99年6月1日、ラス・ベンタス(マドリード)の結果

ペピン・リリア場内3周!観客の耳要求をプレシデンテ、2度認めず!
ホセ・トマス、コヒーダされる。

por 斎藤祐司

 

 牛、コンデ・デ・ラ・コルテ。闘牛士、エル・タト、ペピン・リリア、ホセ・トマス。

 今日の午後に強い雨が降ったが19時前にあがる。曇り空だが日が射している中で闘牛が始まった。今日は風が強くやりにくいコンディションだった。また出場が危ぶまれていた、ホセ・トマスが出てきた。

 エル・タトは、1頭目の牛で何もしなかった。牛が悪いのは判るがクルサードして牛を1度も誘わなかった。牛の前でムレタを左右に振っているだけだった。4頭目では牛を動かしパセを繋いだが、クルサードしないパセに観客は反応しなかった。パセも体の遠くへ遠くへやるパセだ。これはいつものことだ。彼に対しては何の関心も示さなかった。

 ペピンは、ホセ・トマスから今日の主役の座を奪ってしまった。2頭目の時に、良いファエナをして「オーレ」をならし続けた。ナトゥラルでは両足をくっつけたパセを見せたが、パセ・デ・ペチョはどうしても脇が開いている。テンディド7の様にうるさい客はそういうところを批判するだろうが、剣刺しも良かったし、その場にいて見ていた者の立場としては、観客の耳の要求に応えるべきだと思った。場内二周の後、プレシデンテに対する強い抗議が口笛とブーイングのよって行われた。

 5頭目の牛はもっと良かった。膝を折ったパセから初めてパセを繋ぐと「オーレ」がなり、パセ・デ・ペチョをすると歓声と喝采がなった。風でムレタがヒラヒラじゃなく、旗の様になびいていた。こんな中で牛のまえ20cmの所に立ってクルサードして牛を誘い、ナトゥラルを繋ぎムレタを使って牛を動かして左右の角の間に自分の体を入れてクルサードさせた。喝采がなる。パセ・デ・ペチョの後に、牛が振り向くと足を一歩も動かさずにムレタを左手に抱えて見栄を切ると、観客は立ち上がって喝采を送った。剣も良いところに入った。牛はなかなか倒れずに、かといって止まらず頭を上げてままだったので、デスカベジョは刺せなかった。アビソ(警告のラッパ)が2回なったが、牛は未だ倒れなかった。デスカベジョも刺されなかった。3回目のアビソがなる前に牛が倒れた。観客は耳を要求した。白いハンカチを出さないプレシデンテに多くの口笛が鳴ったが、ついに白いハンカチは出なかった。ペピンは、観客の喝采に応え挨拶をして下がろうとしたが、観客が場内一周をするように仕向けてようやく始めた。さぞガッカリしたことだろう。本当に耳を何故出さなかったのか判らない。

 ホセ・トマスは、怪我の後の出場と言うこともあって良いところを見せることは出来なかった。3頭目に時は兎に角、風が強くムレタを思うように扱えない場面が何回もあった。牛も闘牛をするには向かなかった。6頭目最後の牛は、話にならない牛だった。どんな闘牛士が出てもこの牛を扱えないだろう。ナトゥラルから始めたファエナは、牛がホセ・トマスの体、目がけて突進して長い間牛の頭の上にいた。もう駄目かと思った位だ。寿美さんは終わった後、「1時間位あったような気がする」と、言っていた。いやそれは大袈裟だけど本当に長い間牛の上にいたような気がしたが、帰って来てビデオを観たら牛の上にいたのは約7,8秒だった。タトの様に牛から逃げていればこんなコヒーダには遭わない。でも真面目に牛の前でクルサードしているから危ない目に逢うのだ。今日はホセ・トマスの良いファエナが見れなかったけど仕様がないことだ。彼は神じゃない。人間だ。そして偉大な闘牛士なのだ。

 今日は、ペピン・リリアに魅了された日だ。プレシデンテの判断は闘牛ファンの間で議論されることだろう。賛成派反対派の根拠とするものを色々考えて見るが、僕の気持ちは、耳を出すべきだったと思う。プエルタ・グランデでも良かったとも思うが、冷静に考えるとそれには少し足りなかったと思う。それが感想だが、ペピンはあれじゃ闘牛士としてのやる気がなくなると思う。観客の多くが耳を出すように要求したのだから・・・。

 ペピン、くさるな。観客は君の味方だ。場内3周より、耳1枚の方が欲しいでしょうが、この事は観客は忘れない。秋か来年のサン・イシドロ祭の時も今日の様に観客を沸かせると、君の存在を無視できなくなって来るのだから。ペピン!今日はホセ・トマスよりもずっとずっと良い闘牛をやって観客を喜ばせたのだから・・・。今日は君、ペピンに乾杯だ!


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