*5月30日。片目の闘牛士、ハビエル・バスケスのグラン・ファエナに思わず涙。

コリーダ・デ・トロス。牛ーサムエル・フロレス。

      エル・タト、ハビエル・バスケス、カナレス・リベラ。

1頭目。エル・タト。

 今日は雲がでているが天気は良い方だ。牛が出てきてタトはパラールにならないパセから始まって2回だけパラールでパセした。牛は定位置に着く前のピカドールの所に行ってピカが入った。左肩の前に刺さっている。前脚がおかしい。膝を着いた。右前脚がおかしい。2回目のピカは定位置に着いて刺されて、同じ所に入った。ハビエルの良いベロニカが繋がってラルガで決めた。

 始めのバンデリージャは右側に2本刺さったが、牛が気にして首を振っている。2回目は角の間で2本肩の後ろ背骨の上に刺さった。最後は角の前で打ったが1本しか刺さらなかった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。タトはパセを繋いでいるがパセ・デ・ペチョの時に脇が開く。中央部でナトゥラルをやっているがナトゥラルになっていない。角にムレタをはらわれるがそれ以前の問題だ。腕が真横位の所にある。これは非道いな。クルサードして右手を出して誘うが牛は来ない。タトは体の遠くで遠くでパセしている。

 スエルテ・ナトゥラルでしっかり刺した。左手のムレタの振り方も良かったし剣も良いところに刺さった。が、それだけだ。デスカベジョは5回やっても決まらなかった。牛は座ってしまった。タト実力を発揮する。

2頭目。ハビエル・バスケス。

 ハビエルの牛は動きがキビキビしていてパセの後すぐ向き直って向かってくる。またパセの後、前脚がコッポになっている。ピカは丁度良い所に入っている。ここなら良い。離された時にくるっと廻って膝を着いた。牛は馬を倒した。馬起き上がる。ピカドールも大丈夫だ。

 2度目のピカも同じ所に入っている。膝をまた着いている。動きが鈍くなってきた。テルシオが変わってみんな怒っている。リベラが近場でチクエリーナを2発。ラルガで締める。みんなは牛を替えるように抗議している。牛が躓く。良いチクエリーナだった。ようやく牛が変わる。

 替わりの牛がトリルから出てきてまたトリルに入っていこうとしてどっと沸いたがアレナに出てきた。始めのピカは左肩の後ろに入った。良いところだ。馬が倒されている。ピカドールは大丈夫だ。馬を起こす間ハビエルは反対側の馬の所に連れていってピカを刺した。だいたい同じあたりに入ったみたいだ。3回目のピカも同じあたりに刺さったみたいだ。遠くなので良く分からない。

 始めのバンデリージャは角の間で撃って右肩側に刺さった。良い。2度目も良いところに刺さった。角の間で撃った。右角の前で最後は刺した。これはなかなか勇気のある撃ち方だ。拍手が沸く。挨拶をする。ハビエルのバンデリジェーロはとても良い。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ハビエルは牛に近づきながらムレタを左右に振って牛の反応を確かめながらファエナが始めた。この牛は危ない牛だ。人の方に来る。特にハビエルは片目がないので危ない。それでもムレタを尻の後ろに隠してクルサードして牛を誘う。立派な事だ。

 右手を出して誘っている。パセすると膝を着く。牛の動きが悪い。ハビエルはちゃんとクルサードして誘っている。結局牛が駄目で剣を変えた。仕様がないだろう。ハビエルはやることをやってから剣を変えたのだから。前脚が揃っていない。ちょっと無理じゃないかな。

 しかしちゃんと刺した。剣は縦に入った。普通は剣は横になって刺さる。構えるときも地面に剣の腹と言うか平らな所を平行にしている。つまり切っ先は横を向いている。刺さったときも横になっている。今のハビエルの剣刺しは切っ先が上下になって刺さった。これを技術と言うのだろう。ノビジェーロの頃のコルドベスがこういう刺し方だった。デスカベジョ2回失敗した。牛は膝を着いた。

