった牛は1頭だけだった。反応が良く力のある目の良い牛が多かった。今日はバルタサル・イバン牧場が賞賛される牛を多く出した。ノビジェーロでは、レジェス・メンドーサだけが目立っていた。


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