1999/7/20現在、W3Cでは、ルビエレメント(ruby)について、検討を行っている。
まず、W3Cによるルビエレメントのワーキングドラフトを参照して欲しい。なお、どら猫本舗さんによる日本語訳もあるので、そちらを読んでも良いでしょう(ただし、日本語訳の正確性は保証しないとのこと)。なお、1999/7/20現在の最新版は、いずれも1999/3/22版である。
以下が、1999/3/22版に対する私の意見をまとめて、W3C宛に送付したメールである。このページを読んで、自分でも何か言いたいことがあれば、日本語のメールも歓迎するということなので、是非、W3Cに意見を送って欲しい。
X-My-Real-Login-Name: toson; msd.biglobe.ne.jp MIME-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp X-Mailer: Denshin 8 Go V321.2b5 Date: Fri, 18 Jun 1999 00:49:45 +0900 From: TOSON <toson@msd.biglobe.ne.jp> To: i18n-editor@w3.org Subject: Comment about WD-ruby-19990322 [lang="ja"] -------- This mail is a comment about http://www.w3.org/TR/1999/WD-ruby-19990322/ This mail is written in Japanese. W3C様、初めまして。TOSONといいます。 <RUBY>のワーキングドラフト http://www.w3.org/TR/1999/WD-ruby-19990322/ に関するコメントです。 日本語でのコメントも歓迎するということなので、 日本語で書せていただきます。 1. Introductionで、ルビの説明として、 > The "ruby" is the commonly used name for a run of >text that appears in the immediate vicinity of >another run of text, referred to as the "base", >and serves as an annotation or a pronunciation >guide associated with that run of text. とあります。これは全くその通りだと思います。 その上で、後半の >serves as an annotation or a pronunciation >guide associated with that run of text. に書かれている通り、ルビには、注釈(annotation)と 発音ガイド(pronunciation guide)の2種類の論理的な 役割があるわけです(両方の意味をかねている場合も あります)。 そこで、問題になるのが、現在のワーキングドラフト では、音声読み上げのユーザエージェントにおいて、 ルビを注釈として判断し読み上げないか(ルビベース の方を読み上げる)、発音ガイドとして判断し読み上 げるか(ルビベースは読み上げない)識別する機能が無 いのではないかということです。デフォルトでは、発 音ガイドとして機能するのが妥当と思いますが、中に は音声読み上げのユーザエージェントではルビベース の方を読み上げるべきルビもあります。案としては何 らかのattributeを設定することで、区別できるように するというのが妥当かと思います(デフォルトは発音ガ イドとして機能するのが妥当)。 また、純粋に、発音ガイドとして機能する場合(例えば、 漢字の純粋な読みとして機能する場合)には、必ずしも ルビの表示の必要が無いケースがあると思います(日本 語の初心者や子供では、発音ガイドとしてのルビ表示 の必要性は大きく、ほとんどの漢字に発音ガイドとし てのルビが必要ですが、学習の進展に従い必要性は少 なくなり、通常の成年日本人にはほとんど必要ありま せん)。これに関しても、表示の重要度を示すattribute を設定すればどうでしょうか。そうすれば、表示の重 要度に応じて、ユーザエージェント側の設定ないしス タイルシートで表示・非表示を設定することも可能で す。 以上、検討願います。 以上 ------------------------------------------------------------------------ TOSON E-mail : toson@msd.bigolobe.ne.jp URL : http://www2u.biglobe.ne.jp/~toson/index.html
以下に、ルビに関する注釈を示す。
1999/3/22版では、教育用教科書(educational texts)では、ルビは文字列の下側に振られることがあるとの記述がある。
この教育用教科書(educational texts)と聞いて、私が連想したのは、いわゆる学校用教科書のことであった。
しかし、学校用教科書で、ルビを文章の下に振っていたという記憶は無い。
最近の教科書では下側に振るようになったのであろうかと思ったものである。
偶然発見したことであるが、実は、この教育用教科書というのは、学校用教科書のことではないらしい。
では何かというと、外国人向けの、日本語学習用テキストのことであるらしい。
先日、図書館でたまたま手に取った、日本語学習用テキストに、漢字の下にひらがなでルビを振っていたので、分かったのである。
もっとも、そこには、それ一冊しか無かったので、これが一般的であるのかどうかは分からないが、教育用教科書(educational texts)が外国人向けの日本語学習用テキストを指していることは間違い無かろう。
もし、最近の学校用教科書で下側にルビを振る例がある場合には、連絡をお願いします。
ルビの語源は、ワーキングドラフトでも述べられている通り、活字のサイズを示すイギリス起源のrubyであり、このサイズの活字がルビに使われていたため、この名が付いたと考えられる。
ただし、ルビの起源は少なくても江戸時代にさかのぼり、当時は、当然、ルビとは呼んでいなかった(現代と同じく、フリガナと呼んでいたのだろう(推測))。
江戸時代、ルビが発達した理由としては、「版木」による印刷方法が普及したことが挙げられる。
コンピュータによる印刷方法の発達により、最近は廃れつつある「活字」による印刷方法の起源は、11世紀の中国と言われている(15世紀ドイツのグーテンベルグは東アジアから持ち込んだだけである)。
それ以前の印刷方法としては、木を1ページ分の字を彫る「木版」による印刷方法が東アジアでは主流であった(ちなみにヨーロッパではグーテンベルグ以前に印刷方法は無く、「写本」が唯一の本の作成方法だったようだ)。
しかし、漢字は文字数が多いため、「活字」による印刷方法は、「木版」の材料の木材に乏しかった朝鮮半島を除いて、東アジアではあまり普及しなかったようだ。
日本でも、16世紀末から17世紀初頭にかけて、一時期、広まった以外は、木版が主流であった。
江戸時代の出版方法が「木版」によるものであったことが、ルビの発達に一役かったことは間違いないだろう。
「木版」では、ルビを振ることは、手書き文字にルビを振るのと同じで、それほど難しくない。
しかし、「活字」では、異なるサイズの活字を混在させる必要があるため、難しいことは想像に難くない。
ワープロ上で、ルビを扱うことが難しかった理由の一つも、活字の場合と同じであろう(むろん、理由の一部分にすぎないだろうが)。
話を江戸時代に戻すと、当時、「通俗本」というものがあった。
中国語の本に対して、漢字の左右にルビを振った本であり、右側に読みを、左側に日本語の意味を振るわけである。
例えば、「海量」という漢字に右側には「カイリョウ」、左には「じょうご(お酒の上戸のこと)」を振ったりしたわけである。
現代の本で文字列の上下または左右にルビを振っているのは、私は見たことは無いが、ワーキングドラフトで、上下にルビを振る方法の例が示されているのはさすがである。
最後に、「ルビの起源」での記述内容の多くは、扶桑社刊の「地球日本史2巻-鎖国は本当にあったのか-」(西尾幹二 責任編集)の第7章「江戸のメディア」(田中優子)に多くをよっている。
1999/7/20 暫定公開