去年と同じ流血のアベジャン、耳1枚!ホセ・トマス歴史的失態!口笛、罵声、を浴び、座布団の雨が降った!

2001年6月1日、マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。(第1級闘牛場) 

 曇り空のラス・ベンタス闘牛場。ノー・アイ・ビジェテ。バレラにファン・カルロス国王が座っていた。隣は、ガナデロのサムエル・フロレス。他には、アトレティコ・デ・マドリードのプレシデンテ、ヘスス・ヒルも来ていた。

 アドルフォ・マルティン牧場。闘牛士、ホセリート、ホセ・トマス、ミゲル・アベジャン。

 曇っているが蒸し暑い。水やコーラ、ビールが良く売れる。変な天気。

 ホセリートもあまり良くなかった。が、牛はそれ以上に悪かった。初めの牛は、角が広く開き上を向いていた。ベロニカを繋ぐと尻を着いた。バランスが悪いのだ。左後ろ脚がコッホだ。シン・パラール気味の牛だが良くない。キーテはベロニカ3回、メディア・ベロニカ。カポーテを広く振って牛を通していた。良くない。ホセ・トマスのキーテはチクエリナ3回ラルガ。足を一歩引くチクエリナだった。これでも「オーレ」は出たが。やり方が違うよなぁ。牛は国王に捧げられた。

 右の膝を折ったパセから内へ。パセの後の牛の返りが早い。パセ・デ・ペチョ。ムレタを角で払われる。危ない牛だ。ナトゥラルを繋いだが面白いパセにはならなかった。剣を代えて、ピンチャソ1回、その後に肩より前に角度が深く刺さった。

 2頭目は、膝を折ったベロニカを繋ぐと「オーレ」がなった。これもシン・パラール気味の牛だったがピカの刺し所が悪く牛がダメになった。ムレタではクルサードしても牛が動かなかった。後半は、牛が止まらなくなりパセがやりにくい。牛が止まる距離まで離れないとダメだ。離れてクルサードしても牛から良いパセを引き出せなくなっていた。ピンチャソ1回。刺しに行くとき右前脚がちゃんとなっていないのに刺しに行って口笛が鳴る。次はバホナッソで決まる。当然口笛が鳴る。

 一体ホセ・トマスはどうしたんだろう?耳を取るとか取らないとかじゃない。やってることが違うじゃない、と言いたい。1頭目のキーテでベロニカをゆっくり繋ぎメディア・ベロニカで締めた。「オーレ」がなった。だがどうと言うことがない普通の1流のパセだ。その後、アベジャンがキーテをした。ベロニカを2回ラルガ、セルピエンティーナ。ホセ・トマスより「オーレ」の声が大きい。アベジャンのパセの方が体スレスレを角が通って行った。牛は、ファン・カルロス国王に捧げられた。

 右手で膝を折ったパセから中へ。右手のパセを繋ぐがクルサードしていない。どうして。信じられないがやってないのだ。段々クルサードしてパセを繋ぐが良いパセにならない。牛の後ろ脚が悪のも判るが・・・。ナトゥラルも良くない。剣はカイーダだった。

 これで終わっていたら座布団は投げられなかっただろう。2頭目の牛。まともなベロニカが出来ない牛。ピカは少し左後ろに入った。キーテは、ガオネラを繋ぎラルガ。「オーレ」がなる。ムレタは、右手から中へ。右手のパセを繋ぐが良いパセにならない。ナトゥラルの時に「オーレ」がなる。でも続かない。とても耳が出るようなファエナじゃなかった。そして、剣はピンチャソ4回。メディア・エストカーダがカイーダに入った。口笛が鳴る。1回目のアビソが鳴った。デスカベジョ3回失敗。2回目のアビソが鳴った。デスカベジョは刺すと言うより、突っつくようなやる気のなさ。後2分しかないのにバンデリジェーロたちがカポーテを振っている。もう1度だけデスカベジョを失敗。後はただ牛を見ているだけだった。3回目のアビソが鳴ると一斉に口笛、罵声、ブーイングが起こった。牛退場後は座布団まで空から降ってきた。あれじゃー怒るでしょう。

