エル・カリファは非道い牛を相手に、命を賭けて技を試し男を磨いた。涙が出そうなくらい感動した!

2005年6月1日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 2005年サン・イシドロ第22日目。曇りのち雨のち曇り。風が吹いていた。パルティード・デ・レシナ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、パブロ・ロメロ牧場)。ソブレロは、2頭(1頭目と3頭目の牛の代わり)は、プエルト・フロンティノ牧場、1頭(5頭目の代わり)は、ホセ・エスコラル牧場。闘牛士、マノロ・サンチェス、ビクトル・プエルト、エル・カリファ。プレシデンテ、ホセ・マヌエル・サンチェス・ガルシア。今年13回目のノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド5にてTさんと一緒に観戦する。19時開始、21時45分頃終了。

 マノロ・サンチェスは、あーあっ。終わったなぁもう。92年見習い闘牛士時代のプエルタ・グランデの面影は、見る影もない。これで何年連続してサン・イシドロでくだらない闘牛をしたの?

 ビクトル・プエルトは、もう少しちゃんとやると思っていたけどガッカリだ。5頭目の牛は非道く交換になった。代わった牛は物凄いマンソ。でもさ、カポーテ持って牛を誘うときは同じ場所、同じ角度で何度誘っても牛が動くわけないじゃない。それを何度も繰り返すから、牛は何分もその場所に立ったまま。この牛1頭で30分もかかった。観客は相当だれていた。やる気がないのか、そういう事を知らないのか、疲れるだけよそんな事していても・・・。

 エル・カリファは、どうしてこんなに感動するのだろう。それは2回のプエルタ・グランデを観ているからではない。今のカリファが命を賭けて牛に向かって行くからだ。同じ非道い牛でもビクトル・プエルトは、自分を見せようとしているが、良いパセを牛から引き出そうとはしていない。カリファは、耳を取れないような牛でも、この牛から何とか良いパセを引き出そうと命を賭けている。そこが大きな違いであり、全然違うところだ。そういうことに努力を惜しまない。結果ではなく、良いパセを何とか引き出そうと命を賭けている姿が見えるから感動するのだ。こんな非道い牛にも命が賭けれる。その彼の意気込みに、その姿の純粋さに感動するのだ。

 3頭目の牛は非道かった。観客が騒いでもプレシデンテは代えようとしない。バンデリージャの時に牛が転びようやく交換になる。代わった牛も非道かった。ベロニカの時から返りが早く左角は短かった。ピカが右後ろの2回入った。何故左側を刺さないのだろうと疑問に思った。左角の短さを矯正するならそうするはずだが、ピカドールが馬鹿なだけ?2回目のピカで牛が膝を着いた。ファエナはデレチャッソから始めたが3回目のパセで牛が膝を着いた。パセ・デ・ペチョで拍手がなった。離れると風が吹きムレタがなびいている。

 右角のパセでこの動きじゃ左ならもっと危ないだろうと思った。それからデレチャッソを4回繋ぎ牛が止まった。クルサードし直して2回繋ぐとブスカンドした。おまけに牛の後ろ脚がカリファの足に引っかかり転びそうになる。それからデレチャッソを2回繋ぎパセ・デ・ペチョで拍手がなる。離れデレチャッソを4回繋ぎパセ・デ・ペチョ。牛が膝を着く。今度はナトゥラル。2回繋ぎ、クルサードし直して4回繋いで牛が止まる。またクルサードし直して2回繋ぎパセ・デ・ペチョでコヒーダされる。角が腹に刺さったかと思ったが大丈夫だった。それでも、ナトゥラルをする。この根性には頭が下がる。4回繋ぎパセ・デ・ペチョ。こっちもブスカンドする。右も左もブスカンド。やりようがない。

 パセをしても手の引くながパセなど出来るような牛ではない。また、デレチャッソで牛膝を着く。闘牛士がちゃんとやろうとしているのに牛は全然ダメ!右がダメなのでまた左。ナトゥラルをするがもう牛は動かない。パセがカリファの体の前で止まる。非常に危ない状態だ。観客からは何度も、「マタロ・ジャ」の声が飛ぶ。それでも牛から良いパセを引き出そうとレマテの後でまた牛に向かっていく。こんなブスカンドする牛は危ないからさっさと殺せばいいのに、命を賭けて牛に向かう。自分を良く見せようとしているのではない。この牛から今の自分は良いパセをどれだけ出せるのかを試しているようなのだ。観客は恐怖を感じているのに、カリファは何かに取り憑かれたようにパセを繰り返す。余りの凄さにジーンとしてしまった。涙ぐんでしまった。コヒーダされても、何度も危ない目にあっても牛に向かっていく。自分の技術を試すように・・・。感動的だった。非常に感動的だった。剣はスエルテ・コントラリアで入る。牛が退場した後、観客喝采に応えて挨拶をした。当然だ。本当に素晴らしかった。

 6頭目の牛も非道かった。3頭目の牛以上にマンソでコンプリカドでペリグロ。パセの後の牛の返りが早い。頭が高くパセをしても下がらないから危ない。抜けるようなパセになる。だから、剣刺しの時はムレタを振っても頭がちゃんと下がらず直ぐに上に振るので角や頭がそのつど腕に当たって剣が刺せない。5回ピンチャッソ。でも、観客はそれを判っているから口笛は吹かれない。デスカベジョをすればいいのにと思っていたが、それでも剣刺しに行く。そして、見事に良いところに剣を刺した。カイーダやバホナッソで逃げない。ここにカリファという男の情熱を感じてまた熱くなった。格好良い男だぜ!ホセ・パチェコ“エル・カリファ”は!

 牛は顔が良いが、どうしようもないほど非道かった。みんなグアポだから出てくると拍手がなったりするけど、扱いにくい闘牛のしようがない牛ばかりだった。その中で、カリファは本当に良くやった。去年、今年と非道い牛に当たって結果が出せなかったけど、闘牛士としての存在感を充分感じることが出来た。今日の闘牛をありがとう。僕は、本当に感動した。


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