*5月20日。ホセリート耳1枚消える。

コリーダ・デ・トロス。牛ーバルタサル・イバン。

     ペピン・ヒメネス、ホセリート、ビセンテ・バレラ。

1頭目。ペピン・ヒメネス。

 ペピン・ヒメネスはゆっくりとしたベロニカを続け、オーレが場内に鳴った。牛の前脚がおかしい。膝を着く。ピカはほぼ真ん中の首の後ろに刺さっている。牛潰れる。2回目のピカは左肩骨と背骨の間に入る。牛交換。

カポーテに反応が鈍い。逃げたりする。ペピンのベロニカ。難しい牛の様だ。ファン・カルロス・デ・ロス・リオスが、良いカポーテ捌きを見せて牛をブルラデーラに引きつけた。ピカは右肩の後ろ背骨寄りに入った。馬が倒れた。2回目のピカは右肩に入っている。馬が倒された。牛も倒れた。ピカドールが振り落とされて危なかったが大丈夫だ。ホセリートがベロニカをする。モノサビオが馬を起こしている最中だ。危ないのでそういう事は辞めて欲しい。右脚がおかしい。完全におかしい。

 バンデリージャは牛の頭の前だ刺した。2回目もちゃんと刺す。3回目は刺さらず、角が胸の前に来て危なかった。次はちゃんと刺したが、手が頭の上に上がらず拍手はパラパラだ。

 テルシオ・デ・ムエルテ。この牛は難しい牛だ。パラールに成らない。牛が変な首の振り方をする。パセの時、横に振っている。通常は上に振り上げるものだが、目が見えない場合と、癖でそうなる場合がある。ナトゥラルだと牛は動く。と、言うことは右目が悪いという事だ。左から呼んで右側に左手でやるパセ・デ・ペチョだと動線がおかしい。牛が座ってしまった。バンデリジェーロが牛を立たせた。スエルテ・ナトゥラルで剣刺しだ。ペピンの剣刺しはタキージャドールを横にしてムレタを始めから牛に広く見せてやる独特のものだ。ピンチャソ2回。デスカベジョ3回。

2頭目。ホセリート。

 ホセリートの牛は出てきていきなり口笛を浴びている。走り方のバランスが悪い。特にカポーテに反応するときの体の動きが変だ。ホセリートが牛にカポーテを持って行かれそうになって片手で持っていると、ファン・クベーロ(ホセリートのバンデリジェーロで、85年に死んだ有名闘牛士ジィージョの弟)がサポートに入った。

 牛はパセの時、踏ん張って首を振ったときに後肢が流れる。凄い口笛だ。ピカは左側に入っている。あまり良いところではない。牛躓き口笛が吹かれる。2度目のピカはさっきより後ろの内側に入った。左肩の上あたりだ。

 バンデリージャは1度目2度目は頭の前で刺したが、3度目は投げるような感じで刺さらなかった。4度目はちゃんと刺したが肩より後ろに刺さった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ファエナが始まる前から上の方の席から「殺せ、殺せ」と、声がかかった。牛を中央に持っていった。距離を取る。右手のパセ3回、パセ・デ・ペチョ、拍手が沸く。ホセリートはちゃんとクルサードしている。風が吹いていて牛を誘えない。

 ホセリートの運転手が走っていてタブラからムレタに水をかける。前を歩いていたモソ・デ・エスパーダのホアキン・ラモスを腕で押しのけてタブラに足を掛けて上ったのだ。モソ・デ・エスパーダと運転手。どっちが上かは明らかだ。しかしホアキン・ラモスは文句1つ言わない。何故ならばこれはホセリートの為に行われた事だからだ。何よりもホセリートが優先される。当たり前の事である。

 この運転手はホセリートの下僕だ。彼は完全にホセリートを尊敬し、崇め奉っている。剣が決まれば右手を突き上げてガッツポーズで大声を上げるは、こうやって走って駆けつけるは、ホセリートの一挙手一頭足に注意を払い何も見逃さないようにしている古くからの助手の1人だ。彼はホセリートの為に闘牛場の中であらゆる事に気を使う。それはいつものことだった。いつも変わらないことだ。ホセリートには男を引きつけさせる”何か”がある。それはとても不思議な魅力だ。