 ミゲル・アベジャンだけが、喝采を浴びて退場した。去年と同じ白い闘牛服だった。出てきた牛はタブラを一突き。ベロニカにならない難しい牛。ピカは真ん中やや後ろに入る。ホセリートにキーテは、ナバラ2回、ラルガ。拍手。アベジャンのキーテは、チクエリナ3回メディア・ベロニカ。「オーレ」がなり、喝采を受ける。牛はファン・カルロス国王に捧げられた。

 右手の膝を折ったパセから始め中央へ。距離を取って牛を右手で誘う。牛が動き出しパセが繋がった。と、思ったらコヒーダ。右足太股後ろを刺される。靴を脱いでファエナを続けた。右手をリガールすると「オーレ」が繋がった。パセ・デ・ペチョも出来るだけ体の近くを通そうとしている。ナトゥラルもクルサードして手に低い長いパセを繋いで「オーレ」をならせた。剣はスエルテ・ナトゥラルでカイーダだったが牛が直ぐに倒れ、観客の要求に応えてプレシデンテは耳1枚を出した。場内一週後アレナを通って医務室に向かった。

 最後の牛でもやっぱり出てきた。去年を思い出した。でも、プエルタ・グランデの再現は出来なかった。ベロニカで「オーレ」が続かない。ピカを刺す前にアベジャン以外の2人の闘牛士もアレナに入ってくるがホセ・トマスが出てくると場内のあちこちから一斉に口笛とブーイングがなった。ピカの後、牛がホセ・トマスの方に行きカポーテを振ると、観客はまた口笛とブーイングがなった。

 ファエナは、しっかりクルサードもしたしパセも繋いだが牛が悪すぎた。これ以上のファエナにはならなかっただろう。剣も決まったが耳にはならない。観客の喝采に応えて挨拶をした。アベジャンが1番良い仕事をした。

 ホセリートが退場の時、口笛が鳴った。ホセ・トマスが退場の時に大きな口笛、ブーイング、罵声、が鳴り座布団の雨が降った。97年から続けてラス・ベンタスの観客を熱狂させ続けた史上最高の闘牛士ホセ・トマスは一夜にしてラス・ベンタス闘牛場のアフィショナードの信頼を失った。観客は口々にホセ・トマスを罵倒する言葉を吐いた。「ウン・チューロ」 「ケ・ペタルド」 「カブロン」などなど。

 観客は真っ赤な顔をして退場していく昨日までの「ヒーロー」を罵倒し続けた。ラス・ベンタスでアビソ3回というのは何回か見たことがある。闘牛士が下手でなる場合が多いが、ラファエル・デ・パウラの何もしないで(剣刺しにも行かず)なった場合。そしてアビソ3回で涙が出そうになって感動したものもある。92年のフェルナンド・セペダのそれ。剣刺しを15回か20回くらいひたすら繰り返しデスカベジョを1回もやらなかった。フェルナンドは意地になって剣刺しだけを繰り返した。アビソが鳴ってもバンデリジェーロが剣を抜いて剣刺しを繰り返した。俺はあのときフェルナンドに男の馬鹿さ加減を感じると共にそう言う純粋さに胸が熱くなったのを覚えている。

 しかし、今日のホセ・トマスのアビソ3回はやる気のなさがデスカベジョに出ていてとても醜かった。あれは観客が怒るのは無理がない。過去にラス・ベンタスでプエルタ・グランデを何回もやっている闘牛士がアビソ3回なんて聞いたことがない。勿論、ホセリートもセサル・リンコンもアビソ3回なんてない。これだけ絶頂期にある闘牛士がアビソ3回というのは歴史的な事かも知れない。

 ホセ・トマスも人間です。こんな事もあります。でも、これからどうなるのだろう?


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