非常に難しい牛で良いファエナをしたウセダ・レアル、場内1周。

2002年5月16日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 曇り空だが蒸し暑い、時々風が吹くマドリード、ラス・ベンタス闘牛場。牛、2,3,5頭目アランス・デ・ロブレス牧場、1,4,6頭目ガビラ牧場。闘牛士、ビセンテ・バレラ、ウセダ・レアル、アルフォンソ・ロメロ。満員の入り。テンディド6、バッホにて三木田さん、Mさんと一緒に観る。

 ビセンテ・バレラは、今一だった。4頭目で牛の距離の取り方、クルサードする場所を間違えていた。結局それが全てだったような気がする。右手にムレタを持って牛の左角側からクルサードしようと4mくらいまで近づくが、そこはもう、牛が誘うと動く位置だった。だから、結果的にはクルサードせずに、牛との距離も判らずに闘牛をやっていたことになる。約1年間闘牛から遠ざかっていたために、未だ感覚が戻っていないのだろうか?まっそんな言い訳は通用しないのがサン・イシドロ祭。

 今年から、アポデラードが、ロサノから、フスト・オヘダに替わった。クアドリージャも全て替わった。彼を充分サポートする体勢は崩れたと言っていい。負傷で1年間闘牛から遠ざかったことによって環境は大きく変わった。4頭目の牛の剣刺しでピンチャソ1回、コントラリアで決まる。デスカベジョ6回。アビソ1回。口笛と罵声が飛んだ。こんな闘牛士じゃないのに今年は全然さえない。罵声も期待の裏返しだ。もう少し何とかしろよビセンテ。

 ウセダ・レアルは5頭目の牛でプロの技を見せた。出てきていきなりタブラを越える牛。こんな牛は良くないに決まっている。案の定ダメだった。ベロニカで前後の脚を痛めた。牛は観客に捧げられた。頭の高い牛でムレタが何度も角にはらわれた。パセの時に飛ぶ。ムレタとの距離が近いと首を振る。そういう特徴のある非常にやりにくい牛を相手にした。

 どうするのかと思って観ていたら、パセ・デ・ペチョの後、牛から充分距離を取って角の間に体を入れ始めからクルサードするような状態で位置取りをし、それから徐々に距離を縮め牛を誘った。パセの時も、ムレタと牛の距離が近すぎないように注意して振っていたのでその後は、角にムレタをはらわれなくなった。それでも、牛の返りが早く危ない場面が何度かあったが、距離の取り方と位置取りに注意して牛を誘い、頭の高い牛を相手にそういう手順を踏んでパセをしていたので牛は、ムレタの命令に従順に従うようになった。

 つまりこれが闘牛で言う、マンダールなのだ。調教通りに牛が動き出すと闘牛場は興奮に包まれた。「オーレ」がなった。これがプロの技だ。悪い牛でもこうやって牛を誘えば牛はムレタに従うのだ。ナトゥラルでは体の近くを通り、返りが早かったので危なかったが、上手に捌いた。デレチャソを繋ぎパセ・デ・ペチョをして見栄を切ると喝采が起こった。剣を代えて、スエルテ・ナトゥラルでカイーダ気味に決まった。観客は耳を要求したが叶わなかった。剣がちゃんと決まっていたら・・・。場内1周。見事なムレタ捌きだった。

 アルフォンソ・ロメロは、何しに出てきたのだろう。何にもせずに帰っていった。彼のことを書くことは無駄なのでやめる。あれだけ非道いのに退場の時、口笛さえ吹いて貰えない。ファンから全く無視された。

 今日は、インバリド(身体障害)の牛が多かった。獣医の検査で3頭のアランス・デ・ロブレス牧場の牛が不合格になり、替わりにガビラ牧場の牛が3頭出たがこれも良くなかった。牛交換が2頭。アルフォンソ・ロメロは、シン・クラッセだから、観るべきものは、4頭目と5頭目だけだった。どちらも非道い牛だったが、ウセダ・レアルが牛を良く理解した闘牛を実践した。ああいう正しいやり方で、非常に難しい牛を相手に良いファエナを見せたウセダ・レアルは耳が取れなかったが闘牛士の実力を見せ、闘牛ファンを感心させた。当然の場内1周といえるだろう。


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