 さぁこれからナトゥラルだ。ホセリートのナトゥラルの誘い方はピコ気味だ。牛の動きはよくない。1回だけ良いナトゥラルが決まった。パセ・デ・ペチョも良くない。風は強い。物凄く風が強くムレタが揺れて剣を添えても駄目だ。牛を誘えない。

 タブラに来て剣を替えた。スエルテ・ナトゥラルで牛を置いて刺す。剣が横から入った。抜いたが、剣は肺に入っているだろう。牛の首の動きが変で2回目もピンチャソ、剣は手から離していない。口笛が吹かれている。牛を置くが右前脚を上げている。ようやく剣が決まる。牛が倒れた。

3頭目。ビセンテ・バレラ。

 牛はゆっくり出てきて突然走り出してタブラにぶつかった。動きがおかしい。まだパセをやっていないのに右前脚がおかしい。脚を止めれないパセが続いて最後はラルガ。ビセンテ・エステラとアルベルト・マルティネスがブルラデラに牛を引きつけている。この2人は本当に上手いし、闘牛を良く知っている。その間にピカドールは定位置に着く。ピカは左寄りに刺さっているが、ほぼ真ん中だ。2回目のピカはさっきより後ろに入った。

 アルベルトが頭の前で刺す。良いバンデリージャの刺し方だ。牛が膝を着く。2回目は1本左肩骨に刺さった。最後アルベルトがちゃんと頭の前で刺し。

 テルシオ・デ・ムエルテ。ビセンテ・バレラはタブラの近くで足をあまり開かないパセを何度かやってパセ・デ・ペチョ。牛が膝を着く。牛が良くない。1繋がりのパセをして、脇の絞まったパセ・デ・ペチョで決めた。ビセンテは足を動かさずに、右に左にパセをした。拍手が沸く。ナトゥラルは誘う時に脇が開く様になってきた。

 パセで牛を動かすが、口笛を吹かれる。ビセンテが悪いのではない。牛が悪いのだ。パセをすると牛が倒れる。牛の目の前でクルサードして体の後ろにムレタを置いてパセしようとしているが口笛が鳴る。牛の前脚をぴっちり締めてスエルテ・ナトゥラルで剣刺し。1発で決まった。牛は脚に来て倒れた。

4頭目。ペピン・ヒメネス。

 牛はブルラデーラの前などで、迷った様な感じでよく前脚動かす。カポーテなどの動きには反応するがケレンシアが判らないようだ。

 ピカドールが定位置に着く前に牛が向かっていって、ピカが左側に入り、2回目は左肩に入った。ピカで左肩を痛めて左脚がおかしい。観客は牛を替えろと、言っている。ピカが真ん中に入ったのに刺し変えて右側に入れて口笛を吹かれている。非道いピカドールだ。

 ファン・カルロス・デ・ロス・リオスのバンデリージャは角の前で刺し喝采。彼はデブで背が高い。またも彼は喝采を受ける。モンテラを取って挨拶する。彼はここでは人気者だ。だが今のはTOROパサードだった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。片膝を折ったパセで牛が両膝を着く。右手でパセを3回左手でパセ・デ・ペチョ。誘って牛が来ない時にムレタを横に出して移動している。お尻の後ろに隠して欲しいな。クルサードしていない。ムレタを体の後ろに隠していない。横に出して誘う。ナトゥラル誘い方が良くない。脇が開く。右手のパセは手が高い。牛が動かない。スエルテ・ナトゥラルの剣刺しで良いところに入った。

5頭目。ホセリート。

 ホセリートの牛は勢い良く出てきた。片膝を折ってもう一方の片膝をアレナに着いたカポーテで場内を沸かせる。馬の前に牛を持ってきて最後はラルガで決める。馬が牛に倒されてピカドールが投げ出された。