3頭目。カナレス・リベラ。

 牛は走り廻っているときにカポーテに反応したが、ガクッと体をしたに動かした。歩様がおかしい。右前脚だ。カナレス・リベラのカポーテに鋭い反応をしてパセの後すぐ向きを変えて向かってくる。が、如何せん脚が悪い。何回か膝を着いた。ピカはほぼ良いところに入っている。ちょっと右寄りだ。問題はないだろう。1度牛は離されたがまた馬に行った。さっきよりもちょっと後ろにピカが入った。3度目はさっきと同じあたりだが背骨の上のに刺さった。

 始めのバンデリージャは角の間で撃ったが、投げるような感じで1本しか刺さっていない。次も角の間で撃って真ん中あたり左右に別れて刺さっている。最後は非常に良い刺し方で、瘤の後ろの方に刺さった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。リベラは良い右手のパセを繋いでいるが、牛が膝を着いてしまう。折角のパセが駄目になるなぁ。良いナトゥラルを繋いだが最後のパセ・デ・ペチョは外側に出すようなパセで感心しない。右手のパセを繋いで最後は右側から左側にパセ・デ・ペチョをした。この動線とムレタの動かし方は良かった。

 右手のパセはピコになっている。口笛を吹かれている。左手でパセ・デ・ペチョ。脇が開く。彼は気づいていてすぐ脇を締めような気がした。クルサードしてナトゥラルを繋いだ。近場を通していて結構いける。彼はがんばっている。近いところでムレタを振っている。但し、クルサードしていない。それが一番問題な所だ。

 これから締めのマノレティーナをやるところだ。近場を通していて良いマノレティーナだ。左手はムレタの端を掴まない独特のものだ。見栄を切って拍手を浴びる。ん。気に入ったぜ。ちゃんとタキージャドールの端のネジが体に隠れていたのが良かった。スエルテ・ナトゥラルで剣刺し。良い。拍手を貰っている。ホントに良いところに刺さっている。これは正しい剣刺しだ。リベラが牛の前に行くと、牛は後退してタブラに行って座った。

4頭目。エル・タト。

 出てきた牛に対して拍手が起きている。角が凄い。角の先が上を向いている牛だ。まだパセはやっていない。体型はそれほどでもないが絞まっている。思った通り始めのパセはちゃんと出来なかった。概ねああいう牛はそういうものだ。始め出てきたときの走り方が飛び跳ねるような感じだったので、そういう風になるのではないかと思っていた。

 タトは牛を小刻みに動かしてパセを繋げた。拍手が起きている。だが牛は左前脚がおかしくなっている。始めのピカは右肩上、刺し変えて真ん中肩と肩の間に入った。2回目は左肩。さっきのピカで右脚がコッホになった。これで両前脚がおかしくなった。

 ハビエルのキーテは、良いチクエリーナ2回やって、ベロニカは凄い近くを牛を通してラルガで決めた。 テルシオ・デ・バンデリージャ。TOROパサードで決める。格好をつけているが駄目だ。次もTOROパサード気味だが右角の前で撃っていた。最後は撃って首が上がって来たときに角の間に体を入れていた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。タトのパセはやっぱり脇が開いている。どうしたってちゃんとしたクルサードにならないみたいだ。それとパセ・デ・ペチョの時に凄く脇が開く。タトは観客からピコを呼ばれていた。それは事実だ。牛を置いて剣刺しに行く所だ。良い剣刺しだ。牛の前に行って右手の人差し指を指してポーズを取る。良いファエナの時なら決まるのだが・・・。

5頭目。ハビエル・バスケス。

 ハビエルの牛が出てきてまた拍手が起きた。角が凄く上をピカは首の瘤の後ろに入っている。だいたい真ん中あたりだ。2回目のピカの同じ所に入った。

 テルシオ・デ・バンデリージャ。角の前で撃とうとしたが、直前で牛が潰れてしまった。右側に2本入っている。角の間でちょっと横向きで撃った。左右に別れている。角の間でちゃんと撃った。これは良い。観客の拍手に”挨拶”をする。ハビエル・バスケスのブリンディースは観客に捧げられた。

