2000年6月18日、トレドの結果

ホセ・トマス、モランテ、耳1枚。牛が悪い

por 斎藤祐司

 快晴のトレド。グアダレスト牧場。ホセリート、ホセ・トマス、モランテ・デ・ラ・プエブラ。ほぼ満員。

 ホセリートは2頭目で良いところを見せた。1頭目は、ベロニカでゆっくりしたパセしかできない力のない牛だった。パセ後、コッホになる。ピカは、右に入った。キーテは、チクエリナ、メディア・ファロール、チクエリナ、メディア・ファロール、ラルガと繋げた良いものだったが、牛が膝を着いて口笛が鳴る。

 ムレタでも牛は何度も膝を着いた。ホセリートは左右のパセをしたが牛の力がなく良いパセにならない。それでも真面目にパセを繋いでいた。牛はまるでダメだった。手拍子がなり剣を代え、スエルテ・ナトゥラルでバホナッソ。

 2頭目は、出てきてベロニカを繋ぐと右後ろ脚が悪くなって交換になった。牛を引っ込めるのに10分くらいかかった。牛を去勢牛で囲んで戻すのだが、人の姿を見せないようにするのがセオリなのに人が牛に見えても平気でやっている。田舎の闘牛場にありがちなことだがあまりにも牛を知らなさすぎる。結局牛を引っ込めさせたのは、ホセリートのバンデリジェーロのピリだった。

 代わって出てきた牛は、頭の高く尻の小さい牛だった。ブルラデラは突かなかった。足を止めたベロニカが出来なかった。パセの後に前脚が悪くなる。こういう牛はパセの時に首を振ってくるので難しい。また、動きが判りづらいので非常にやりにくい。でも、ホセリートなら牛をよく知っているので大丈夫だと思った。

 ムレタでは、膝を折ったパセから中央へ。ナトゥラルを繋ぎパセ・デ・ペチョ。右手を繋ぎパセ・デ・ペチョ。牛をマンダールしている。右手で背中を反り腹を突きだしたパセをする。オーレ。パセ・デ・ペチョ。パセの後に牛が膝を着いても良くここまで牛からパセを引き出している。ナトゥラルでは牛を一回転させるパセをした。オーレ。パセ・デ・ペチョ、トゥリンチェラ。右手でモリネーテ、トゥリンチェラを織り交ぜて剣を代えた。

 牛の持っている力を充分出してしまったので牛はもうくたくただった。弱気になった牛は、タブラのくっついた。しゃがみそうになったので前脚が揃っていなかったが刺しにいってピンチャソ。口笛が鳴る。野次が飛ぶ。もっと内側で剣を刺せといっているようだ。反対側なので聞き取れない。仕方なしに白線の辺りに牛を連れてくるが牛は落ち着かなくまたタブラにくっついた。ホセリートは、観ろ出来ないじゃないかという仕草をする。

 またスエルテ・コントラリアでピンチャソ。その後バホナッソで決まる。口笛が鳴った。1回で剣が決まっていれば耳1枚だったろう。それにしても、変な野次を言う。牛を全然判ってない奴は知ったかぶりして野次飛ばすな。ホセリートがあまりにも可哀想だ。TVでサン・イシドロ中継を観て野次の飛ばし方だけ覚えても中身のない奴の野次は闘牛を滅茶苦茶にする。ラス・ベンタスの観客は時々変なこともするが基本的には闘牛を良く判っている人達の野次だ。それはそうだ。年間60回以上闘牛を開催しているのだから。これだけ多く開催されているところは何処にもない。もっと、勉強しろよ。

 ホセ・トマスは、2頭目で耳を切った。1頭目は牛が動かなかった。2頭目も良い牛ではなかった。ベロニカで牛が膝を着いて向かってくるのをカポーテを振ってベロニカを繋ぐこと2回。こんな事出来ないよ他の闘牛士は。ベロニカでオーレがなる。ピカは左に入った。右前脚が悪くなる。

 ムレタでは、右手の長いパセを繋ぎパセ・デ・ペチョ。ナトゥラルでも長いパセを繋ぎパセ・デ・ペチョ。オーレ。右手のパセをするときに左手を挙げてパセを繋ぐ。最近こういうパセを良くする。マノレティーナ気味のパセをクルサードして繋ぎパセ・デ・ペチョ2回。剣を代え、マノレティーナを繋ぎオーレがなる。スエルテ・コントラリアでバホナッソ。耳1枚。

 ホセ・トマスならこの牛でも耳は取れると思っていた。凄い。ここまで牛を動かすことが。自分の技もちゃんと出しているし。

 モランテ・デ・ラ・プエブラは、今日1番良かった。彼の顎を引いた背中を反ったパセは今1番美しい。1頭目はろくな牛じゃなかった。2頭目は今日1番良い牛だった。ブルラデラを突かなかった。ベロニカを繋ぐとオーレがなった。モランテのベロニカは美しい。ピカは、左に入った。

 ムレタでは、右手と繋ぎ中央へ。牛を誘い引いてくるときの姿勢と形が本当に綺麗だ。ナトゥラルも腰を回すようなパセをする。物凄い回し方をしてパセをした。オーレがなる。牛も良く動いた。闘牛場が1番盛り上がった。モランテのトレド初登場は非常に良い印象を与えた。

 剣を代え、中央に牛を置き、レシビエンドを試みること2回。牛は向かってこなかった。ボラピエに代えれば剣はちゃんと入っていただろう。が、再びレシビエンドを試みた。牛はようやく向かってきたが剣は半分しか刺さらなかった。耳1枚。剣がちゃんと刺さっていたら耳2枚出ていた。あそこでレシビエンドをすると言うことがモランテの向上心の現れだ。これで良いというように満足していてはそれだけの闘牛士で終わる。彼の才能を認めているから、ホセリートもホセ・トマスも一緒に出場したのだ。

 君はセビージャだけの闘牛士じゃない。スペインを代表する闘牛士だ。未だ、21歳。始めてみたときは10代だった。良い闘牛士になった。これかもっと良い闘牛士になっていける器だ。その為に牛のことをもっと勉強して欲しい。そうすれば頂点を極められる闘牛士になる。

 最後の牛が出てきてムレタ前に米ちゃんが今日1番の牛、と言った。僕は違うと言ったが結果は1番の牛だった。自分の見る目より米ちゃんの目の方がこの時は勝った。偉いぞ米ちゃん。闘牛ってそうやって目を肥やして行けばドンドン面白くなって来るんだから。

 闘牛士が退場の時に、ホセリートに口笛が鳴った。非道いもんだ。あの最後の剣刺しの所だ。判ってないよあんた達。無理もないよね、年間10回も闘牛やらないんだからここは。今日のホセ・トマスは、パセの時に手が高かった。牛のせいだと思うけど。モランテは手の低い長いパセを繋いだ。あれで牛がもっと良かったテンプラールになっていただろう。


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