 馬から牛をホセリートが離して拍手が沸く。中央に牛を持っていってベロニカを2回やって、メディア・ベロニカを決めて喝采を受ける。モノサビオが馬を起こしている最中だ。馬はなかなか立たなかった。2回目のピカはちょっと左側だがほぼ良い位置に入っている様だ。向こう側のピカドールの所に行っているのではっきりしない。

 ファン・クベーロのバンデリージャは角の間で刺している。ホセリートのバンデリージャは古いタイプのものを使っている。ファン・クベーロの2回目は1本しか刺さらなかった。

 テルシオ・デ・ムエルテ。カポーテと同じでムレタも片膝を折ってもう一方の片膝をアレナに着くパセで始まった。牛がパセの後、膝を着いた。ホセリートは背中を反って腹を出すようにして右手のパセをテンプラールして場内を沸かす。場内に「オーレ」が鳴って拍手。

 牛から距離を取って右手のムレタを尻の後ろにやっている。それからムレタを牛の方に出して誘う。パセ3回やって牛の前に立って体を角の間の入れてムレタを出す所だ。やる事はちゃんとやっている。ナトゥラルが始まる。腰が動く。ムレタが角にはらわれる。

 距離を取って少しずつ近づきながら、左右にムレタをゆっくり振ってトゥリンチェーラ、そのままの場所でシルクラール。牛の前1mに立ってムレタを左右にゆっくり振って牛の動きを確認して腹を出した右手のパセをした。「オーレ」牛の前で見栄を切って、拍手を受け、剣を替えに来る。

 牛の脚がちょっと開いている。置き直して3m前で構える。狙いを定めてピンチャソ。これでホセリートは耳1枚失った。またピンチャソ。3回目もピンチャソ。ホセリートは自分自身に怒っている。顔を真っ赤にして何かブツブツ言っている。剣は4回目で決まった。una Aviso遅すぎた。

 ホセリートが、終わったところで観客が帰り始めた。何故なら今日はコパ・デ・エウロパの決勝があるからだ。レアル・マドリード対ユベントスだ。勝った方が12月に日本に来てトヨタカップに出場する。ビセンテ・バレラよりサッカーの方が大事なのだろうか?何のための闘牛だ。そんな奴は闘牛場に来るんじゃない。馬鹿野郎。

 とは言うものの、レアル・マドリードが日本に来たら行こうと思っている。勿論。

6頭目。ビセンテ・バレラ。

 バレラの牛はパセで右脚がおかしくなっている。これは替えた方が良いと思う。ピカは左肩寄りの真ん中に入った。牛が悪いのにテルシオが変わった。

 ビセンテ・エステラのバンデリ-ジャはいつも綺麗だ。牛の方に突き出す様にするのではなく、上から下に落とす様に刺す、刺し方だ。いとも簡単にやっているように見える。

 テルシオ・デ・ムエルテ。バレラのパセで牛が座ってしまう。牛が悪いのに良いナトゥラルをしている。しかし後が続かない。バレラが可哀想だ。殆ど何もできない。彼のせいではない。牛が駄目なのだ。スエルテ・ナトゥラルで牛を置くが、前脚が揃っているのだろうか。ピンチャソ。2回目はスエルテ・コントラリアでピンチャソ。牛が座ってしまった。終わった。

 

===今日の一言===

 ペピンは学校の先生らしく真面目だ。バレラはいつでも真面目だ。何せアメリカ留学までした弁護士だ。彼の顔に悲壮感のようなものを感じるのはその為ではない。彼が望んでいるのは唯一つ。偉大な闘牛士に成ることだけ。だからああいう顔をしてるんだと思うんです。

 ホセリートは耳1つなくした。剣さえ決まっていれば・・・。今年はずーと調子が悪くてセビージャでは散々だったと、下山敦弘さんが言っていた。そして今日、いや16日のタラベラ・デ・ラ・レイナから素晴らしい闘牛を見せてくれている。そう、22日が益々楽しみになってきた。セサル・リンコン、ホセリート、ホセ・トマス。こんな良いカルテルが他にあるだろうか。今現在はない。


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