6月1日のサン・イシドロは、ケ・グラン・タルデ!だった。サルドゥエンド牧場の牛で、アントニオ・フェレーラ、クーロ・ディアス、ルイス・ダビ・アダメ。入場行進後に、橋から転落して復帰したばかりのアントニオ・フェレーラに喝采が鳴って挨拶した。1頭目のカポーテ捌き、馬の前への牛の置き方など随所で観客を魅了した。アレナ中央部分で片膝を着き、モンテラを空に向けてからアレナに置いた。中央でブルラデロに牛を誘う。ムレタは左肩にかけるようにし、牛が動き出すと、左手に持ったムレタを頭の上で回して、ナトゥラルのパセを繋いだ。オーレが鳴り渡る。パセ・デ・ペチョを決めると牛に背を向けて10m以上離れて、右手に持った剣をアレナに置いた。剣なしでのファエナが始まった。ナトゥラルのパセを繋ぎパセ・デ・ペチョ。背を向けて15mほど距離を取り遠く方から牛を呼びナトゥラルを繋ぐ。オーレが続く。レマテの後、また距離を15mほど取って、右手に持ったムレタを背の方にやり、飛び跳ねて牛を誘う。牛はゆっくりと動き出して、右手の剣のないナトゥラルが始まった。4回ほどパセをして、また距離を取り右手のナトゥラルのパセを繋いだ。牛が止まると、クルサードしてパセを繋ぎ、ムレタを左手に持ち替えて、ナトゥラルを繋ぐとテンプラールの長いパセが繋がった。パセ・デ・ペチョの後、充分距離を取ってナトゥラル。剣を代えて、カルトゥチョ・デ・ペスカドからナトゥラル、トゥリンチェラを決め牛を置きに行く。なかなか上手く置けないとみると、何と10m離れた処に立ち、牛呼ぶ、レシビエンドで剣を決めた。闘牛場がどよめいた。あの距離のレシビエンドは凄い!喝采が鳴り、その中でナトゥラルを何度かして牛の前で、膝を着いて見栄を切った。牛が座り、プンティージャが入り、闘牛場には、口笛と拍手とトレロ・コールが鳴り響いた。白いハンカチが闘牛場を埋め尽くしたが、プレシデンテは耳を1枚しか出さなかった。観客は不満の口笛や手拍子を鳴らして抗議した。中には、フエラ・デル・パルコのコールを叫んでる観客もいた。ほぼ観客は耳2枚のファエナの認定していたが、訳の分からないプレシデンテだ。観客の要求に応えて、場内二周した。プレシデンテには罵声や、フエラ・デル・パルコのコールが起こった。
2頭目のアントニオ・フェレーラは、静かに始まった。観客の気持ちはプエルタ・グランデをさせようという雰囲気が漂っていた。しかし、闘牛はそう簡単ではないことをみんなが判っていた。静かに始まったファエナは、次第に熱を帯びてくる。フェレーラは、自分がやるべきことを、ちゃんと分かっている。淡々とこなしていたが、それに観客が応えだした。7の前で膝を折ったデレチャソから始めアレナ中央部に牛をパセで移動させた。丁寧にデレチャソを繋ぐ。クルサードして繋ぐ。ナトゥラルを始めると次第に盛り上がっていった。7の前の白線の内側でナトゥラルを繋ぐ。また剣を置いて右手のナトゥラルを始めた。ゆっくりクルサードして丁寧に繋ぐ。タブラ付近でトゥリンチェラ、ムレタを持ち替えてパセ・デ・ペチョでオーレが続き、牛の前に立って喝采が鳴った。距離を取り右手の膝を折ったナトゥラルを繋ぎ、ムレタを左手に持ち替えてナトゥラルからパセ・デ・ペチョ。オーレが続き喝采が鳴った。距離を取り、長いナトゥラルを繋ぎ、右手に持ち替えて手の低い長いパセが繋がりパセ・デ・ペチョ。オーレが続き牛の前で立ち止まって喝采が鳴る。剣を代え、デレチャッソのトゥリンチェラからナトゥラル、トゥリンチェラ、パセ・デ・ペチョ。オーレが続き、喝采が鳴った。剣はスエルテ・コントラリアでレシビエンドで決まった。牛が倒れ、闘牛場にトレロ・コールが鳴り、白いハンカチ揺れた。耳1枚を意味する白いハンカチをプレシデンテが出したが、それでも観客は2枚目の耳を要求した。そのプレッシャーに負けて2つ目の白いハンカチを出した。これは違うだろうと思った。1頭目が耳2枚で、こっちは耳1枚だろうと思った。隣のあんちゃんが、話しかけてきたので、そのことをいうと、プレシデンテは、観客のプレッシャーで2枚目の耳を出したといった。
クーロ・ディアスは、1頭目で良い処をみせていた。デレチャッソの長いパセが繋がり、オーレも叫ばれた。しかし、途中から牛の動きが鈍ったことと、クルサード不足の感じで、口笛が吹かれだした。もっと、クーロらしいファエナが観たかった。剣は決まった。2頭目はパッとしなかった。剣もカイーダだった。
ルイス・ダビ・アダメは、1頭目で弱い耳要求が起きたが、それはかなり甘い考えだ。それなりにパセを繋ぐが、ちょっとクルサード不足。牛の扱いが、メキシコ風?パセを繋いでいれば耳を貰えるアンダルシア風と同じ感じ。2頭目は、コヒーダされた。角傷を負って、医務室に担がれて行く途中に、戻ってきて、ファエナを続けた。お情けで耳を貰おうとしていたと思うが、ファエナも良くないし、剣も決まらなかった。
闘牛が終わり、クーロ・ディアスとルイス・ダビ・アダメのクアドリージャが退場した後、アントニオ・フェレーラのオンブロスが始まった。もう席を立ってプエルタ・グランデに向かう人たちもいる。全く異議の出ないプエルタ・グランデだ。敬意をもって喝采が鳴り響く。笑みを浮かべたフェレーラがプエルタ・グランデへ消えていった。何と素晴らしい闘牛だったんだろう。右手のナトゥラル、タンダの後の距離の取り方、そして、10mのレシビエンド。いくつもの残像が残り、余韻にひたる夜を楽しむことが出来る。
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