2000年5月20日、ヘレスの結果

ホセリート、ホセ・トマス、プエルタ・グランデ!
ホセ・トマスがセンセーショナルなファエナ!

por 斎藤祐司

 曇り空のヘレス闘牛場。シェリー酒(ヘレス)の本場らしくバレラのカジェホン側には、Tio Pepe の文字が書かれている。ヌニョス・デル・クビジョ牧場。マンサナレス、ホセリート、ホセ・トマス。ほぼ満員。ソルのテンディド8、13列目で下山敦弘さんと観戦す。僕はホセリートのTシャツを着て観た。

 ホセ・マリア・マンサナレスは、そんなに良くなかったが耳1枚取った。1頭目はどうでも良かったので、2頭目で耳を切ったことを書く。ベロニカを繋ぎメディア・ベロニカを決める。これは良かった。ブリンディスは、先日ヘレスで引退したラファエル・デ・ラ・パウラに捧げた。観客は総立ちになってパウラ拍手を送った。

 右手に持ったムレタで右側から誘うと牛が動き出した。これはちょっとビックリした。その後は下らないパセを続けた。右手のパセも、パセ・デ・ペチョも、ナトゥラルも全部ピコ(ムレタの先端でのパセ)。牛を体から如何に遠くを通すかを考えたパセ。皮肉を言えば考え抜いたパセ。安全なパセだ。アンダルシアでは、パセを繋げるとお客さんは喜ぶ。それだけだ。スエルテ・ナトゥラルでバホナッソ。パセも良くなかったし剣も良くなかったのに耳1枚。パウラにブリンディスしてなかったらこんなに盛り上がらなかっただろう。マンサナレスの社交的、外交的、戦略が効いた。

 ホセリートは良くなった。本当に良い。1頭目でもペティシオンが起きたが2頭目で復活した姿をヘレスの人々の前に見せた。パセで前脚を悪くした牛は、ピカドールの乗った馬をひっくり返したときに腰を痛めて交換になる。代わった牛は良い牛だった。膝を折ったベロニカを繋ぐとオーレがなった。ピカは左側に入った。キーテはチクエリナを繋ぎセルペンティーナ(片手で回すパセ)を決めると観客は沸いた。もう観客はホセリートのものだった。

 ムレタでは、右手のパセから始め、体に隠すようにムレタを振ると、オーレはより一層大きくなった。右手の腹を突き出すようにした手の低いゆっくりしたパセを繋ぐと闘牛場は興奮に包まれた。オーレがこだまする。右手でパセをした後、左足を一歩引いたパセを連続してパセ・デ・ペチョを決めると観客は総立ちになった。それから手の低いナトゥラルを繋いだ。ナトゥラルでは途中から牛が闘牛士を探しだした。

 物凄い剣をスエルテ・ナトゥラルで決めると観客は立ち上がって声を上げた。物凄い剣だった。牛は直ぐ倒れた。耳2枚。場内一周するホセリートが下山さんに気づいて微笑んで行った。ホセリ−トは凄い。完全に復活した。

 ホセ・トマスは、1頭目で耳1枚切った後、2頭目でセンセーショナルなファエナをした。牛はカポーテについて行くが長く走らない。それを上手にパセしてアレナの中央にパセでもって行った。キーテは、チクエリナ、メディア・ファロール、チクエリナ、メディア・ファロールと繋げ牛の前ではカポーテの裏側で膝を折ってチクエリナのようなメディア・ベロニカのようなパセを決めて観客を沸かせた。

 ムレタでは、アレナの中央で足を揃えた両手のパセから始め、右手のパセを繋いだ。オーレが続く。牛を右手のパセでくるくる手の低い長いパセで繋ぐ。クルサードは、2本の角を越えた位置に立って左右のパセの時に誘っていた。2回コヒーダされたが顔色1つ代えずにその前以上にクルサードして牛を誘っていた。コヒーダの度に場内は騒然となったがそれまで以上に観客はホセ・トマスのファエナに引き込まれていった。クルサードをしつこいくらいにやって観客を恐怖させた。

 彼は怖くないのだろうか。コヒーダされた後、オーレはより大きく叫ばれた。闘牛場は1つになっている。ホセ・トマスのファエナに恐怖しながら酔っているのだ。剣を代えて、体ギリギリを通すマノレティーナをすると恐怖の声とオーレの声が混ざり合って興奮は頂点に達した。剣はちょっとバホナソ気味だったが耳2枚。観客は尻尾も要求していた。剣がちゃんと決まったら尻尾も出ていただろう。

 今日は、ホセリートに興奮して来た甲斐があったと思ったが、最後のホセ・トマスは物凄かった。ため息が出てしまうくらい凄い。1人だけ次元が違う闘牛をしている。あれだけ上手いと死ぬんじゃないかとは、あまり思わない。でも、やってることが超危険。並みの闘牛士なら立てない場所に立って牛を誘い、しかも手の低い長いパセを繋ぐ。あの落ち着きは何なんだ。異常なくらいだ。しかもこれだけのことを、97年からずっと続けているのがまた信じられないことだ。闘牛の歴史上最高の闘牛士がホセ・トマスだ。これは間違いのないことだ。今、彼を観なかったら闘牛を観たことにはならない。


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