 テルシオ・デ・ムエルテ。右手の良いパセが繋がっている。パセ・デ・ペチョもまあ良い。牛の誘い方がやっぱり良いぞ。クルサードして手を前に出して誘う。良い右手、パセ・デ・ペチョも決まった。拍手喝采オーレもなった。ハビエルのって来た。尻の後ろにムレタをやって右方向に少し歩いて体の前に手を出して、また尻の後ろにやってクルサードしてパセをする。

 良いパセなのに2回ムレタをはらわれる。凄く良いパセなのに残念だ。手が低い。良いところで誘っている。来た、来た、来た、良いぞ、良いぞ、良いぞ、オーレ、オーレ、オーレ。凄い良い誘い方で入っている。良いナトゥラル。尻の後ろから左手低い。良いパセ、凄く良いパセだ。

 ハビエル・バスケスはマノレティーナの逆をやる。つまり、ベルナディーナだ。凄い見せ場だ。尻の後ろに両手で持ったムレタを左右に振って牛の動きを確認して誘う。さぁ来い、さぁ来い、良いぞ、「オーレ」あぁ凄いパセ。「オーレ、オーレ、オーレ」パセ・デ・ペチョも決まった。シビレルゥー。後は剣だけだ。何も問題ない。剣だけだ。

 1回目スエルテ・コントラリアから失敗した。2回目はコントラリア。あぁ駄目だ。脚が動く。後ろ脚が動くと前脚も動く。結局また失敗。Te empesamos javier. ハビエル・バスケスは思いっきり体を預けて刺しに行っているが、前脚が開いているので刺さらない。凄く残念だ。牛が座ったのをわざわざ起こして3回目行っているんだ。

 牛はまた座ってしまって終わった。観客の喝采に応えてハビエルはブエルタをした。彼が来たとき白いちり紙を振っていたら後ろのおばさんが、「今は拍手をするときだ」と言った。だから「mi corason oreja」と言った。

6頭目。カナレス・リベラ。

 カナレス・リベラはラルガ・カンビアール2回決める。牛は右脚がおかしい。ピカは瘤の上右側に入った。左肩ちょっと前に入って、刺し変えて肩と肩の間真ん中に入った。この牛の角は左右が違うみたいだ。右が上を向いていて、左が前を向いている。

 テルシオ・デ・バンデリージャ。角の間で撃っている。次も角の間で撃ったが、1本しか刺さっていない。3回目行ったが足が縺れて撃てなかった。もう1度行ったら今度は牛が膝を着いて撃てなかった。最後は1本しか刺していない。仕様がないかも知れない。

 テルシオ・デ・ムエルテ。距離を取ってナトゥラルから入る。牛を誘う。リベラはムレタを後ろに隠さないで、横に出したまま誘っている。ナトゥラルが続くが良いパセになっていない。牛の右側に立ってパセしていると変な動きをする。ナトゥラルだと良いが右手だとどうだろう。やっぱり人を捜している。右側が利き角かも知れない。

 今ナトゥラルをやっているときに角が顔の近くに来て危なかった。あまり良いパセにはなっていない。右手でシルクラールを2回やったが、中心点が1m位動くので話しにならない。口笛を吹かれている。スエルテ・ナトゥラルで置こうとしている。何かおかしいなぁ。右後ろ脚が浮いていて、その場に立つのか、踏ん張るのか判らない。よって前脚も落ち着きが悪い。ピンチャソになった。2回目に剣が刺さった。20cm位出ている。牛は倒れた。

===今日の一言===

 今日は何と言ってもハビエル・バスケスに泣いてしまった。やるべき事を正しくやる。それは片目をなくしても関係ないことだ。ハビエルの闘牛に対する姿勢はそういう事だ。それをまた闘牛に表現できることが素晴らしい。耳を取らせてやりたかった。が、耳だけが闘牛じゃないのだ。その事はラス・ベンタスのお客さんは良く解っている。

 タトの様に脇を大きく開いて、クルサードせず、ピコでしか闘牛が出来ない人間とは、人間そのものが違うのだ。彼の闘牛に乾杯。彼の人生に乾杯。


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