命を懸けて戦慄の牛に立ち向かい勝負したセラフィン・マリン、価値ある耳1枚!闘牛場が手に汗握りそして感動に包まれた。

2003年5月13日マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(第1級闘牛場)の結果。

 曇り時々晴れのラス・ベンタス闘牛場。セプルベダ牧場。第1ソブレロ、ナバルロサル牧場。第2ソブレロ、パロモ・リナレス牧場。闘牛士、ラファエル・デ・フリア、イバン・ビセンテ、セラフィン・マリン。満員に近い入り。テンディド6でYさんTさんと観戦す。

 今日は順番を関係なくしてセラフィン・マリンから。感動した!3頭目、彼にとって今日始めの牛。パセをすると飛び上がる牛。右のパセの時にコヒーダされる。パセ・デ・ペチョの時も危なかった。ナトゥラルをするとムレタを角にはらわれるし、コヒーダされそうになる。パセの途中で牛が止まって何度もコヒーダされそうになる。ピンチャソ3回、デスカベジョ7回、アビソ2回。ファエナは命懸けだった。そして、今日最後の牛であんな感動が待っているとは・・・。

 6頭目は出てきてピカで倒れ交換。3頭目もソブレロで今回もそう。出てきたパロモ・リナレスの牛は頭が高かった。でも驚いたのはカポーテを振ってパセしようとしたら誘った体の右側じゃなく、左側を牛が通っていったことだった。闘牛場に悲鳴が起こった。牛は右角がブスカンドする。それもブスカンドなどと言う生易しいものじゃない。誘った体の右じゃなく左側を通っていくのだから・・・。悲鳴が上がって当然。カポーテが振れない。替わって彼のバンデリジェーロのセサル・ペレスがカポーテで牛を扱う。上手い。馬の前に持って行ってピカが少し左側の肩骨側に入った。セサル・ペレスのカポーテ捌きに闘牛場から拍手が起こった。これがこのカポーテ捌きを見せていなかったらどうなっていたことか・・・。カポーテを振るが、右角が体の前を通るときに体目掛けて向かってくる非常に危険な牛だった。

 ファエナはどうなるかと思った。病院行きになるか、牛に殺されるか、それとも、とっとと牛を殺すか。右手に持ったムレタで牛を左右にあしらってアレナの内側に持って行った。クルサードしてパセを繋ごうとしたら2回目のパセでブスカンド。闘牛場が戦慄した。それでもまた、右手にムレタを持ってクルサードしていく。牛が体をずっと見ている。逃げない。拍手が沸く。そして長いが繋がると、「オーレ」が合唱がなった。パセ・デ・ペチョも危ない。離れてからまた、右手。クルサード。逃げない。拍手が沸く。パセを繋いだらまたブスカンド。悲鳴とざわめき恐怖で観客が戦慄している。手に汗握ってセラフィンの闘牛を見守っている。

 ナトゥラルでもクルサードを怠らない。これをしないとパセは繋がらない。しかし、こんな牛に対してここまでするヤツは彼以外いないだろう。パセを繋ぐがこっち側もブスカンドする。本来ならもうやりようがない牛なのだ。セラフィンはムレタを右手に持ち替えてまたクルサードする。拍手が起こる。良いパセ、そんなにやってないよ。でも、命懸けで戦慄の牛に立ち向かって勝負する姿に観客は胸を打たれているのだ。ムレタを体の後ろの方まで持って行って牛の動きを確認してパセを繋ぐ。「オーレ」闘牛場の観客はセラフィンの姿に感動して、恐怖心を、興奮に変えてこの息詰まる緊張が凝縮した時間に身を任せているのだ。それにしても尋常じゃない勇気だ!

 牛に力がなくなってきてメディア・パセになってきた。それでもクルサードしてムレタを体の後ろの方までやって牛の動きを確認してパセを繋ごうとしている。単なる勇気だけがあるバリエンテ系の闘牛ではない。ちゃんとした技術に裏打ちされた半端じゃない尋常じゃない勇気と命懸けの気迫が観客席にいる人たちにも伝わっているのだ。パセが繋がると、「オーレ」がなりパセ・デ・ペチョの後、喝采が鳴った。そして剣刺し。スエルテ・コントラリアで置いて1発で決めた。剣が刺さったのを確認したら白いハンカチを振る人たちがいた。これは通常耳2枚が出るときだけだが、気の早い観客はもうそんなことをしていた。牛は倒れ耳1枚。良くやった!偉い!感動で涙が出た。

 闘牛場にいる観客の誰もが息を呑み、手に汗握って、恐怖と戦慄で緊張が凝縮した時間から解放された。嬉しかった。こういう闘牛をやる闘牛士を観れて。いやー、無名の闘牛士が価値あるファエナで耳を取った。ラス・ベンタス闘牛場の耳だ!サン・イシドロの耳だ!いたんだなぁこういう闘牛士が。今日は良いものを見せれ貰ってありがとう、ございました。

 ラファエル・デ・フリア。今日は一体何を語ったら良いのだろう?君今日何かやったっけ?2年前のサン・イシドロのトゥリンファドールがこれじゃなぁ。

 イバン・ビセンテは、遠くから牛を呼んでパセするのは非常に良いけどムレタの振り方が良くない。牛と関係なく振っているからムレタと牛が離れてコヒーダされそうになる分けよね。もっと学ぶことが一杯あるんじゃない?

 今日はセラフィン・マリンに感動した。そして感謝したい。こんな闘牛を観せて戴きまして、本当にありがとう、ございます。命を懸けなきゃならない時に、命を懸けて真剣勝負をやったその勝負根性も凄い!そして、勝負した時にちゃんとした技術を持っていたことが彼の闘牛人生を明るいものにしてくれるだろう。ラス・ベンタスには真実がある。さっ、これから祝い酒だぜ!(明日、セラフィン・マリンの経歴を簡単に記入する。


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