シン・クラッセ、ミウラ。コン・クラッセ、バルベルデ。ムーチャ・クラッセ、セラフィン・マリン耳1枚。

2005年5月14日マドリード、ラス・ベンタス(第1級)闘牛場の結果。

 2005年サン・イシドロ第4日目。晴れ。時々風が吹いてやりにくい場面があった。ラ・カルデニジャ牧場の牛(Procedencia actual=現在の起源<基の血統>、コンデ・デ・ラ・コルテ牧場、ファン・ペドロ・ドメク牧場)。ソブレロ、アストルフィ牧場。闘牛士、ダビラ・ミウラ、ハビエル・バルベルデ、セラフィン・マリン。プレシデンテ、ホセ・マヌエル・サンチェス・ガルシア。今年初めてのノー・アイ・ビジェテ。ソルのテンディド5バッホにて、Tさん、三木田さんと一緒に観戦する。19時開始、21時15分終了。

 あらっ、ここにもいらっしゃいましたアンダルシアのお坊ちゃま、ダビラ・ミウラが。どうしてこう進歩することを嫌うのだろう。どうして考えることを拒否するのだろう。アンダルシアの陽光に当たっていると頭がこうなるのだろうか?ああそれなのにそれなのに、1頭目の牛が悪いからって観客が騒ぐ。ミウラなんだから替えたって同じなのに・・・。ソブレロが出来てきてもやっぱり一緒。初めから判っていることなのにね。パセを繋いでいるけどクルサードはしない。ナトゥラルをすればビビって腰が揺れる。パセ・デ・ペチョの時は脇が開いて観客から口笛を吹かれる。剣刺しはピンチャッソを繰り返しカイーダのアトラベサーダ。

 4頭目はラルガ・カンビアールから。一応やる気を見せておかないとね。ベロニカを繋いでメディア・ベロニカをすると牛の脚が悪くなった。でも、言い訳が出来て良かったよね。ムレタになって牛が動かない。パセが短い。出来ないよね君は。牛を誘うときの距離も角度もいつも同じ。これじゃ牛だって飽きてしまう。やってられない。そしてパセの後に転んだ。剣を代えて牛を立たせたが牛が今度は止まらない。パセが足りないからだ。結局剣を刺せずに何度も座った牛にプンティージャ。やろうとしているのに出来ないのは、牛のせいだけじゃない。考える習慣が身に付いてないからだ。闘牛の質と言うより、人間の質が悪いのだ。いつまでたってもお坊ちゃま。大人にも成れないまま終わるだろう。まっ、そういう不安を君は持っていないだろうけど。だから進歩することを嫌うんだよね。良いよねぇ、生活に不安がないくらいなお金持ちの暮らしって。見習いたくないけど。

 ハビエル・バルベルデは、2回とも挨拶をした。5頭目は頭の高いやりにくい牛だった。クルサードして牛を誘うとムレタを体を交互に観ていた。パセの時は頭が下がらないから体が見える。危ない牛なのに距離や間を考え、誘うときの角度を変えて工夫していた。彼はパセをするときの姿勢が綺麗だ。危なくてもドタバタの闘牛にならないのだ。根性も勇気もある。覚悟が出来ている闘牛だった。今度に期待しよう。こういうファエナをするとまた観たいと思う。

 セラフィン・マリンは、進歩することをやめない。それは思考を停止しないからだ。最後の牛は良い牛じゃなかった。ベロニカの時に首を横に振りながらパセが通っていた。ピカは左前に入り、刺し替えて左上にというのが2回だった。フェルナンド・テジェスが良いバンデリージャを2回決め挨拶をした。ファエナは膝を折ったデレチャッソで牛の動きを確かめて、アレナ中央へ。遠くから牛を呼んでデレチャッソ2回、「オーレ」がなる。牛が止まりクルサードし直してパセをすると2回目にブスカンドしパセ・デ・ペチョ。拍手がなる。充分距離を取って間も取る。また、遠くから牛を呼んで手の低い長いデレチャッソ3回繋がると、「オーレ」がなり、レマテのパセ・デ・ペチョが決まると喝采がなった。

 また、充分距離と間を取る。この距離の取り方が非常に良かった。デレチャッソ2回で牛が止まる。クルサードして2回デレチャッソ、手を替えてナトゥラルからパセ・デ・ペチョで拍手がなる。牛は決して良くはない。パセがなかなか続かない。それでも距離と間を充分取っているから良いパセを引き出せるのだ。落ちていたバンデリージャを拾って投げた。冷静でもある。遠くからナトゥラルで牛を誘う。パセで牛が飛ぶ。前脚が弱いのでこうやって誤魔化している。ブスカンドというか体のそばを角が通るのにピクリとも体が動かない。度胸もあるし覚悟も見極めも出来ている。それでもナトゥラルをする。手の低い長いパセが繋がり、「オーレ」がなった。パセ・デ・ペチョで拍手が沸く。

 離れデレチャッソが4回繋がると「オーレ」が鳴りパセ・デ・ペチョで拍手がなる。離れデレチャッソを繋ぎパセ・デ・ペチョで剣を代えた。良い剣が決まれば耳が出る。左のトゥリンチェラ、ナトゥラルを繰り返し観客を沸かせてスエルテ・コントラリアで牛を置き良いところに剣が決まり牛が直ぐに倒れて闘牛場が白いハンカチで埋まった。今年サン・イシドロで初めての耳が出た。セビージャでも良かったがそれ以上にこの日のファエナは良かった。距離、間、覚悟も、悪い牛から良いパセを引き出した点で最上級の賞賛を受けて良いだろう。最高の牛じゃなかったのに、最高の寿司を握ったという点で、『将太の寿司』と言っていいだろう。こういう工夫が闘牛士を良い闘牛士に仕立てていくのだ。それと2頭目の剣刺しはこの日までの中で1番良い剣刺しだった。つまり、メホール・エストカーダ候補だ。

 ラ・カルデニジャ牧場の牛は良くなかった。その通りミウラは何も出来なかった。が、ハビエル・バルベルデは工夫して良いファエナにして2回とも挨拶をした。そして、セラフィン・マリンは、素材(牛)が良くなくても、工夫して、『将太の寿司』を握った。目指せ!日本一じゃなくてスペイン一。世界一を。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~tougyuu/以下のHPの著作権は、斎藤祐司のものです。勝手に転載、または使用することを禁止する。


ホームに戻る  2005年闘牛