アディオス・カガンチョ!モウラ、メンドーサ、耳1枚。

2002年5月18日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 快晴のマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、フロレス・タサラ牧場。騎馬闘牛士、ジョアオ・モウラ、パブロ・エルモソ・デ・メンドーサ。マノ・ア・マノ。ノー・アイ・ビジェテ。テンディド6、バッホにて観る。

 断っておかなければならない。僕は、騎馬闘牛を真剣に観て感動したことがない。だから観戦記を書くのにはふさわしくないのだ。にもかかわらず今日は書いておきたい。

 ジョアオ・モウラの馬はメンドーサの馬に比べて調教が足りない。彼自身の騎乗技術についてもそう思う。得意技ないことと、騎乗技術、ひいては調教技術も足りないような気がする。これは、あくまでメンドーサに比べてと言うことだ。剣刺しはまあまあだ。耳も剣だけで切ったようなもの。

 パブロ・エルモソ・デ・メンドーサ。言わずと知れたNO1騎馬闘牛士。名馬“カガンチョ”は4月16日に引退したはずなのに、今日の6頭目のバンデリージャの時に出てきた。カガンチョが出てきただけで拍手が起きた。キエブロでバンデリージャを打ち、牛との距離がギリギリのまま、牛を引き連れるようにして逃げ、タブラが直ぐ近くになるので牛にフェイントをして、今来た反対の方向に牛を交わした。牛とタブラの間は2mもなかっただろう。場内が総立ちなって喝采を送る。カガンチョだけは次元が違う馬だ。2本目のバンデリージャもキエブロで打って、牛との距離がギリギリのまま、牛を引き連れるようにして逃げる。また同じ事するんだろうけどどうやって交わすんだろう、もうタブラと牛の距離は殆どないのにと、思ってみていた。そしたら、ゆっくりと逃げて牛との距離もギリギリ、牛とタブラの距離も1mあるかないか。そんな距離、動きがゆっくりの中でまるでスローモーションで観ているようにゆっくりと、牛とタブラの間の距離が1m位しかないところを今来た反対の方向にフェイントを入れて牛を交わしていった。観客は一斉に総立ちになって大喝采を送る。パブロ・エルモ ソ・デ・メンドーサは、カガンチョから降り両手を広げて観客の喝采を受けた。その中、カガンチョがゆっくりと馬が出てきた門の方に歩いてゆく。喝采がより大きく、名馬カガンチョに送られた。

 6頭目剣刺しが終わってからパブロ・エルモソ・デ・メンドーサが、カガンチョを連れて出てきた。そして、カガンチョのたてがみを切って、これで引退と言うことを表して、場内1周を始めた。総立ちになった観客は惜しみなく喝采を送り、名馬“カガンチョ”に別れを告げた。アディオス・カガンチョ!おそらくもうこんな馬には出会うことはないだろう。名騎手に名馬あり、名騎馬闘牛士に名馬あり。まさに感動的な名馬だった。

 パブロ・エルモソ・デ・メンドーサが持っていた馬には、カガンチョの他に、ガジョ、チクエロ、などがいた。これらは、昔の有名闘牛士の名前から取っている。


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